277 / 476
第20章 獅子は吠え、虎は猛る
第277話 内通者の正体
しおりを挟む
「『あいつ』……? シシバ。お前まさかギャングレオ盗賊団の内部に――」
「『内通者がおる』――って言いたいんやろ? おおよその検討はついとるわ」
……驚いた。シシバも俺と同じく、内通者の検討がついていたらしい。
「……なぜそのことを黙ってたんだ?」
「ぶっちゃけた話、俺は"信じたく"なかったんや。元々はバクトはんの命令で作ったギャングレオ盗賊団やが、なんやかんやで俺は連中を気に入っとった。あいつらみーんな、俺と同じように世間から弾かれた連中や。そんな連中を集めとる内に、俺にも情が湧いてもうた……」
シシバにしては珍しく、寂しそうな声で俺に語り掛ける。
「俺はギャングレオ盗賊団の連中が食いっぱぐれへんように色々考えた。そのために色んな事業にも手ぇ広げて、組織を維持できるように努めとった……。俺はそんな連中の中に"裏切り者"がおるなんて思いたくなかったんや……。ホンマ、俺もとんだアマチャンやで……。キシシシ……」
シシバは自らの顔を手で押さえながら無理に笑う。
――【隻眼の凶鬼】と呼ばれる男も、"一人の人間"としての情を――絆を求めていることには違いなかったようだ。
「シシバ。お前が思っているその内通者の正体は――」
「それを俺の口からは言わせんといてくれや。どの道この俺が敗れた以上、"あいつ"のバックにおる連中の計画も不完全に終わってまう。……そうさせへためにも、"あいつ"はすぐにゼロラはんの前に現れるはずや」
シシバが言う"あいつ"――俺達を陰から狙っていた内通者にして、【虎殺しの暴虎】――
そいつがもうじき俺の前に現れるというのか……。
「……なあ、ゼロラはん。こないな騒動引き起こしておいて虫のええ話かもしれへんが……"あいつ"を止めたってくれへんか?」
「『止めてほしい』だと?」
「多分、"あいつ"は……迷っとるんや。自分自身でもどないしたらええんか――どないしたいんかさえも分かっとらんのかもしれへん……。ゼロラはんなら……"あいつ"を止めて――助けることもできるかもしれへん……」
『自らを裏切った内通者を助けてほしい』……。
おそらくシシバも俺が思う人物と同じ人物が内通者だと思っているのだろう。
――確かに"あいつ"の行動にはおかしなところが多い。
これからそいつに会えるのならば、その真相も確かめる必要がある――
「……分かった、シシバ。後のことは俺に任せろ」
「キッシシシ……。ホンマ……頼んだ……でぇ……」
俺に後のことを託したシシバは気を失ってしまった。
シシバから託された願いを無駄にはしない。
俺はそのためにも屋上の階段を降り、ガルペラの執務室へと戻って行った――
■
階段を下りて執務室に戻った俺。
他のギャングレオ盗賊団も正気に戻ったのか、屋敷内は不気味なほど静かになっていた。
――そしてその部屋の執務机の上に奴は座っていた。
全身を漆黒のローブで覆い隠した――【虎殺しの暴虎】。
「やはり……シシバは負けたようですね」
ここに来て俺は初めて【虎殺しの暴虎】と呼ばれる目の前の人間の声を聴く。
その声は、"やはり俺のよく知る人間"の声だった――
「こちらとしても、ギャングレオ盗賊団にはまだまだ利用する機会があると思っていたのですが……どうにも計算が狂ってしまったようです」
もはや正体を隠しきれないと悟ったのだろう。
【虎殺しの暴虎】は俺に対してどんどんと言葉を紡いでいく――
「つくづくあなたは面倒な人です。こんなことならば、もっと早くに手を打っておくべきでした」
【虎殺しの暴虎】は腰かけていた執務机から立ち上がる――
「センビレッジの酒場で初めてあなたに会った……あの時にね」
そう言いながら【虎殺しの暴虎】は着ている漆黒のローブに手をかけた。
そして、そのローブを脱ぎ捨てる――
これまでの状況、行動、実力。
その全ての条件に合致する人間など……一人しかいない。
【虎殺しの暴虎】は自らの正体をついに明かして言葉を紡いだ――
「なぁ? ゼロラさんよぉ?」
「やっぱりお前が【虎殺しの暴虎】だったか……。サイバラ……!」
「『内通者がおる』――って言いたいんやろ? おおよその検討はついとるわ」
……驚いた。シシバも俺と同じく、内通者の検討がついていたらしい。
「……なぜそのことを黙ってたんだ?」
「ぶっちゃけた話、俺は"信じたく"なかったんや。元々はバクトはんの命令で作ったギャングレオ盗賊団やが、なんやかんやで俺は連中を気に入っとった。あいつらみーんな、俺と同じように世間から弾かれた連中や。そんな連中を集めとる内に、俺にも情が湧いてもうた……」
シシバにしては珍しく、寂しそうな声で俺に語り掛ける。
「俺はギャングレオ盗賊団の連中が食いっぱぐれへんように色々考えた。そのために色んな事業にも手ぇ広げて、組織を維持できるように努めとった……。俺はそんな連中の中に"裏切り者"がおるなんて思いたくなかったんや……。ホンマ、俺もとんだアマチャンやで……。キシシシ……」
シシバは自らの顔を手で押さえながら無理に笑う。
――【隻眼の凶鬼】と呼ばれる男も、"一人の人間"としての情を――絆を求めていることには違いなかったようだ。
「シシバ。お前が思っているその内通者の正体は――」
「それを俺の口からは言わせんといてくれや。どの道この俺が敗れた以上、"あいつ"のバックにおる連中の計画も不完全に終わってまう。……そうさせへためにも、"あいつ"はすぐにゼロラはんの前に現れるはずや」
シシバが言う"あいつ"――俺達を陰から狙っていた内通者にして、【虎殺しの暴虎】――
そいつがもうじき俺の前に現れるというのか……。
「……なあ、ゼロラはん。こないな騒動引き起こしておいて虫のええ話かもしれへんが……"あいつ"を止めたってくれへんか?」
「『止めてほしい』だと?」
「多分、"あいつ"は……迷っとるんや。自分自身でもどないしたらええんか――どないしたいんかさえも分かっとらんのかもしれへん……。ゼロラはんなら……"あいつ"を止めて――助けることもできるかもしれへん……」
『自らを裏切った内通者を助けてほしい』……。
おそらくシシバも俺が思う人物と同じ人物が内通者だと思っているのだろう。
――確かに"あいつ"の行動にはおかしなところが多い。
これからそいつに会えるのならば、その真相も確かめる必要がある――
「……分かった、シシバ。後のことは俺に任せろ」
「キッシシシ……。ホンマ……頼んだ……でぇ……」
俺に後のことを託したシシバは気を失ってしまった。
シシバから託された願いを無駄にはしない。
俺はそのためにも屋上の階段を降り、ガルペラの執務室へと戻って行った――
■
階段を下りて執務室に戻った俺。
他のギャングレオ盗賊団も正気に戻ったのか、屋敷内は不気味なほど静かになっていた。
――そしてその部屋の執務机の上に奴は座っていた。
全身を漆黒のローブで覆い隠した――【虎殺しの暴虎】。
「やはり……シシバは負けたようですね」
ここに来て俺は初めて【虎殺しの暴虎】と呼ばれる目の前の人間の声を聴く。
その声は、"やはり俺のよく知る人間"の声だった――
「こちらとしても、ギャングレオ盗賊団にはまだまだ利用する機会があると思っていたのですが……どうにも計算が狂ってしまったようです」
もはや正体を隠しきれないと悟ったのだろう。
【虎殺しの暴虎】は俺に対してどんどんと言葉を紡いでいく――
「つくづくあなたは面倒な人です。こんなことならば、もっと早くに手を打っておくべきでした」
【虎殺しの暴虎】は腰かけていた執務机から立ち上がる――
「センビレッジの酒場で初めてあなたに会った……あの時にね」
そう言いながら【虎殺しの暴虎】は着ている漆黒のローブに手をかけた。
そして、そのローブを脱ぎ捨てる――
これまでの状況、行動、実力。
その全ての条件に合致する人間など……一人しかいない。
【虎殺しの暴虎】は自らの正体をついに明かして言葉を紡いだ――
「なぁ? ゼロラさんよぉ?」
「やっぱりお前が【虎殺しの暴虎】だったか……。サイバラ……!」
0
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる