記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
330 / 476
第23章 追憶の番人『ドク』

第330話 導き出された答え

しおりを挟む
「――以上で、ドクター・フロストより預かりし、記憶映像の再生を終了いたします」

 そう言ってニナーナさんは自分達の方へと向き直りました。
 今の映像を見せられて、これまで自分の中でうやむやだったものがハッキリしました。

 自分の"ラルフル"という名前、お姉ちゃんの"マカロン"という名前を付けてくれたのはフロストさん――
 自分とお姉ちゃんを助けてくれたのは、フロストさんにとって自分達が愛した人の子供だったから――
 自分が勇者パーティーに入れたのは、フロストさんがバクトさんに推薦を頼んでくれたから――

 なんだか自分にとって、フロストさんは本当のお父さん以上にお父さんな気がしてきました。

「今の映像は……全部事実ってことでいいのよね……?」
「はい、マスター。先程の映像は、ドクター・フロストが自らの記憶をもとに作り出したものになります。全てがドクター・フロストの知る事実になります」

 お姉ちゃんはニナーナさんに確認をとりました。
 お姉ちゃんも内心では全てが事実だと理解した上で、確認をとったようです。



 だって……ニナーナさんの容姿が、自分達のお母さん――ルナーナにそっくりなのですから……。
 これで「違います」なんて話はあり得ません。

「マカロン、ラルフル。今の話を聞いて、貴様らはフロストをどうしたい?」

 バクトさんはお姉ちゃんと自分に尋ねてきました。
 自分はお姉ちゃんと一度目を合わせます。
 その目の奥から読み取れる感情で、お姉ちゃんも自分と同じ気持ちであることが分かりました。



 だから、自分はバクトさんにお願いします――

「フロストさんを止めたいです。自分達はあの人に、復讐に手を染めて欲しくありません……!」
「私からもお願いします! フロストさんは……私達にとって、本当の父親よりも……父親なんです!」

 自分もお姉ちゃんも、バクトさんに同じ気持ちを伝えました。
 それを聞いたバクトさんは、どこか満足したような表情で語り掛けてきました。

「貴様らならそう言うと信じていた。そもそも、フロストがこんな映像をニナーナに残しておいたのも、貴様ら二人に"止めてほしい"と、心のどこかで思っていたのかもな」

 バクトさん自身も、ずっとミリアさんの父親であることを隠してきた人です。
 だから仲が悪くても、フロストさんの気持ちはどこかで分かるのでしょう。

 ――いえ。この人も心の奥底ではずっとフロストさんを心配していたはずです。
 自らが変わってしまい、フロストさんまで変わってしまった――
 そうしてお互いに交わることのない道を進んでも、フロストさんとの絆は切れていなかったようです。



「マカロン、ラルフル。今のニナーナのマスターは貴様ら二人だ。ニナーナに命じれば、貴様らをフロストの元へ連れて行ってくれるはずだ」

 意を決した自分とお姉ちゃんに、バクトさんはそう教えてくれました。
 そうと分かれば、早速向かうしかありません!

「ニナーナさん! 自分とお姉ちゃんを、フロストさんのところへ連れて行ってください!」
「お願いします! ニナーナさん!」
「かしこまりました。マスターの命令に従います。これより、マカロン様、ラルフル様の二名を、ドクター・フロストの元へとお運びいたします」

 自分とお姉ちゃんの願いを聞いたニナーナさんは、片手でそれぞれの体を抱え上げ――


 ビュォオオオン!!


 ――猛スピードで空を飛び始めました!?

「こ、こんなに速く空を飛べるんですか!?」
「新たなるマスターの権限により、私の飛行能力は最大出力まで向上しています」
「と、とにかくお願い! 急いで!!」

 ニナーナさんに抱えられたまま、自分とお姉ちゃんはフロストさんの元へと急ぎます!


◇◇◇


「飛んでいっちまったな……。大丈夫なのか? バクト」
「大丈夫かどうかはあの二人次第だ。今のフロストを力づくで止めるのは難しい。だが、あの二人ならそうしなくても止められる可能性がある」

 ニナーナに抱えられて飛んでいくマカロンとラルフルを見ながら、俺はバクトに尋ねた。
 フロストのことはあの二人次第か……。



「あの~……バクトはん? 俺ら、『黙っとけ』言われたから黙っとったんですが、そもそもなんで連れてこられたんでっか?」
「『黙っとけ』と言われなくても、口を挟める雰囲気じゃなかったんスが……。本当になんで、オレとシシバのカシラは連れてこられたんスか?」

 そしてここまでのやり取りを横で見ていた、シシバとサイバラのギャングレオ盗賊団二強。
 確かになんでこの二人がここにいるんだ……?

「フロストのことだ。俺達が邪魔に入ろうとすることも考えているだろう。今のフロストならば、単独でもレーコ公爵を殺すことは可能だ。ならば、"余った戦力"は足止めのために、こちらに回してくるだろう」

 バクトも四本のアームが完成したフロストの力は把握しているようだ。
 そしてその分で余った戦力をこちらに回してくる――
 俺達三人にその相手をしろってことか。





 ん? ちょっと待て。
 フロストが有する戦力なんて、フロスト本人を除けば一人しか――



 キィイイイン!!

「なんや? これは風を切る音か?」
「あ、カシラ。多分あれッスよ。ほら、空飛んでこっちに向かってきてる、あの三つの影」
「どうやら、早速のお出ましらしいな……」

 風を切る音に反応する、シシバ。
 音の正体を上空に確認する、サイバラ。
 この事態を予期していた、バクト。

 ――全部理解した、俺。



 ズガンッ! ズガンッ! ドガァアアン!!

 突如俺達の目の前に砂ぼこりを巻き上げながら、三つの物体が着地した。
 そのうち二つは金属の筒状のもの。

 そしてもう一つ―― いや、もう一人は――





「フオオオオオ!!」

 やっぱり出てきたか!
 フロストの弟、【王国最強】、フレイム!

「うげぇ!? ま、まさかこいつの相手をするために、俺とサイバラも呼ばれたんでっか!?」
「ああ、そうだ! シシバ! サイバラ! ゼロラ! 貴様ら三人で、フレイムを倒せ!」
「無茶言わないでほしいッスね!? 見ただけでもこの人、人間が相手できる範疇を完全に超えてるッスよね!?」

 バクトの命令に激しく異議を申し立てるシシバとサイバラ。
 うむ。お前ら二人の言い分は正しい。
 だが――

「つべこべ言うなぁあ!! さっさと相手をしろぉお!!」

 ――そんな異議も、バクトは認めない。

「……とにかく、やれるだけやってみようぜ。幸い、フレイム一人だけだからな……」

 俺はシシバとサイバラに言い聞かせ、なんとか一緒に戦うように勧める。
 司令塔であるフロストが不在なら、俺達三人でも十分に相手をできる……はずだ。
 シシバとサイバラもさすがにこの状況なので、戦う覚悟を決める。

「まあ、えっか。【王国最強】との喧嘩なんて、そないに楽しめるもんやないからな~! キシシシ!」
「いや!? これ喧嘩のレベルじゃないスよね!? あー、もう! オレだってやるッスよ! やりゃあいいんでしょうがぁ!!」

 ……覚悟というより、"戦闘欲求"と"ヤケクソ"だが。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...