179 / 476
第14章 まどろむ世界のその先へ
第179話 夢の中で
しおりを挟む
――ここはどこだ?
俺はこんなところで何をしているのだ?
辺り一面、暗闇の世界――
そうだ。俺はレイキースと戦って二度も体を刺し貫かれたのだった。
なら……ここは死後の世界か?
俺は……死んだのか?
そうでなければこの状況に納得できない。
あの後、ラルフルとシシバは逃げ切れたのだろうか?
他の皆は無事なのだろうか?
ラルフルは俺が死ぬ間際に泣いてたな……。
マカロンやリョウも悲しんでないだろうか……?
もう考えても仕方ないことのはずなのに、俺の頭はそんなことばかり考えてしまう。
「『自分は死んだ』……。そう考えていませんか?」
突如俺の耳に何者かの声が入ってくる。
俺の考えていることを手に取るように理解する、澄んだ女性の声。
「ああ、そうだ。俺は……死んだのだろう?」
俺はその声に問い返してみた。
「あなたはいつになっても――誰になっても……自らの命を投げ出してしまうのですね」
そんな声と共に俺の目の前に輝く光のオーラを纏った人影が現れる。
ぼやけていてはっきりと姿を確認できないが、この人影こそが声の主なのだろう。
だが何故だろう。俺にはこの声がひどく懐かしい。
記憶を失っているはずの俺が懐かしさを感じたことなど初めてだ。
懐かしくて、暖かくて、優しい声。
この人影は……俺の失われた過去と関係のある人物か。
「お前は……誰なんだ?」
俺は人影に尋ねるも、首を横に振られて答えを得ることはできなかった。
「今ここで私が何者か言ったら……あなたは私と一緒について来るのでしょうね」
それはついて行くだろう。
俺はもう死んだ身だ。
ならば……俺を知っている人間について行きたい。
「だから……答えられません。あなたには……まだあなたを必要としてくれる大勢の人間がいます」
人影は俺を諭すように語り掛ける。
『――ラさん! ゼロラさん!!』
『――がい――起きて! お願いだから――目を覚まして!!』
人影以外の声が俺の耳に入る。
この声は……ラルフルとマカロン……?
「聞こえてるのですね? あなたの帰りを必死に待つ――必死に呼びかける声が」
ああ……そうだ。
俺は帰らなければいけない。
『みんなで一緒に帰ってくる』。その約束を果たすためにも。
俺がそう決意した瞬間。辺りの空間がひび割れ始める。
そうだ……俺はまだ死ねない。
待っている皆のためにも、国王と交わした約束も含め、俺は再び立ち上がらなければいけない。
崩壊を始めた空間の中で、俺と目の前の人影がどんどんと離れていく。
「教えてくれ! お前は誰なんだ!? 俺は……そもそも誰なんだ!?」
最後にどうしても確認したかった、失われた俺の過去の答え。
俺は人影に必死に叫んだ。
だが人影は口を人差し指で押さえ、答えを言う事はなかった。
「大丈夫。あなたの過去にはいずれ、あなた自身が辿り着きます」
決して"答え"を言う事のないその人影だったが、俺は非情と思うことはなかった。
この人影は……俺とかなり近い間柄にいた存在だ。
それだけは確かであると感じることができた。
「それと……――――も頼みますね?」
最後の人影の言葉は聞き取れなかったが、そのまま俺の目の前から消えていった――
■
「うぅ……」
俺は目を開けた。
気が付けばいつも見慣れた天井が目の前にある。
ここは……俺の部屋か?
「ゼロラさん……。 ッ!!? お、お姉ちゃん!? ゼロラさんが――ゼロラさんが!!」
横を見るとラルフルが泣きながら俺の傍にいた。
そしてもう一人、俺の手を握って俯いていた人物が――
「ゼロラ……さん……? 気が付いて……?」
――マカロンだ。
ひどくやつれて涙を溢れさせながら俺の手を優しく握ってくれていた。
そうか……俺は……まだ生きているんだな。
「おはよう……。いや、ただいまかな?」
俺はこんなところで何をしているのだ?
辺り一面、暗闇の世界――
そうだ。俺はレイキースと戦って二度も体を刺し貫かれたのだった。
なら……ここは死後の世界か?
俺は……死んだのか?
そうでなければこの状況に納得できない。
あの後、ラルフルとシシバは逃げ切れたのだろうか?
他の皆は無事なのだろうか?
ラルフルは俺が死ぬ間際に泣いてたな……。
マカロンやリョウも悲しんでないだろうか……?
もう考えても仕方ないことのはずなのに、俺の頭はそんなことばかり考えてしまう。
「『自分は死んだ』……。そう考えていませんか?」
突如俺の耳に何者かの声が入ってくる。
俺の考えていることを手に取るように理解する、澄んだ女性の声。
「ああ、そうだ。俺は……死んだのだろう?」
俺はその声に問い返してみた。
「あなたはいつになっても――誰になっても……自らの命を投げ出してしまうのですね」
そんな声と共に俺の目の前に輝く光のオーラを纏った人影が現れる。
ぼやけていてはっきりと姿を確認できないが、この人影こそが声の主なのだろう。
だが何故だろう。俺にはこの声がひどく懐かしい。
記憶を失っているはずの俺が懐かしさを感じたことなど初めてだ。
懐かしくて、暖かくて、優しい声。
この人影は……俺の失われた過去と関係のある人物か。
「お前は……誰なんだ?」
俺は人影に尋ねるも、首を横に振られて答えを得ることはできなかった。
「今ここで私が何者か言ったら……あなたは私と一緒について来るのでしょうね」
それはついて行くだろう。
俺はもう死んだ身だ。
ならば……俺を知っている人間について行きたい。
「だから……答えられません。あなたには……まだあなたを必要としてくれる大勢の人間がいます」
人影は俺を諭すように語り掛ける。
『――ラさん! ゼロラさん!!』
『――がい――起きて! お願いだから――目を覚まして!!』
人影以外の声が俺の耳に入る。
この声は……ラルフルとマカロン……?
「聞こえてるのですね? あなたの帰りを必死に待つ――必死に呼びかける声が」
ああ……そうだ。
俺は帰らなければいけない。
『みんなで一緒に帰ってくる』。その約束を果たすためにも。
俺がそう決意した瞬間。辺りの空間がひび割れ始める。
そうだ……俺はまだ死ねない。
待っている皆のためにも、国王と交わした約束も含め、俺は再び立ち上がらなければいけない。
崩壊を始めた空間の中で、俺と目の前の人影がどんどんと離れていく。
「教えてくれ! お前は誰なんだ!? 俺は……そもそも誰なんだ!?」
最後にどうしても確認したかった、失われた俺の過去の答え。
俺は人影に必死に叫んだ。
だが人影は口を人差し指で押さえ、答えを言う事はなかった。
「大丈夫。あなたの過去にはいずれ、あなた自身が辿り着きます」
決して"答え"を言う事のないその人影だったが、俺は非情と思うことはなかった。
この人影は……俺とかなり近い間柄にいた存在だ。
それだけは確かであると感じることができた。
「それと……――――も頼みますね?」
最後の人影の言葉は聞き取れなかったが、そのまま俺の目の前から消えていった――
■
「うぅ……」
俺は目を開けた。
気が付けばいつも見慣れた天井が目の前にある。
ここは……俺の部屋か?
「ゼロラさん……。 ッ!!? お、お姉ちゃん!? ゼロラさんが――ゼロラさんが!!」
横を見るとラルフルが泣きながら俺の傍にいた。
そしてもう一人、俺の手を握って俯いていた人物が――
「ゼロラ……さん……? 気が付いて……?」
――マカロンだ。
ひどくやつれて涙を溢れさせながら俺の手を優しく握ってくれていた。
そうか……俺は……まだ生きているんだな。
「おはよう……。いや、ただいまかな?」
0
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる