350 / 476
第24章 常なる陰が夢見た未来
第350話 魔王城走馬灯⑥
しおりを挟む
「【伝説の魔王】も呆気ないものだったな。こんな魔物に惚れたという、先代勇者もおかしな女だ」
「全くですわね」
「お二方とも。ユメ様への悪口はお控え願いたい……」
レイキース達はその後もジョウインが動かなくなるまで、攻撃を加え続けた。
剣で斬り、貫き――
魔法で束縛し、焼き――
そんな無情な攻撃を繰り返し、ジョウインが完全に倒れるまで続けた。
そして今レイキース達三人の目の前にいるのは、魔王の証である仮面をつけたまま、地面に突っ伏すジョウインの姿――
【伝説の魔王】とまで呼ばれたジョウインの最期は、あまりにあっけないものであった。
「さあ、帰るぞ。【伝説の魔王】が倒れたことを王国に報告し、勇者レイキース達の名を世に知らしめるのだ!!」
ジョウインの最期を確認したレイキース達は、魔王城を後にした。
城の中にはもう誰一人としていない――
城内にいたものは殲滅した――
レイキース達三人はそう考えていた。
「パ……パパ……?」
だが、"一人だけ"生き残っている者がいた。
ジョウインとユメの娘――ミライ。
その幼い少女だけは、レイキース達の襲撃から難を逃れていた。
ミライはレイキースが来ることを察知したジョウインにより、結界の張られた部屋に匿われていた。
そのおかげでミライは無事だったが、ジョウインが倒れたことにより結界が解かれたため、レイキース達が去った後に部屋から出てきたのだ。
「パパ……。こんなところでねてたら……ママにおこられるよ?」
「…………」
ミライの呼び声に、倒れたままのジョウインは答えない――
「ねえ……パパ? どうしちゃったの……?」
「…………」
ミライはすぐに理解できなかった――
「パパ……? ねえ! パパー!?」
「…………」
目の前で倒れている父が、もう起き上がらないことを――
「ああ……あぁ……! アアアァアアアァアァアアッ!!??」
暫くして、ミライはようやく理解した。
父ジョウインが"死んでしまった"ことを――
「なんデ!? ナんで!? ナンでパパが死なナきゃいけナイの!? ウワァァァアアン!!」
ミライは大声で泣き叫んだ。
目の前の現実を受け入れられず、ひたすらに泣き叫んだ。
「嫌だヨォ……! コンな世界……認めタくないヨォ……! アアァアアァアアッ!!」
ミライの両眼からあふれる涙は、赤い血の涙へと変わっていた。
その血の涙はどんどんと溢れ出し、着ている紫色の魔道服をも赤く染め上げていく。
「憎イ……憎イヨォ……! ワタしから家族ヲ奪った世界ガ、人間ガ、勇者ガァアア……!!」
さらにその嘆きに呼応するかのように、ミライの黒髪もどんどん白く変化していく。
「パパ、いなイ……! マ……ママも……いなイ……!?」
そして、ミライはもう一つ理解した。
嘆き叫ぶ中で魔王城でのレイキース達のやりとりを、ミライは無意識のうちに感じ取っていた。
それは【伝説の魔王】と【慈愛の勇者】を両親に持つ、ミライの膨大な魔力と魔法の潜在能力が可能にした力――
少し前に玉座の間で起こった出来事が、真実を知ろうとするミライの頭の中に映し出された。
「ウアァァァアン!! パパァ……! ママァ……!」
泣き叫び続けるミライの周りに、いつしか黒い闇が現れ始めた。
それはミライが抱く、絶望、嘆き、悲しみ、憤怒――
あらゆる負の感情とその膨大な魔力があるからこそ生み出された、<魔王の闇>以上の負の力――<ナイトメアハザード>。
「あアァう……! ウあぁ……アァ……!」
ミライはなおも泣きながら、座る者のいなくなった玉座へと寄り掛かった。
もうミライと一緒にいてくれる者はいない――
もうミライに手を差し伸べてくれる者はいない――
そんな悪夢の中で、ミライの世界は深い闇へと閉ざされていった――
「ミ……ミラ……イ……」
そんなミライに、ジョウインがわずかにこぼした言葉は届かなかった――
「全くですわね」
「お二方とも。ユメ様への悪口はお控え願いたい……」
レイキース達はその後もジョウインが動かなくなるまで、攻撃を加え続けた。
剣で斬り、貫き――
魔法で束縛し、焼き――
そんな無情な攻撃を繰り返し、ジョウインが完全に倒れるまで続けた。
そして今レイキース達三人の目の前にいるのは、魔王の証である仮面をつけたまま、地面に突っ伏すジョウインの姿――
【伝説の魔王】とまで呼ばれたジョウインの最期は、あまりにあっけないものであった。
「さあ、帰るぞ。【伝説の魔王】が倒れたことを王国に報告し、勇者レイキース達の名を世に知らしめるのだ!!」
ジョウインの最期を確認したレイキース達は、魔王城を後にした。
城の中にはもう誰一人としていない――
城内にいたものは殲滅した――
レイキース達三人はそう考えていた。
「パ……パパ……?」
だが、"一人だけ"生き残っている者がいた。
ジョウインとユメの娘――ミライ。
その幼い少女だけは、レイキース達の襲撃から難を逃れていた。
ミライはレイキースが来ることを察知したジョウインにより、結界の張られた部屋に匿われていた。
そのおかげでミライは無事だったが、ジョウインが倒れたことにより結界が解かれたため、レイキース達が去った後に部屋から出てきたのだ。
「パパ……。こんなところでねてたら……ママにおこられるよ?」
「…………」
ミライの呼び声に、倒れたままのジョウインは答えない――
「ねえ……パパ? どうしちゃったの……?」
「…………」
ミライはすぐに理解できなかった――
「パパ……? ねえ! パパー!?」
「…………」
目の前で倒れている父が、もう起き上がらないことを――
「ああ……あぁ……! アアアァアアアァアァアアッ!!??」
暫くして、ミライはようやく理解した。
父ジョウインが"死んでしまった"ことを――
「なんデ!? ナんで!? ナンでパパが死なナきゃいけナイの!? ウワァァァアアン!!」
ミライは大声で泣き叫んだ。
目の前の現実を受け入れられず、ひたすらに泣き叫んだ。
「嫌だヨォ……! コンな世界……認めタくないヨォ……! アアァアアァアアッ!!」
ミライの両眼からあふれる涙は、赤い血の涙へと変わっていた。
その血の涙はどんどんと溢れ出し、着ている紫色の魔道服をも赤く染め上げていく。
「憎イ……憎イヨォ……! ワタしから家族ヲ奪った世界ガ、人間ガ、勇者ガァアア……!!」
さらにその嘆きに呼応するかのように、ミライの黒髪もどんどん白く変化していく。
「パパ、いなイ……! マ……ママも……いなイ……!?」
そして、ミライはもう一つ理解した。
嘆き叫ぶ中で魔王城でのレイキース達のやりとりを、ミライは無意識のうちに感じ取っていた。
それは【伝説の魔王】と【慈愛の勇者】を両親に持つ、ミライの膨大な魔力と魔法の潜在能力が可能にした力――
少し前に玉座の間で起こった出来事が、真実を知ろうとするミライの頭の中に映し出された。
「ウアァァァアン!! パパァ……! ママァ……!」
泣き叫び続けるミライの周りに、いつしか黒い闇が現れ始めた。
それはミライが抱く、絶望、嘆き、悲しみ、憤怒――
あらゆる負の感情とその膨大な魔力があるからこそ生み出された、<魔王の闇>以上の負の力――<ナイトメアハザード>。
「あアァう……! ウあぁ……アァ……!」
ミライはなおも泣きながら、座る者のいなくなった玉座へと寄り掛かった。
もうミライと一緒にいてくれる者はいない――
もうミライに手を差し伸べてくれる者はいない――
そんな悪夢の中で、ミライの世界は深い闇へと閉ざされていった――
「ミ……ミラ……イ……」
そんなミライに、ジョウインがわずかにこぼした言葉は届かなかった――
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【完結】転生したらもふもふだった。クマ獣人の王子は前世の婚約者を見つけだし今度こそ幸せになりたい。
金峯蓮華
ファンタジー
デーニッツ王国の王太子リオネルは魅了の魔法にかけられ、婚約者カナリアを断罪し処刑した。
デーニッツ王国はジンメル王国に攻め込まれ滅ぼされ、リオネルも亡くなってしまう。
天に上る前に神様と出会い、魅了が解けたリオネルは神様のお情けで転生することになった。
そして転生した先はクマ獣人の国、アウラー王国の王子。どこから見ても立派なもふもふの黒いクマだった。
リオネルはリオンハルトとして仲間達と魔獣退治をしながら婚約者のカナリアを探す。
しかし、仲間のツェツィーの姉、アマーリアがカナリアかもしれないと気になっている。
さて、カナリアは見つかるのか?
アマーリアはカナリアなのか?
緩い世界の緩いお話です。
独自の異世界の話です。
初めて次世代ファンタジーカップにエントリーします。
応援してもらえると嬉しいです。
よろしくお願いします。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる