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 12歳になりました。ルーナです。え?進むの早すぎ?そんな事言われても、何も無かったんだよ。街に行くことも、大きな魔法を使うことも。いや俺だって12歳にもなるのに、庭から先に出ることがないとは思わないわ。何回もシルバさんに街へ行きたいって言っても、まだ早いよとか、危ないからねってにごされちゃうんだよね。
 
だから!12歳になったことだし、これまで我慢したこともあるし、強行突破しようと思います!逆によくこれまで我慢できたよ、俺。シルバさんが流すの上手いのもあるけど…。あと本めっちゃ買ってくれる。だからそれ読んでると1日終わって年月がたちましたとさ。それで今日はシルバさんが街に行く日だから半日は帰ってこない。その隙を見て森を探検しようと思います!あんまり遠くへは行かないので許してください!





「じゃあ行ってくるから留守番よろしくね。外は危ないから出ちゃダメだよ」

「はーい。いってらっしゃい!気をつけてね!」




 シルバさんにの背中が見えなくのをしっかり確認して…。よし!あと半日は俺の自由時間!早速外に出てみよう。


ガチャ


 庭の隅まで行って、シルバさんが行った逆方向に歩き出した。今まで庭からちょっと出た先までしか行ったことがないし、こっち方面は庭から出たことも無い。まだちょっとしか歩いてないけど、すごい新鮮な感じ。
 木とかなんでこんなに大きいのって言うくらいバカでかいし1本1本がめっちゃ太い。地球じゃ見たことない植物もちょいちょい見かける。改めて異世界来たんだって思う。



「痛っ!」



 なんか膜みたいなやつを通った感触があった。ピリピリしてて不快感が凄かった。これって結界ってやつ?なんでこんな所に。もう家が見えないところにいるんだけど。シルバさんが張ったやつかな。魔物とかが来ないようにとかか。
 










 あれ、なんかすごくここが怖く感じてきた。さっきまであんなに楽しかったのに、結界を出たから?どうしよう。これ以上は危ないのかな。なんだか無性に家に帰りたくなった。早く家に帰らないと、ここは危ない、なんでこんなことしたんだろう。どんどん思考が恐怖に支配されていく。
 俺はそのままそこにうずくまってしまった。わけも分からず、涙と汗がボタボタと零れていく。早く帰らないと行けないのに、体が動かない。どうしよう、どうしよう。焦れば焦るほど謎の恐怖は大きくなっていく。汗のせいで全身びっしょりだ。誰か助けて、シルバさんごめんなさい、謝るから、早く帰ってきて。俺を助けて。






「ルーナ」





 ふと、優しい声で名前を呼ばれて振り返ったらそこにシルバさんが立っていた。
 街に言ってるはずのシルバさんがなんでここに居るのかとか、どうして俺の場所が分かったのかとか、色々と疑問は浮かんできたがすぐに安心感でかき消された。



「お父さん!ごめんなさい!約束破ってごめんなさい!俺っ俺っ!怖くて動けなくなっちゃって…!ほんとにごめんなさい!」



 涙で顔がぐちゃぐちゃなことなんて気にせずシルバさんに謝り続けた。だけどシルバさんは何も言ってくれない。怒ってるんだ。約束破って勝手に家から出たから。それでもずっと謝っていたら、ようやくシルバさんが口を開いた。


「ねぇルーナ。俺は言ったよね。外は危ないから家から出ちゃダメだって。しかも俺についてくるとかじゃなくて反対方向にいるってことはもしかして最初から計画してた?結界の外にも出てるし。怖い?俺はずっと言ってよね?外は怖いよって。それなのに出たんでしょ?いつからそんな悪い子になったのかなぁ。悪い子のルーナはもうここに置いてっちゃおうか。」



 シルバさんは俺に言い聞かせるようにゆっくりと話した。それだけで、今までない程に怒ってるって分かる。だけど俺は最後の言葉に震え上がっていた。


「ごめんなさいごめんなさい!これからはちゃんと言うこと聞くから!置いてかないで!1人にしないで!」


「どうかなぁ。今日だってちゃんと留守番出来るって言うから、置いていったのに。…そうだ!じゃあ反省してるところを見してよ。」


 シルバさんのズボンにすがりついてる俺を、上から冷たい目で見下ろしてそう言った。



「反省?は、反省ならしてるよ!どうやったらいいの…?」


「…俺のお仕置きをしっかり受ければ今日のことは許してあげる。怖い思いもするかもしれない。どうする?嫌ならここでルーナとバイバイだね」


「っやるから!ちゃんとお仕置きうけるから、お願い!!!!バイバイしないで…!」


「そっか、分かった。じゃあ家に帰ろう。」


 そう言って手を差し伸べてくれたシルバさんはさっきまでの冷たい顔じゃなくて、いつもの優しい雰囲気が戻ってた。お仕置きは怖いけど、ここに置いてかれるよりは100倍ましだ。俺はその手を取って2人並んで家に歩いていった。







 なんで結界を出たら恐怖に支配されたのかなんて考えもしない俺だった。
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