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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第276話 対決・ギャングレオ盗賊団頭領『凶』②

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「もう一発行くでぇえ!! ゼロラァアア!!」

 ビュゥウウン!!

 シシバはこれまで以上にブーメランに高速回転をかけて投げつけてきた!
 そしてシシバ自身も高速移動で俺の視界をかき乱す!

 シシバ本体とブーメラン――
 とりあえず狙うのは"シシバだけ"でいい。

「フンッ!」

 ガキィイン!!

 再び俺の死角から襲ってきたシシバの攻撃を俺はガードする!

「俺のトンファー防いだところで、もう一つ攻撃あるんを忘れたんか!?」
「忘れてねえさ! お前の動きさえつかめればそれでいい!」

 俺はガードした後、そのままその場でしゃがんだ――



 ヒュゥウン!!

「んなっ!?」

 ブーメランは予想通り俺の背後から飛んできた!
 俺がしゃがんだことでブーメランはシシバに向かう!

 シシバも体を反らして自らが投げたブーメランを回避するが、そのせいで大きく体勢が崩れる!
 俺はその隙を逃さずにシシバに足払いをかける!

「オラァアア!!」
「くそがぁああ!!」

 倒れ込むシシバに拳を叩けつけようとするが、シシバは倒れる寸前で地面に手を着いて側転しながら距離をとって回避する。

「お、おんどれぇ……! 舐め腐りおってぇ……!」

 シシバはブーメランを右手に戻して一度様子を伺ってくる。



 ――やはりシシバは暴走しているせいか、自らの弱点を考慮できていない。
 以前戦った時はシシバ本人も十分に理解していた弱点――"距離感がうまく掴めない"。
 それなのにシシバはブーメランという"距離感を掴む必要がある武器"を使っている。

 シシバは自らの攻撃とブーメランを使った波状攻撃を繰り出してくるが、ブーメランの距離感が掴めていないために"シシバに見えて俺には見えない位置"――つまり"俺の背後"からしかブーメランを飛ばしてこない!
 攻撃がどの方向から来るかさえ分かれば、ブーメランの動きを逆手にとってむしろ前回よりもシシバの動きを制限できる!

 怒り狂って慣れない武器を持ち出したシシバが相手なら、十分に対処可能な範囲だ!

「く、くそがぁ……! ほんなら……これでどないやぁああ!!」

 シシバはブーメランを自身の周囲を旋回するように回転させた!
 さらにシシバ自身もトンファーを持ったまま高速回転を始める!

 そしてトンファーとブーメランの二重回転状態からの突撃!
 シシバは屋敷の屋上を回転しながら移動攻撃を繰り出す!

「また無差別攻撃に切り替えてきたか……!」

 ここは屋上だ。壁はない。
 以前戦った時のように目にも映らないスピードでの高速移動は使えないらしく、ある程度制御可能なスピードで俺を追うように迫ってくる!





 ――それでも目の悪いシシバにとっては悪手でしかない。
 回転するシシバの動きは捉えられないが、シシバの位置は簡単に把握できる!

「もう大人しくしてもらうぞ……シシバァア!!」

 俺はブーメランと一緒に回転するシシバへとこちらから向かって行き――


 ゲシィイ!!


 ――その足元へと滑り込んだ!

「うぎぃい!? バ、バランスが――」
「もらったぁああ!!」

 そのまま体勢を崩したシシバの腹に拳を押し当て――


 ボゴォオオ!!


 ――地面へと叩きつけた!

「オゴェエ!!?? な、なんちゅうこっちゃ……!?」
「我を見失って無茶な戦い方をするからだ……シシバ」

 打たれ弱いシシバにとっては十分すぎるダメージだ。
 周囲を旋回させていたブーメランもコントロールを失って地面へと突き刺さった。



「キッシシ……! まったくもってあんさんの言う通りやで……ゼロラはん」

 地面に突っ伏したシシバの表情は苦しみながらもいつもの様子が戻っていた。
 ――どうやらシシバも正気を取り戻したようだ。

「落ち着いてよく聞くんだ、シシバ。お前らギャングレオ盗賊団を嵌めたのはガルペラじゃない。おそらくジャコウとボーネス公爵の画策だ」
「……せやろなぁ。<ナイトメアハザード>……。リョウを操っとった力で俺らを嵌めたんやろなぁ……」

 正気に戻ったシシバはこれまでの事態を冷静に考えられるようになったようだ。

 そしてシシバには酷な話だろうが、こうやってシシバ達ギャングレオ盗賊団を嵌めたのはおそらく、"ギャングレオ盗賊団内部にいる内通者"――





「――やっぱ、これは"あいつ"の仕業なんやろなー……」
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