記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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最終章 それが俺達の絆

第452話 【欲望の劫火】①

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「ダンジェロォオ!!」
「成程成程。速攻で仕掛けに来る……か!」

 シシバとの戦いのダメージが残り、後にはレイキースとの戦いも控えている。
 俺は速攻でダンジェロを倒す作戦に出た。
 この勝負に、余計な時間も労力もかけられない……!

「結構結構。ならば小生も、それに応じさせてもらおう……か!」

 ダンジェロも向かってくる俺に対して、反撃を仕掛けてくる。
 左手の袖口から溢れ出す、<詠唱の黒霧>――と言う名の、火薬。
 接近する俺に対して、その火薬をまき散らしてくる。

「点火!!」


 パチンッ

 ボガァアン!!


 そしてダンジェロが指を鳴らして合図を送り、俺に纏わりついた火薬を爆発させる。
 俺の体は炎に包まれるが――

「オオオオォ!!」
「驚愕驚愕……! 炎を纏わせたまま、小生へと挑みかかるか!」

 ――俺は炎を身に纏ったまま、ダンジェロへと接近する。
 ダンジェロの手品のタネである火薬――
 こいつは炎を操るために、常に服の内側に火薬を仕込んでいる。
 俺にもダメージはあるが、このままこいつに掴みかかって――

「一緒に爆発してやるよ……!」
「特攻特攻……!」

 ダンジェロも俺のそんな思惑は承知の上のようだ。
 すぐさま<縮地>で俺の動きを躱しにかかる。
 それでも俺は、ダンジェロの動きを追い続ける。
 たとえどれだけ<縮地>で素早く動こうと、俺はその動きの先を読む。

「むうぅ……!? 小生の動きを、ここまで読み切るか……!?」
「俺の記憶は完全に戻ってるんだ。部下だったお前の動きも技も、全部お見通しだぁあ!!」

 俺にはダンジェロの動きが分かる。
 どれだけ<縮地>で無駄なく素早く動こうと、俺はこいつの動きについていける。
 仮にも【伝説の魔王】として、魔王軍の頂点に立っていた俺の元部下だ。
 魔王軍四天王の一人に据えたのだって、こいつの実力を理解した上でのこと――

 俺は体に纏わりついた炎の痛みに耐えながら、ダンジェロに掴みかかろうと、必死にその手を伸ばす。



「想像以上……いやはや、本当に想像以上……! ……だが、"炎の扱い"に関しては、小生の右に出る者などいない!!」

 そんな俺の動きから必死に逃げるダンジェロだったが、突如その左手を俺の眼前へと突き出して――


 ドガァアアン!!


「ふぐぅうう!?」
「"火薬をどのタイミングで爆発させる"か、"どうすれば小生に被害が及ばない"か……。それら全てを小生は熟知している……!」

 ダンジェロは俺の顔面を左手で掴み、"俺だけ"を爆発させてきた。
 さらにはその爆風で俺の纏っていた炎をもかき消し、一度仕切り直させる状況へと持ち込んでくる。

 ダンジェロの言う通り、こいつは炎の扱いについては天才的だ。
 その技術は魔法でも及ばない程だが、ダンジェロは魔法で炎を操っているわけではない。

 火薬を媒体として炎を起こし、火薬を調整することで炎を自在に操る――
 今の俺が魔法を使わず、己の"肉体的な強さ"で人間的な強さを求めているのに対し、ダンジェロは"知識と技術による強さ"で人間的な強さを高めている。

 同じ"魔力ゼロの人間"同士だが、強さの根源は大きく違う。

 それともう一つ気になっているのは、ダンジェロの人間性。
 人間として――ゼロラとして生きてきた経験から、改めて思うが――



「……ダンジェロ。お前は本当に……"人間"なのか?」
「ハッハッハッ。この期に及んで愚問だな。"人間"だとも。小生はれっきとした人間……だ! 神より与えられし魔力という力など持たない、純粋なる"人間"……だ!」
「……人を陥れて、その光景をただ眺めるのを娯楽にする人間なんて、俺はお前以外に知らねえな……」

 俺の疑問にも、ダンジェロは呆気からんと笑って答える。

 こいつには本当に中身がないのだろうか?
 そう思ってしまう程、ダンジェロの人間性というものが掴めない。

 自らが戦うのは、欲望を満たすため――
 動乱を引き起こすのも、欲望を満たすため――

 元魔王の俺が言えた義理ではないが、ダンジェロは俺以上に――



 ――"人間"じゃない。



「ハァ……ハァ……」
「おやおや? 流石に【伝説の魔王】と呼ばれた男でも、この激戦続きの疲れは誤魔化せない……か」

 俺はダンジェロについて考えながらも、息を乱してなんとか構えをとる。
 やはりシシバとの戦いでのダメージが大きい。
 そこにさっきの爆発のダメージだ。
 一気に勝負を仕掛けようにも、体の方が言うことを聞いてくれない。



「……少々面白くないな。公にはもっと、"思い"を滾らせてほしいものだが……そうだな……!」

 俺が疲弊して中々攻めきれないのを見て、ダンジェロは何かを思いついたようだ。
 エントランスの奥の方へと目線を向けて、何かを考えている――



「え……? わ、私……?」



 ――その目線の先にいるのは、囚われたマカロンの姿。



「この戦況に、小生の熱を注がせてもらおう……文字通りになぁあ!!」
「ま、まさか!? やめろぉおお!!」

 俺の懇願にも耳を貸さず、ダンジェロは右手の杖を床へとこすらせる。

 それによって生じた炎の道が、マカロンの方へと向かって行き――





 ボォオオ!!


「キャアアア!?」
「マ、マカロォオン!?」

 ――マカロンの体が炎に包まれてしまった。
 燃えているのはマカロンを縛り付けていた縄だ。
 だが、縄自体が燃え落ちる様子はない。
 これもおそらく、ダンジェロが最初から仕込んでいたことか……!

「さあ、急がねば愛する女性が炭になるぞ? 小生を満足させられれば……あの火も消してやろう……!」
「ダ……ダンジェロォオォオオ!!!」
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