記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
359 / 476
第24章 常なる陰が夢見た未来

第359話 【正義が生んだ怪物】①

しおりを挟む
「行くゾォオオ!! 人間がァアア!!」

 ミライは高度を落とし、両手の平で<魔王の闇>の連弾を俺へと放つ。
 一発一発のサイズは小さいが、雨あられの如く、俺へと容赦ない猛攻を仕掛ける。

「フゥウン! オラァア!」


 バシンッ! バシンッ!


 その<魔王の闇>を、俺は徹底的に弾き飛ばす。
 その内の何発かは、術者であるミライ本人にも飛んでいく――

「舐メタ真似をォオ!!」


 バシンッ!


 ――そんな<魔王の闇>も、ミライは軽々と弾き飛ばす。
 当然のことだが、ミライにも<魔王の闇>は通用しない。
 <勇者の光>も効かず、<魔王の闇>を行使できる――
 そんな存在が己の感情のまま世界に飛び出していけば、世界は【伝説の魔王】以上の脅威に見舞われるだろう。



 ――それを止められるのは、この世界で俺だけだ。



「ミライィイイ!!」

 俺は<魔王の闇>を弾いて、隙のできたミライへと突っ込む。
 この子だけは止める。どんなに手荒なことをしてでも止める。

 俺の決意は――揺るがない!



「ワタシを守レ! <ミラークイーン>!!」


 ブゥウウン――


 ミライの呼び声を聞き、俺とミライの間に黒い人影が現れた。
 この人影には、見覚えがあるな――

「<ミラークイーン>……! 魔幻塔でリョウに憑依させていた、お前の分身か……!」
「今回はアノ時とは違ウ! ワタシの最強ノ守護神とシテ! ソノ力を、存分ニ見せてヤルゾォオ!」

 ミライは宙に浮きながら後ろへと下がり、俺との近接戦を<ミラークイーン>に任せる。
 今回の<ミラークイーン>のサイズは俺と同じぐらいだ。
 大きさからくるパワーに頼らず、スピードを活かしたラッシュで俺へと襲い掛かる。

「こんな技まで使えるようになってたのか! 随分と力をつけたようだな!」


 ドガッ! バキッ! ボゴォ! メギャァ!


 俺と<ミラークイーン>のラッシュ勝負は互角。
 おそらく<ミラークイーン>の体術は、ミライが知る体術を模範したものだ――



「ナ、ナゼダ!? ナゼ、<ミラークイーン>の技ヲ見切れル!? <ミラークイーン>と互角ニ戦えル!? ワタシの分身の技は――父と同ジものナンダぞォオ!?」

 ――そう。<ミラークイーン>の体術はミライの父、【伝説の魔王】ジョウインと同じものだ。



 だから俺には分かる。ジョウインの体術がどんなものか、俺は良く知っている――

「<ミラークイーン>! ワタシも援護スル!」

 その様子を見ていたミライは、自身も俺の周囲を飛び回り始める。
 そしてその指先を俺に向け、黒い光線の魔法を放つ。
 魔幻塔でリョウが操られていた時と、同じタイプの戦い方――
 凝縮された、<魔王の闇>による一閃――

「無駄だ!!」

 ――その光線を、俺は左手の平でかき消す。
 横から<ミラークイーン>のパンチも来ていたが、それも右腕でガードする。

「ナ、何者ナンだ!? 貴様ハ!? ナゼ……ワタシの攻撃ガ通用シナイ!!??」
「俺はお前もよく知る者だ。お前の攻撃は、俺には通用しない」

 度重なる自らの猛攻を防がれ、ミライは驚愕を隠せないでいる。

 ミライの攻撃は俺にはお見通しだ。
 俺の記憶はダンジェロとの戦い、そしてミライとの出会いで完全に戻った。

 今の俺にならできる。俺自身がこうして生まれた、その悲願の達成を――



「マダだ! マダ、終わらナイ!! <ミラークイーン>! 追撃ヲ――」
「オウラァア!!」

 ミライが<ミラークイーン>に追撃を命じようとした矢先、俺は<ミラークイーン>の腹へと拳をめり込ませる。

「グアアァッ!? な、ナン……ダト……!? <ミラークイーン>に……攻撃ヲ……!?」

 俺が攻撃したのは<ミラークイーン>だったが、苦しみ始めたのは本体であるミライの方だった。
 <ミラークイーン>はミライの力によって生み出された分身――
 そのダメージは、本体であるミライにも伝わってしまうようだ。

「成程な……。これなら、お前自身を殴らなくて済む。俺もお前に直接、手出ししたくはないからな」
「図に乗ルナァア……! ワタシに情けヲかけるツモリかァア!? ワタシから全テを奪った――人間ノ分際デェエエ!!」

 俺の言葉に怒りしか湧き上がらせない、ミライ。
 そんなミライは一度<ミラークイーン>と共に俺から離れ、空中で両手を頭上に掲げ始める――

「殺してヤル! 壊してヤル! 悪夢の果テノ虚無へと、送ってヤル! ワタシの世界デ――貴様を葬ッテやるゾォオオ!!」

 その言葉と同時に、ミライは地面へと急降下しながら、その両手を地面へと叩きつけた。





 バキキッ―― メギギギィイ――





 そして、その両手からヒビ割れが走り始める。

 だが、割れているのは地面ではない――

「こ、これってまさか―― ゼ、ゼロラさん!?」

 離れて見ていたラルフル達も気づいたようだ。

 ミライによって割られたのは――"空間そのもの"だ。



 バギギギィイ!!



 空間そのものが音をたてて割れ、俺とミライだけが別の空間へと誘われる。

「コノ世界でナラバ! 貴様もワタシに手出しできマイ! 今度コソ……殺してヤルゾォオオオ!!!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...