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最終章 それが俺達の絆
第461話 対決・当代勇者②
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「ラルフル……!?」
「…………」
レイキースに呼び出され、ラルフルが姿を現した。
玉座の裏から姿を現し、虚ろな瞳でこちらへ近づいてくる。
「ハァ、ハァ! ラルフルは他の奴らとは違う! 僕に残っていた<ライトブレーウォ>を全て注ぎ込み、僕が倒れようとも命令を完遂するようにしてある!」
現れたラルフルの近くにレイキースも近づき、息を切らしながら煽るように話しかけてくる。
<ライトブレーウォ>――レイキースの話し方からして、人々を洗脳した力のことだろう。
それが今、ラルフルにもかけられている。
それもその効力は他の人々以上に――
「さあ、ラルフル! お前に命じた通り、ゼロラを倒せ! こいつはもうお前が倒れない限り……死ぬまで戦うことをやめないぞ! たとえ僕が倒れようともだ!」
「なっ……!? レイキース……てめぇええ!!」
レイキースは邪悪な笑みを浮かべながら、ラルフルに命じる。
ラルフルが死ぬまで、俺と戦うことをやめない――
たとえレイキースが倒れようとも、ラルフルは止まらない――
そんな外道な命令を、仮にもかつての仲間によく命じれたものだ。
もっとも、レイキースにとっては仲間も周囲の人々も、自らの力を示す道具でしかないのだろう。
本当にこんな奴がユメと同じ"勇者"だなんて、考えたくもない。
「ラルフル。この<光毒針>を使え。それでゼロラを……【伝説の魔王】ジョウインを殺せぇえ!!」
「…………」
レイキースはラルフルに<光毒針>と言う針を手渡した。
おそらくは、ユメを殺したものと同じ道具――
さらにはレイキース自身も<光毒針>を手に取り、ラルフルの首筋へと狙いを定める――
「少しでも抵抗してみろ! その時は……ラルフルの首筋に、僕の持った<光毒針>が突き刺さることになるぞぉお!!」
「くっ……!? どこまでもゲスな野郎だ……!」
レイキースは俺を確実に仕留めるために、ラルフルを人質に取っている。
しかもそのラルフルに、俺を殺すように促している。
ラルフルは俯いて、ただ黙ってレイキースの言葉を聞いている。
――どうしようもない状況だ。
俺が下手に動けばラルフルが死ぬ。
それを避けるためには、俺がラルフルに殺されるしかない――
「さあ! 行け! ラルフルゥウ!!」
「…………」
レイキースに言われるがまま、ラルフルは右手に持った<光毒針>を頭上に掲げた。
そして俺へと投げつけようとしている。
俺が動くわけにはいかない。
動いてしまったら、ラルフルが――
「……フンッ!!」
ラルフルが短く気合を入れた後、その右手を振り下ろし――
ブスンッ!!
――右手に持っていた<光毒針>が突き刺さった。
だがラルフルが突き刺したのは、"俺ではない"。
「アガ……!? な、なぜだ……!? なぜ僕を突き刺したぁああ!? ラルフルゥウウ!!?」
ラルフルは"レイキースに"持っていた<光毒針>を突き刺した。
太ももに<光毒針>が突き刺さったことで、レイキースは痛みに耐えられず、地面をのたうち回る。
そんなラルフルの行動を、レイキースはもちろん、俺にも理解できない。
――だがラルフルは俯いていた顔を上げると、すぐにレイキースへと言葉を交わし始めた。
「……レイキース様。あなたはもう、この舞台に必要ありません。そこで大人しくしていてください」
ラルフルはハッキリとした口調で、レイキースへ逆らう意思を示した。
俺の方へと顔を向けなおすが、その瞳はさっきまでの光のない瞳とは違う――
――いつものラルフルと同じ、強い意志を持った瞳だ。
「お疲れ様です、ゼロラさん。あなたならここまでたどり着いてくれると、自分も深い意識の底で信じてましたよ」
ラルフルはマカロンと似た穏やかな笑顔で、俺へと語り掛けてきた。
俺はまだ状況が飲めない。
それを確認するためにも、困惑しながらラルフルへ話しかけた。
「ラルフル……? お前……レイキースに操られてたんじゃ……?」
「そのことなのですが……少し屋上に行きませんか? 自分とゼロラさん、二人だけで話をしたいのです」
ラルフルの口調から敵意は感じられない。
この様子を見る限り、レイキースの洗脳が効いてなかったのか?
だが、それにしても俺と話したいこととは何だ?
俺の疑問は収まらないが、それでもラルフルは倒れたレイキースに目もくれず、屋上への階段へ向かって行く。
「……今はとにかく、ラルフルについて行くしかないか……」
細かいことは分からない。
だが、ラルフルの行動がレイキースに命じられた罠だとも考えられない。
ラルフル個人の考えなのだろうか……?
それを確かめるためにも、俺はラルフルの後を追って、屋上へと向かった――
「…………」
レイキースに呼び出され、ラルフルが姿を現した。
玉座の裏から姿を現し、虚ろな瞳でこちらへ近づいてくる。
「ハァ、ハァ! ラルフルは他の奴らとは違う! 僕に残っていた<ライトブレーウォ>を全て注ぎ込み、僕が倒れようとも命令を完遂するようにしてある!」
現れたラルフルの近くにレイキースも近づき、息を切らしながら煽るように話しかけてくる。
<ライトブレーウォ>――レイキースの話し方からして、人々を洗脳した力のことだろう。
それが今、ラルフルにもかけられている。
それもその効力は他の人々以上に――
「さあ、ラルフル! お前に命じた通り、ゼロラを倒せ! こいつはもうお前が倒れない限り……死ぬまで戦うことをやめないぞ! たとえ僕が倒れようともだ!」
「なっ……!? レイキース……てめぇええ!!」
レイキースは邪悪な笑みを浮かべながら、ラルフルに命じる。
ラルフルが死ぬまで、俺と戦うことをやめない――
たとえレイキースが倒れようとも、ラルフルは止まらない――
そんな外道な命令を、仮にもかつての仲間によく命じれたものだ。
もっとも、レイキースにとっては仲間も周囲の人々も、自らの力を示す道具でしかないのだろう。
本当にこんな奴がユメと同じ"勇者"だなんて、考えたくもない。
「ラルフル。この<光毒針>を使え。それでゼロラを……【伝説の魔王】ジョウインを殺せぇえ!!」
「…………」
レイキースはラルフルに<光毒針>と言う針を手渡した。
おそらくは、ユメを殺したものと同じ道具――
さらにはレイキース自身も<光毒針>を手に取り、ラルフルの首筋へと狙いを定める――
「少しでも抵抗してみろ! その時は……ラルフルの首筋に、僕の持った<光毒針>が突き刺さることになるぞぉお!!」
「くっ……!? どこまでもゲスな野郎だ……!」
レイキースは俺を確実に仕留めるために、ラルフルを人質に取っている。
しかもそのラルフルに、俺を殺すように促している。
ラルフルは俯いて、ただ黙ってレイキースの言葉を聞いている。
――どうしようもない状況だ。
俺が下手に動けばラルフルが死ぬ。
それを避けるためには、俺がラルフルに殺されるしかない――
「さあ! 行け! ラルフルゥウ!!」
「…………」
レイキースに言われるがまま、ラルフルは右手に持った<光毒針>を頭上に掲げた。
そして俺へと投げつけようとしている。
俺が動くわけにはいかない。
動いてしまったら、ラルフルが――
「……フンッ!!」
ラルフルが短く気合を入れた後、その右手を振り下ろし――
ブスンッ!!
――右手に持っていた<光毒針>が突き刺さった。
だがラルフルが突き刺したのは、"俺ではない"。
「アガ……!? な、なぜだ……!? なぜ僕を突き刺したぁああ!? ラルフルゥウウ!!?」
ラルフルは"レイキースに"持っていた<光毒針>を突き刺した。
太ももに<光毒針>が突き刺さったことで、レイキースは痛みに耐えられず、地面をのたうち回る。
そんなラルフルの行動を、レイキースはもちろん、俺にも理解できない。
――だがラルフルは俯いていた顔を上げると、すぐにレイキースへと言葉を交わし始めた。
「……レイキース様。あなたはもう、この舞台に必要ありません。そこで大人しくしていてください」
ラルフルはハッキリとした口調で、レイキースへ逆らう意思を示した。
俺の方へと顔を向けなおすが、その瞳はさっきまでの光のない瞳とは違う――
――いつものラルフルと同じ、強い意志を持った瞳だ。
「お疲れ様です、ゼロラさん。あなたならここまでたどり着いてくれると、自分も深い意識の底で信じてましたよ」
ラルフルはマカロンと似た穏やかな笑顔で、俺へと語り掛けてきた。
俺はまだ状況が飲めない。
それを確認するためにも、困惑しながらラルフルへ話しかけた。
「ラルフル……? お前……レイキースに操られてたんじゃ……?」
「そのことなのですが……少し屋上に行きませんか? 自分とゼロラさん、二人だけで話をしたいのです」
ラルフルの口調から敵意は感じられない。
この様子を見る限り、レイキースの洗脳が効いてなかったのか?
だが、それにしても俺と話したいこととは何だ?
俺の疑問は収まらないが、それでもラルフルは倒れたレイキースに目もくれず、屋上への階段へ向かって行く。
「……今はとにかく、ラルフルについて行くしかないか……」
細かいことは分からない。
だが、ラルフルの行動がレイキースに命じられた罠だとも考えられない。
ラルフル個人の考えなのだろうか……?
それを確かめるためにも、俺はラルフルの後を追って、屋上へと向かった――
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