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妃教育とお茶会の日々① ~ジェシカ・ホープ公爵夫人~
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王妃主催の自身のお披露目を兼ねたお茶会の翌日に、アリアナの元へ4人の男女が訪れた。彼らはアリアナの妃教育を担当する教師であると共にアリアナの監視と査閲を行う役割も担っていた。
「初めまして、アリアナ伯爵令嬢。わたくしどもは王家よりアリアナ様の妃教育を担当させていただく為に本日より1年間、こちらへ伺わせていただく事になりました、わたくしは妃教育の総監を務めさせて頂きますジェシカ・ホープでございます。またわたくしは主にこの国の王家に連なる者としてのマナーと主な友好国の王族に対するマナー及びその国の文化などをお教えさせていただきます。またわたくしどもは教師としてだけではなくアリアナ様の心身の管理も任されております。ご相談事がございましたら気兼ねなくわたくしどもに仰って下さいませ」
ジェシカ・ホープ。その名前はまだ社交デビューもようやく迎える準備を始めたようなアリアナでさえ幼い頃から知っている程に有名な公爵夫人である。
元々はそれまであまり交流のなかった海を越えた大陸にある、規模は小さいながらも文化と技術が最も発展しているとして有名なトリンドル国から国交を結ばんと王家に嫁がされる予定だった当時13歳の第三王女ジェシカは現国王である王太子との顔合わせの時に同席していた王太子の側近であり従兄でもあるブライアン・ホープ公爵令息に惹かれ、その場でブライアンに求婚したという逸話がある。
たまたまブライアンには婚約者がいなかった…というか、相手のご令嬢が複数の愛人と関係を持っていたことが発覚したことで婚約が白紙になったタイミングでもあったことと、王太子であるセドリックが幼い頃から婚約していたふたつ年上の公爵令嬢を心から愛していたこともあってお互いの利害が一致、ブライアンも交流のほとんどない国の有名なお転婆姫に以前から関心を持っていた為、当時の国王は3人からの熱烈な説得に負けセドリックは元からの婚約者である現王妃プレシア・ピアニッシモ公爵令嬢と、王家に嫁ぐ予定だったジェシカ・フランシス・トリンドル王女は次期宰相候補であるブライアン・ホープ公爵令息と婚姻を結ぶことになった。
この四人の婚礼話はアリアナ達が生まれる前からハッピーエンドのお伽噺のように様々なエピソードを交えて語り継がれている。
とは言え、さすがに全てが本当の話ではなく多少の誇張や創作部分もあるだろうとアリアナは思っている。何より自国と出身国のみならず様々な国で『マナーの具現者』と称される女性であり小国とは言え周囲の大国を従わせていると噂される国の、その中でも最も高貴で有能だと海を越えたこの大陸でも有名な第三王女だったジェシカが、多少お転婆だったのは本当のことだとしても誰もが『有り得ない』と思う事なのにさも事実のように語り継がれている逸話については流石に全くの嘘だろうと思っている。
「あ、そうですわ。今までこの国で出逢った若い方達によく聞かれる質問があるので先に答えておきましょう。あの話だけは本当でございますよ」
ニッコリと答えたのは本当に自分が思っている質問の答えなのか?アリアナはしばしの逡巡の後改めて質問をしてみる。
「あの話というのは…まさか……?」
「えぇ、わたくしが海賊相手に大立ち回りをして海賊を手懐けてしまったという話です。あの時はあのお馬鹿さん達に怪我を負わされたブライアンを助けたくて暴れていたら『アンタの手下になるから許してくれ』って海賊の首領らしきひげもじゃに泣きつかれたのよね~」
お転婆姫というのも眉唾だったのが、まさかの海賊の首領にもなっていたとは!?
アリアナは今聞いたことが自分の幻聴、もしくは妄想の中でされた話なんじゃないかと疑ったのだが、他の3人と彼らの護衛や侍女として控えていた男女がそれぞれ『今言っちゃダメでしょ』みたいな顔をしているのを見て自分だけに聞こえた話ではないことを確信した。
「あれ?その話『だけは』…ってことは逆に他の話は誇張や創作部分が多いということでしょうか?」
アリアナがふと思ったことを口にするとジェシカは少し考えてから答える。
「そうですねぇ…全体的に『嘘』はないんですが誇張よりは『想像によるもの』が多いと言った方がよろしいかと……。もし気になるのでしたらわたくしの授業の日は休憩時間にでも真実をお話いたしましょう」
そう言って自己紹介を終わらせた。
「初めまして、アリアナ伯爵令嬢。わたくしどもは王家よりアリアナ様の妃教育を担当させていただく為に本日より1年間、こちらへ伺わせていただく事になりました、わたくしは妃教育の総監を務めさせて頂きますジェシカ・ホープでございます。またわたくしは主にこの国の王家に連なる者としてのマナーと主な友好国の王族に対するマナー及びその国の文化などをお教えさせていただきます。またわたくしどもは教師としてだけではなくアリアナ様の心身の管理も任されております。ご相談事がございましたら気兼ねなくわたくしどもに仰って下さいませ」
ジェシカ・ホープ。その名前はまだ社交デビューもようやく迎える準備を始めたようなアリアナでさえ幼い頃から知っている程に有名な公爵夫人である。
元々はそれまであまり交流のなかった海を越えた大陸にある、規模は小さいながらも文化と技術が最も発展しているとして有名なトリンドル国から国交を結ばんと王家に嫁がされる予定だった当時13歳の第三王女ジェシカは現国王である王太子との顔合わせの時に同席していた王太子の側近であり従兄でもあるブライアン・ホープ公爵令息に惹かれ、その場でブライアンに求婚したという逸話がある。
たまたまブライアンには婚約者がいなかった…というか、相手のご令嬢が複数の愛人と関係を持っていたことが発覚したことで婚約が白紙になったタイミングでもあったことと、王太子であるセドリックが幼い頃から婚約していたふたつ年上の公爵令嬢を心から愛していたこともあってお互いの利害が一致、ブライアンも交流のほとんどない国の有名なお転婆姫に以前から関心を持っていた為、当時の国王は3人からの熱烈な説得に負けセドリックは元からの婚約者である現王妃プレシア・ピアニッシモ公爵令嬢と、王家に嫁ぐ予定だったジェシカ・フランシス・トリンドル王女は次期宰相候補であるブライアン・ホープ公爵令息と婚姻を結ぶことになった。
この四人の婚礼話はアリアナ達が生まれる前からハッピーエンドのお伽噺のように様々なエピソードを交えて語り継がれている。
とは言え、さすがに全てが本当の話ではなく多少の誇張や創作部分もあるだろうとアリアナは思っている。何より自国と出身国のみならず様々な国で『マナーの具現者』と称される女性であり小国とは言え周囲の大国を従わせていると噂される国の、その中でも最も高貴で有能だと海を越えたこの大陸でも有名な第三王女だったジェシカが、多少お転婆だったのは本当のことだとしても誰もが『有り得ない』と思う事なのにさも事実のように語り継がれている逸話については流石に全くの嘘だろうと思っている。
「あ、そうですわ。今までこの国で出逢った若い方達によく聞かれる質問があるので先に答えておきましょう。あの話だけは本当でございますよ」
ニッコリと答えたのは本当に自分が思っている質問の答えなのか?アリアナはしばしの逡巡の後改めて質問をしてみる。
「あの話というのは…まさか……?」
「えぇ、わたくしが海賊相手に大立ち回りをして海賊を手懐けてしまったという話です。あの時はあのお馬鹿さん達に怪我を負わされたブライアンを助けたくて暴れていたら『アンタの手下になるから許してくれ』って海賊の首領らしきひげもじゃに泣きつかれたのよね~」
お転婆姫というのも眉唾だったのが、まさかの海賊の首領にもなっていたとは!?
アリアナは今聞いたことが自分の幻聴、もしくは妄想の中でされた話なんじゃないかと疑ったのだが、他の3人と彼らの護衛や侍女として控えていた男女がそれぞれ『今言っちゃダメでしょ』みたいな顔をしているのを見て自分だけに聞こえた話ではないことを確信した。
「あれ?その話『だけは』…ってことは逆に他の話は誇張や創作部分が多いということでしょうか?」
アリアナがふと思ったことを口にするとジェシカは少し考えてから答える。
「そうですねぇ…全体的に『嘘』はないんですが誇張よりは『想像によるもの』が多いと言った方がよろしいかと……。もし気になるのでしたらわたくしの授業の日は休憩時間にでも真実をお話いたしましょう」
そう言って自己紹介を終わらせた。
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