記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第277話 内通者の正体

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「『あいつ』……? シシバ。お前まさかギャングレオ盗賊団の内部に――」
「『内通者がおる』――って言いたいんやろ? おおよその検討はついとるわ」

 ……驚いた。シシバも俺と同じく、内通者の検討がついていたらしい。

「……なぜそのことを黙ってたんだ?」
「ぶっちゃけた話、俺は"信じたく"なかったんや。元々はバクトはんの命令で作ったギャングレオ盗賊団やが、なんやかんやで俺は連中を気に入っとった。あいつらみーんな、俺と同じように世間から弾かれた連中や。そんな連中を集めとる内に、俺にも情が湧いてもうた……」

 シシバにしては珍しく、寂しそうな声で俺に語り掛ける。

「俺はギャングレオ盗賊団の連中が食いっぱぐれへんように色々考えた。そのために色んな事業にも手ぇ広げて、組織を維持できるように努めとった……。俺はそんな連中の中に"裏切り者"がおるなんて思いたくなかったんや……。ホンマ、俺もとんだアマチャンやで……。キシシシ……」

 シシバは自らの顔を手で押さえながら無理に笑う。
 ――【隻眼の凶鬼】と呼ばれる男も、"一人の人間"としての情を――絆を求めていることには違いなかったようだ。

「シシバ。お前が思っているその内通者の正体は――」
「それを俺の口からは言わせんといてくれや。どの道この俺が敗れた以上、"あいつ"のバックにおる連中の計画も不完全に終わってまう。……そうさせへためにも、"あいつ"はすぐにゼロラはんの前に現れるはずや」

 シシバが言う"あいつ"――俺達を陰から狙っていた内通者にして、【虎殺しの暴虎】――
 そいつがもうじき俺の前に現れるというのか……。

「……なあ、ゼロラはん。こないな騒動引き起こしておいて虫のええ話かもしれへんが……"あいつ"を止めたってくれへんか?」
「『止めてほしい』だと?」
「多分、"あいつ"は……迷っとるんや。自分自身でもどないしたらええんか――どないしたいんかさえも分かっとらんのかもしれへん……。ゼロラはんなら……"あいつ"を止めて――助けることもできるかもしれへん……」

 『自らを裏切った内通者を助けてほしい』……。
 おそらくシシバも俺が思う人物と同じ人物が内通者だと思っているのだろう。

 ――確かに"あいつ"の行動にはおかしなところが多い。
 これからそいつに会えるのならば、その真相も確かめる必要がある――

「……分かった、シシバ。後のことは俺に任せろ」
「キッシシシ……。ホンマ……頼んだ……でぇ……」

 俺に後のことを託したシシバは気を失ってしまった。

 シシバから託された願いを無駄にはしない。
 俺はそのためにも屋上の階段を降り、ガルペラの執務室へと戻って行った――





 階段を下りて執務室に戻った俺。
 他のギャングレオ盗賊団も正気に戻ったのか、屋敷内は不気味なほど静かになっていた。



 ――そしてその部屋の執務机の上に奴は座っていた。



 全身を漆黒のローブで覆い隠した――【虎殺しの暴虎】。



「やはり……シシバは負けたようですね」

 ここに来て俺は初めて【虎殺しの暴虎】と呼ばれる目の前の人間の声を聴く。
 その声は、"やはり俺のよく知る人間"の声だった――

「こちらとしても、ギャングレオ盗賊団にはまだまだ利用する機会があると思っていたのですが……どうにも計算が狂ってしまったようです」

 もはや正体を隠しきれないと悟ったのだろう。
 【虎殺しの暴虎】は俺に対してどんどんと言葉を紡いでいく――

「つくづくあなたは面倒な人です。こんなことならば、もっと早くに手を打っておくべきでした」

 【虎殺しの暴虎】は腰かけていた執務机から立ち上がる――



「センビレッジの酒場で初めてあなたに会った……あの時にね」

 そう言いながら【虎殺しの暴虎】は着ている漆黒のローブに手をかけた。



 そして、そのローブを脱ぎ捨てる――

 これまでの状況、行動、実力。
 その全ての条件に合致する人間など……一人しかいない。

 【虎殺しの暴虎】は自らの正体をついに明かして言葉を紡いだ――



























「なぁ? ゼロラさんよぉ?」

「やっぱりお前が【虎殺しの暴虎】だったか……。サイバラ……!」
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