記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
140 / 476
第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇

第141話 対決・国王直轄黒蛇部隊隊長①

しおりを挟む
 ジフウとの戦いはお互い睨み合った状態が何度か続いていた。
 今度は俺からジフウに対して打って出る。

「オラァ!」

 右フックから左アッパーへのコンビネーション。
 ジフウはフックを左腕でガードし、その後のアッパーも自らの右腕を左腕で押さえながらガードして軌道を止める。

「アルァ!」

 俺の攻撃を凌いだジフウはアッパーによって接触していた俺の左腕を掴んで自身の体を反転させ、背負い投げの動きに入る。

「フゥウン!」

 俺は投げられながらもジフウの首根っこに掴みかかり、そのまま一緒に地面へと叩きつけられる――

 ドスゥウウン……!

 ――二人の体が地面とぶつかり、衝撃音が響く。
 背負い投げが完全には決まらなかったので、俺へのダメージは大きくはなかった。だが、それはジフウにも同じことだった。

「やっぱり強いな。シシバにも勝てただろ?」
「まあな。辛勝ではあったがな」

 ジフウは口元を拭う仕草をしながら立ち上がり構えをとると、再び俺と少し間合いを開けてゆっくり移動を始めた。
 俺も立ち上がるとジフウと同じように間合いを開けながら様子を伺う。

 ジフウは弟のシシバとは違い、圧倒的なスピードは持っておらず、遠距離から一気に懐まで潜り込んでくることはしない。
 だが、常に一定の間合い――俺とジフウ、お互いの射程のギリギリ外からゆっくりと様子を伺ってくる。
 シシバのように激しく果敢に攻め立てるのではなく、いつでも攻勢に出ることも守勢に出ることもできるように間合いを保ち続ける、"待ち"を主体にしたスタイル。

「今度はこっちから行くぜ?」

 ジフウは静かにつぶやくと右手を前へと出してきた。俺はそれを払いのけようと右手を出すが――

 ガシィ!

「!? フェイクか!?」

 俺が前に出した右手をジフウの左手が掴んだ。そしてそのまま俺の背後に回り込んで、立ったまま俺の右腕の関節を極める。

「ダアァウラァア!!」

 ドシィイイン!!

 さらにそこから俺と背中合わせになった状態で俺を投げ飛ばす。
 後ろ向きのまま、まともに地面に落とされた俺の体は轟音を響かせ衝撃が走る。

「この程度で終わるわけねえよな? ウッハハハハ!」

 ジフウはシシバと同じように高笑いをしながら俺が立ち上がるのを待っている。

 強い。分かってはいたがジフウは強い。
 以前戦った時は向こうの気が立っていたせいでパンチとキックで激しく攻めてきていたが、今回のように相手との間合いを保ちながら攻防どちらでも的確に対応する戦い方こそが、ジフウ本来の持ち味なのだろう。
 打撃・投げ・組み・関節。その全てが高い水準でまとまっているジフウのスタイルは、さしずめ<総合格闘>といったところか。

「兄弟揃って、デタラメな強さだぜ……」

 マズい。弱点が見当たらない。
 肉体的な能力はほぼ互角。だが、技術面では今のところ組技でジフウに軍配が上がっている。
 何より厄介なのはシシバのように"明確な弱点が見当たらない"ことだ。
 シシバのように打たれ弱いわけでもない。必要とあらばガードも織り交ぜながら組技へと持っていく。間合いを掴めなかったシシバと違い、ジフウは間合いを考えた戦い方を熟知している。
 同じ兄弟ではあるが、シシバとは真逆だ。付け入る隙がない。

 ――だが、隙がなければこちらから作ればいい。まだこちらにも手は残されている。
 俺は再度ジフウに対して構えをとった。

「シシバを倒したんだろ? だったらまだまだ手はあるはずだ! 簡単に終わってくれるな……この俺を、もっと楽しませろぉ!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...