記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第12章 舞台へ立つために

第156話 両局の馬鹿

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「ねえ、ラルフル? やっぱり覗き見なんてやめない?」
「何言ってるんですか! お姉ちゃんとゼロラさんをくっつけるチャンスなんですよ!?」

 少し前にゼロラさんは自分を王都に誘いましたが、そこで自分はいいことを閃きました。
 このことをお姉ちゃんに伝えてゼロラさんと二人で王都に向かわせる。名付けて"デートで接近大作戦"です!
 その様子を自分とミリアさんの二人で見守る予定でした

「ですが……リョウ大神官までいるのは計算外でした」
「アタシとしてはリョウ大神官も応援したいから複雑……」

 ミリアさんはなんだかんだでリョウ大神官のことを信頼しています。
 それでもお姉ちゃんのことも応援してくれているのは嬉しいです。



「なあ、シシバ? やっぱりデバガメなんてやめねえか? 後、こんなことでわざわざ王都まで来るなよ……」
「アホか! 俺がわざわざリョウに『ゼロラはんが王都に行く』って情報流したったんや! こないにおもろい話もそうあらへん! ……もう一人女がおるんは計算外やったけど」
「あれはゼロラが住んでる宿の従業員のマカロンだな。そしてラルフルの姉か」
「ラルフル? 誰やそれ?」

 自分達が遠くからこっそりゼロラさん達を見ていると、すぐ隣から二人の男の人の声が聞こえました。

「あー。ゼロラの弟子で丁度あそこでコソコソしてる少女みたいな容姿の男だ」
「ほ~う。あないに可愛らしい容姿の男なんておるんか。……なんや、ミリア様によう似た女もおるが?」
「そのラルフルってのはミリア様と付き合ってるそうだぜ」
「ほ~ん? ……いや、そうなってくるとやな――」

 よく見ると一人はジフウさん。もう一人はジフウさんと似た容姿で赤い髪の眼帯を付けた人です。
 ……あれ?

「えー!? ジフウさん!? なんでここに!?」
「うげぇ!? お前ラルフルか!?」
「あー!? アンタいつぞやのギャングレオ盗賊団頭領シシバ!?」
「どぎぃ!? ミ、ミリア様!? なんでおりまんのや!?」

 黒蛇部隊のジフウさんにギャングレオ盗賊団頭領のシシバさん!? この二人が兄弟でシシバさんも自分達に協力してくれるとは聞いてましたが、何故二人揃ってこんなところでコソコソしてるのでしょうか?
 シシバさんも王都の視察に来たのでしょうか?

「チィ……。なんでここにおるんかは知らへんが、こないなったら口を封じるしかあらへんな。ミリア様はともかく、ゼロラはんの弟子やったら、俺と兄貴の二人でかかっても釣りが出るやろ」

 あ、これは視察じゃないですね。
 シシバさんはトの字型の武器を取り出して構えてきました。でもこの二人の実力ってゼロラさんと同格なんですよね? 勝てるはずがありません……。

「馬鹿かてめえは!? なんでわざわざ問題がある方向に話を持っていこうとするんだ!? こうなったら弟だとか関係ねえ! 黒蛇部隊! 集結!」

 ジフウさんがそう叫ぶと、黒いマントと衣装を纏った四人が建物の上から飛び降りてジフウさんの横に着地しました。
 これが黒蛇部隊ですか! 初めて見ました! なんだかエージェントみたいでカッコいいです!

「ホワッツ? サー・ジフウ、ディスはハウなパターンね?」
「押忍! 弟さんがいるで、押忍!」
「……とりあえズ、シシバを捕らえるのカ?」
「いんや、こんれさシシバさ追い出すつもりけんね」

 ……やっぱりエージェントっぽくないです。喋り方って大事ですよね。
 マスクで顔を覆ってる人のマスクはカッコいいですけど。

「ああ、そうだ! 俺達でシシバを追い出す!」
「な!? このクソ兄貴の裏切りもんがぁ!」
「そもそもてめえが王都にいることが問題なんだよ!」

 とりあえず自分は戦わなくて済みそうです。シシバさんは黒蛇部隊に囲まれました。

「うぐぐぐ……! 流石に兄貴含めた黒蛇部隊を相手取るのは分が悪すぎるわ……! しゃーない!」

 ボウンッ!

 突如シシバさんが胸元から取り出した煙玉で辺りが煙に包まれてしまいました。煙が晴れた時にはシシバさんの姿はありませんでした。
 こ、これは……テレポート!? そう思っていると頭上から声がしました。

「じゃあな、兄貴! 俺はとんずらこかせてもらうで! キシシシ!」
「あ!? あの野郎、煙幕で目くらまししてる間に王都を囲んでる壁の上まで駆け上がりやがったな!?」

 壁を駆け上がったんですか!? テレポートじゃなくて!? あの一瞬で!? どんな脚力してるんですか!?
 それだけ言ってシシバさんは壁の向こう側へ姿を消してしまいました。

「……まあいい。下手に騒動になる前に追い払えた」

 ジフウさんはどこか安心した表情をしていました。このまま騒動になってシシバさんが捕まるのが嫌なのでしょう。
 その後、自分とミリアさんの方に向きなおって――

「あー……二人とも。悪いんだが今見たことは内密に頼む。それとミリア様、ラルフルを連れて他所に行ってはもらえないか?」
「……詳しい事情は分からないけど、アタシもゼロラさん達三人の関係に首を突っ込むのは野暮だと思ってたところよ」

 内密にするのは分かるのですが、何故自分達もこの場を離れないといけないのでしょうか?
 そんな自分の疑問を他所に、自分はミリアさんに引き摺られながら有無を言わさず連れていかれてしまいました。

 あぁ……自分のゼロラさんとお姉ちゃんの仲を見守る計画が……。
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