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第14章 まどろむ世界のその先へ
第178話 待ち続ける弟と姉
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"円卓会議"の後のルクガイア城からの脱出。
その時にゼロラさんが自分の目の前でレイキース様に刺されて、今日で三日目になります。
あの後自分は王宮の仕事を辞めました。 ……続けられるわけがありませんでした。
肝心のゼロラさんはあの日からずっと眠り続けています。
自分はお姉ちゃんと一緒にゼロラさんの目覚めを待っています。
ミリアさんの回復魔法でも手の施しようがなく、バクトさんの医学の力でなんとか傷を防ぐことはできました。
ですが、バクトさんには――
『このまま二度と目を覚まさないかもしれない』
――と言われました。
「お願い……ゼロラさん……目を覚まして……!」
「お姉ちゃん……」
ゼロラさんのことも心配ですが、お姉ちゃんのことも心配です。
自分達が宿場村に帰って来た時、血塗れのゼロラさんを見てお姉ちゃんは卒倒してしまいました。
そしてミリアさんとバクトさんがゼロラさんの治療を終えた後、お姉ちゃんはずっとゼロラさんの傍に付き添っています。
一睡もせず、ご飯もとらずに……。
「お姉ちゃん……。少し休んだ方が……」
「できないわよ! お願い――お願いだから――私をゼロラさんの傍にいさせて……!」
お姉ちゃんの気持ちはよく分かります。
自分もお姉ちゃんやミリアさんが同じことになったら無理矢理にでも傍にいようとするでしょう。
今だって……自分もゼロラさんの傍にずっといたいです。
ですが、同時に辛くなってしまいます。
ゼロラさんは自分の目の前で刺されました。自分達を守るために、強引にレイキース様を倒して守ってくれました。
それなのに……自分は何もできませんでした。
自分は弱いままです。
自分には……自分達には、ゼロラさんが必要です。
今はゼロラさんの目が覚めるのを信じ続けます。
そしてゼロラさんの目が覚めて、いつの日か……。
自分は――ラルフルは、一人の男としてゼロラさんの横に堂々と立てるようになってみせます。
今度はゼロラさんだって守れるぐらいに――
◇◇◇
私のもとに帰ってきたゼロラさんは大きく体を刺され、全身血塗れだった。
その姿を見た私は思わず声を失い、気を失ってしまった。
その後にミリアちゃんやバクト公爵がゼロラさんを治療してくれたけど、依然意識不明のまま。
勇者レイキースに刺されたと聞いた時、私は密かに願った――
『【伝説の魔王】やあの時の魔王軍四天王がいるならば、私の父を殺した時の様にもう一度姿を現し、ゼロラさんを助けて』
また対価が必要ならば、私はいくらでも払う。
私の身でゼロラさんが助かるならば、なんだってする。
でも……それは叶わない願い。
【伝説の魔王】はすでに亡く、魔王軍四天王も【伝説の魔王】と直接血の契約を交わした存在である以上、共にすでにこの世にいない。
私は愚かだ。
かつて【伝説の魔王】に願って自らの父を殺させた私を、ゼロラさんは軽蔑することなく受け入れてくれた。
そんなゼロラさんを救うために、私はまた同じ過ちを繰り返そうとしている。
許されない行為をまた……許してくれた人のために――
私が……心から愛する人のために――
その時にゼロラさんが自分の目の前でレイキース様に刺されて、今日で三日目になります。
あの後自分は王宮の仕事を辞めました。 ……続けられるわけがありませんでした。
肝心のゼロラさんはあの日からずっと眠り続けています。
自分はお姉ちゃんと一緒にゼロラさんの目覚めを待っています。
ミリアさんの回復魔法でも手の施しようがなく、バクトさんの医学の力でなんとか傷を防ぐことはできました。
ですが、バクトさんには――
『このまま二度と目を覚まさないかもしれない』
――と言われました。
「お願い……ゼロラさん……目を覚まして……!」
「お姉ちゃん……」
ゼロラさんのことも心配ですが、お姉ちゃんのことも心配です。
自分達が宿場村に帰って来た時、血塗れのゼロラさんを見てお姉ちゃんは卒倒してしまいました。
そしてミリアさんとバクトさんがゼロラさんの治療を終えた後、お姉ちゃんはずっとゼロラさんの傍に付き添っています。
一睡もせず、ご飯もとらずに……。
「お姉ちゃん……。少し休んだ方が……」
「できないわよ! お願い――お願いだから――私をゼロラさんの傍にいさせて……!」
お姉ちゃんの気持ちはよく分かります。
自分もお姉ちゃんやミリアさんが同じことになったら無理矢理にでも傍にいようとするでしょう。
今だって……自分もゼロラさんの傍にずっといたいです。
ですが、同時に辛くなってしまいます。
ゼロラさんは自分の目の前で刺されました。自分達を守るために、強引にレイキース様を倒して守ってくれました。
それなのに……自分は何もできませんでした。
自分は弱いままです。
自分には……自分達には、ゼロラさんが必要です。
今はゼロラさんの目が覚めるのを信じ続けます。
そしてゼロラさんの目が覚めて、いつの日か……。
自分は――ラルフルは、一人の男としてゼロラさんの横に堂々と立てるようになってみせます。
今度はゼロラさんだって守れるぐらいに――
◇◇◇
私のもとに帰ってきたゼロラさんは大きく体を刺され、全身血塗れだった。
その姿を見た私は思わず声を失い、気を失ってしまった。
その後にミリアちゃんやバクト公爵がゼロラさんを治療してくれたけど、依然意識不明のまま。
勇者レイキースに刺されたと聞いた時、私は密かに願った――
『【伝説の魔王】やあの時の魔王軍四天王がいるならば、私の父を殺した時の様にもう一度姿を現し、ゼロラさんを助けて』
また対価が必要ならば、私はいくらでも払う。
私の身でゼロラさんが助かるならば、なんだってする。
でも……それは叶わない願い。
【伝説の魔王】はすでに亡く、魔王軍四天王も【伝説の魔王】と直接血の契約を交わした存在である以上、共にすでにこの世にいない。
私は愚かだ。
かつて【伝説の魔王】に願って自らの父を殺させた私を、ゼロラさんは軽蔑することなく受け入れてくれた。
そんなゼロラさんを救うために、私はまた同じ過ちを繰り返そうとしている。
許されない行為をまた……許してくれた人のために――
私が……心から愛する人のために――
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