記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第14章 まどろむ世界のその先へ

第182話 三兄妹の行方

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「お~! 思うたよりは元気そうやないか、ゼロラはん!」

 ガルペラの次に俺の部屋に呼ばれたのはシシバだった。

「あの時は俺を助けてくれてありがとよ」
「な~に。俺もあのレイキースの阿呆に一泡吹かせられて気分良かったわ。キシシシ!」

 シシバにとって、左目の因縁の相手であるレイキース。
 そのレイキースをぶちのめせたことはシシバにとって実に愉快な出来事だったようだ。

「そういえばお前の他の兄妹はどうしてるんだ?」
「あ~……。俺もそのこと報告しようと思うてここ来たんや」

 シシバは椅子の背にもたれながらも話を始めた。

「まず、俺とジフウの兄貴なんやがな。今はお互いにギャングレオ盗賊団と黒蛇部隊引き連れて魔幻塔の周りで"一応睨み合い"しとる状況や」
「魔幻塔で? ……リョウとも関りがあるのか?」

 あの脱出の途中で知ったことだが、リョウはシシバとジフウの妹だ。
 そのリョウがいる魔幻塔でシシバとジフウがお互いを睨み合っているのだ。何かないはずがない。

「まあ、そんなとこやな。兄貴ら黒蛇部隊はあの後、国王の命令で魔幻塔の監視を任されたみたいや。名目上は魔幻塔で次の計画を練っとるボーネス公爵とジャコウの監視やが、実際んとこは国王は兄貴に気ぃ使ってリョウの傍で護衛をさせとるんやろ。俺も牽制の意味も含めてギャングレオ盗賊団を魔幻塔に差し向けたんやが、黒蛇部隊は俺らを追い出そうとはせえへん。お互いの立場上、"一応睨み合い"はしとるがホンマのところ、ギャングレオ盗賊団と黒蛇部隊で"リョウを守ってる"と言って差し支えあらへん」

 リョウは今もボーネス公爵の監視下のもと、魔幻塔にいるようだ。
 リョウの力をボーネス公爵がそこまで欲する理由は分からないが、兄二人が近くにいるならばひとまずは大丈夫だろう。

「ただな……。リョウの奴が完全に落ち込んでもうて、部屋から出てきおらへんのや……」

 シシバの声が一気に暗くなる。

「原因は……俺か」
「ああ。ゼロラはんがレイキースに刺されたことはリョウの耳にも入っとる。あいつはそのショックでずっと引き籠りっぱなしや。俺と兄貴は特例であいつの部屋に入れてもらえるんやが……正直、見てられへんほどやつれとる……」

 妹が衰弱していく姿を見ていることしかできないシシバとジフウ。
 普段は陽気でしかないシシバの表情が暗くなっていることからその苦悩が伝わってくる。

「リョウに……会うことはできないのか?」
「……やっぱ、会いたいか?」
「ああ……。俺の無事の報告も含めて、あいつにはもう一度きちんと会っておきたい」
「……キシシシ! 分かった。ほんならちょいと小細工して、リョウが魔幻塔から出てこれるように仕向けてみるかのう」

 シシバには何やら考えがあるようだ。俺の答えを聞いたシシバは、いつもの陽気な表情に戻ると話を続けた。

「ちーっとだけこっちに時間くれや。すぐに準備したるさかい、それまでの間はそのケガ治しとけ。リョウがゼロラはんのそないな姿見たら、折角会えても落ち込んでまうだけやからな」

 そう言うとシシバは俺の部屋を出ていった。
 リョウにまた会える……。そう思うと俺の心に期待がこみ上がっていた。





「ゼロラさん。ご無事で何よりです」

 シシバが部屋から出た後、今度はミリアが入ってきた。

「ミリア。お前が回復魔法で俺を治してくれたんだってな。ありがとよ」
「い、いえ! 正直ゼロラさんのケガはアタシの回復魔法でも追いつかないほどでした。バクト公爵――あの人の医学の力がなければ、ゼロラさんは助かっていなかったでしょう……」

 ミリアの回復魔法でも治しきれなかった俺のケガをバクトも手伝って治してくれたんだったな……。
 つくづく俺は仲間に恵まれているらしい。

「そういえばそのバクトは一緒じゃないのか?」
「一緒に来ようとも考えたんですけど……あの人、アタシに『誰がスタアラの小娘なんぞと一緒に来てやるものか』とか言って、取り合ってくれなかったのよ」

 話を聞く限り、どうにもバクトはミリアを避けているようだ。
 元々バクトは国の意向のせいで自身の医学を認められずに魔法のみに頼った結果、妻を亡くすことになってしまったのだ。
 そう考えると"回復魔法の象徴"とも言える"聖女"のミリアにはあまりいい印象を受けられないのだろう。

「あいつも思うところがあるんだ。気にしないでやってくれ」
「ええ、分かってる。アタシもあの人は苦手だけど……メチャクチャ口悪いし……」

 そうミリアに言われると、バクトが一緒に来なかったのは"単に慣れあうのが嫌いなだけ"な気もしてきた。

「ラルフルもマカロンさんも、ゼロラさんのことをすごく心配していたわ。それに……もうシシバさんから聞いてるとは思うけど、リョウ大神官も――」

 ミリアは言いにくそうにリョウが心配していることも伝えてくれた。

「ミリアもリョウには会えてないのか?」
「ええ。いくらギャングレオ盗賊団と黒蛇部隊の両方に守られている形になっているとはいえ、リョウ大神官が簡単に魔幻塔から出ることはできないわ。アタシだってリョウの立場を考えると、今すぐにでも会いたいけど――」
「そういえば、なんでボーネス公爵達はリョウをずっと捕らえるような真似をしてるんだ?」

 ずっと気になっていた疑問。
 ボーネス公爵とジャコウはリョウを何かの計画に利用するつもりらしいが、その計画が何かまでは分からない。

「なんでもボーネス公爵は最近ジャコウを使ってかつての魔王城から溢れている"黒い霧"について調査しているらしいわ。もしかすると、それと関係があるのかも――」

 ミリアが述べた魔王城から溢れているという"黒い霧"。
 <魔王の闇>とはまた別物で以前は気にするほどでもなかったらしいが、その範囲が徐々に拡大を続けて近くにある港町ウォウサカへと少しずつ近づいてきているらしい。

「とにかく、リョウ大神官のことも"黒い霧"のことも、このまま見過ごせる話じゃないわ。"黒い霧"は勇者パーティーが調査に乗り出す計画が進んでるらしいから、まだこちらが気にすることじゃないかもしれないけど、ゼロラさんには……なるべく早くリョウ大神官に会ってほしい」

 ミリアは俺に頭を下げてリョウとの再会を願ってきた。
 おそらくミリアにはリョウの気持ちが痛いほど分かるのだろう。それは、かつてのミリア自身とラルフルの関係の様に……。

「分かった。今はシシバがリョウに会うための計画を練ってくれているそうだ。俺もケガの具合がよくなったら、すぐにでもリョウに会いに行く」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。ラルフルはゼロラさんを姉のマカロンさんとくっつけたいみたいだけど、リョウ大神官もアタシにとっては大切な人なの。……リョウ大神官もですが、ラルフルとマカロンさんのこともお願いします、ゼロラさん」

 ミリアは扉の前で俺に再度お辞儀をすると、部屋の外へと行った。
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