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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇
第142話 対決・国王直轄黒蛇部隊隊長②
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「『楽しませろ』か。宮仕えしてても、そういうところは弟と同じで戦闘狂だな」
「否定はしねえさ。陛下を守るという立場と家族絡みで優遇してもらっている立場上、こういう時でもなきゃ俺の戦闘欲求は満たされねえがな!」
こいつは色々板挟みで大変な分、こうしてストレスを発散しないとやっていられないのだろう。
ジフウは相変わらず俺に対して距離を置いて構えている。こいつはとにかく"後の先"をとることがうまい。こちらから攻撃を仕掛ければ、たちまち絡めとられる。かといって向こうの攻撃をこちらが待っていても、先程のようにフェイントを交えてこちらの攻撃を誘発してくる。ひたすら休む間もなく連撃を浴びせようとも考えたが、それだけでは一歩足りないだろう。
そんな俺の頭にシシバが言っていたことが思い浮かぶ。
『両目があれば兄貴にも勝てる』
シシバの動きはスピードもそうだが、側転回避からの蹴り技等、変幻自在で変則的な技も多かった。もしそれで勝機があるならば――
「――試してみる価値はあるかもな」
「お? 何か作戦でも思いついたか?」
このまま膠着状態が続いても埒が明かない。俺は"もしシシバが両目ともに健在だった時の動き"を想像しながら打って出た。
「来たか! 絡めとられて終わるなよ!?」
俺は右手でパンチを放とうとする。ジフウはそれを止めようと左手で俺の右腕に掴みかかる。
ガシィ!
俺の右腕はジフウに掴まれてしまい、そのまま眼前へと払われる――
「だからその程度じゃ――ゴブゥ!?」
――右腕が掴まれることまでは織り込み済み。俺は右腕をたたんでそのまま体重を前に移動させて、ジフウの腹に肘鉄を入れる。
「やっとまともに入ったな」
「てっめぇ……!?」
ジフウは俺の腕を掴んだまま今度は右手で殴り掛かる。だが今度は俺がジフウの右腕を掴み、再度距離を詰めて頭突きを食らわせる。
ゴウゥウン!
その衝撃にたまらずジフウは掴んでいた左手を離し、その左手で掴まれていた俺の左腕に掌底を放って引き剥がすと、再度距離を置く。
「……随分、面白い戦い方をするな」
「シシバならこう動くんじゃないかと思って試してみたんだが、それなりに効果はあるみたいだな」
「なるほど……。確かに両目があった時のあいつの動きに似てる」
現状でのある意味最適解か。
ジフウはかなり的確な戦い方をするが、それは"型にはまりすぎている"とも言える。
型にはまらない変則的な戦い方には対応しきれない面もあるようだ。
「ウハハハ……! 面白くなってきた……!」
その後も俺とジフウの攻防は続く。
対応されてしまう場面もあったが、俺も回し蹴りから反対の足での延髄蹴り、止められた拳の上から体重を乗せながら反対の手での掌底、振り下ろしたパンチを空振りさせてからのキック等、体幹を大きくずらしながらの連撃で着実にダメージを与えていく。
その間に気付いたこともあった。
ジフウは冷静になったことで組技も使うようになったが、そちらに意識が回ったせいで打撃技の質が以前よりもわずかながら落ちている。
今の俺とジフウなら、打撃技では俺の方が有利だ。
「フゥ……。ダメージは入るようになったが、相変わらず拮抗状態には変わりないか」
「ウハ、ウハハハ……! 打撃では俺の方が劣っちまうか」
ジフウもそのことには気づいているようだ。
こうなってくると後は体力勝負と根競べか。
そう俺が思っていると――
「なら打撃でも俺が上回らせてもらうか。魔力がないお前相手には純粋な格闘戦だけで挑んでみたかったんだが――このまま長々と勝負を続けるのも面倒だ」
――そうジフウは言い放った。
そうか、こいつもシシバの兄だ。俺と違って、"魔力が全くない"わけではない。
「ウハハハ! 光栄に思え! 俺がこの技を使うのは、本当に認めた相手だけだ!!」
笑いながら宣言するかのように、ジフウは自身の右腕を眼前に立てる。
「まずは右。――<蛇の予告>!」
「否定はしねえさ。陛下を守るという立場と家族絡みで優遇してもらっている立場上、こういう時でもなきゃ俺の戦闘欲求は満たされねえがな!」
こいつは色々板挟みで大変な分、こうしてストレスを発散しないとやっていられないのだろう。
ジフウは相変わらず俺に対して距離を置いて構えている。こいつはとにかく"後の先"をとることがうまい。こちらから攻撃を仕掛ければ、たちまち絡めとられる。かといって向こうの攻撃をこちらが待っていても、先程のようにフェイントを交えてこちらの攻撃を誘発してくる。ひたすら休む間もなく連撃を浴びせようとも考えたが、それだけでは一歩足りないだろう。
そんな俺の頭にシシバが言っていたことが思い浮かぶ。
『両目があれば兄貴にも勝てる』
シシバの動きはスピードもそうだが、側転回避からの蹴り技等、変幻自在で変則的な技も多かった。もしそれで勝機があるならば――
「――試してみる価値はあるかもな」
「お? 何か作戦でも思いついたか?」
このまま膠着状態が続いても埒が明かない。俺は"もしシシバが両目ともに健在だった時の動き"を想像しながら打って出た。
「来たか! 絡めとられて終わるなよ!?」
俺は右手でパンチを放とうとする。ジフウはそれを止めようと左手で俺の右腕に掴みかかる。
ガシィ!
俺の右腕はジフウに掴まれてしまい、そのまま眼前へと払われる――
「だからその程度じゃ――ゴブゥ!?」
――右腕が掴まれることまでは織り込み済み。俺は右腕をたたんでそのまま体重を前に移動させて、ジフウの腹に肘鉄を入れる。
「やっとまともに入ったな」
「てっめぇ……!?」
ジフウは俺の腕を掴んだまま今度は右手で殴り掛かる。だが今度は俺がジフウの右腕を掴み、再度距離を詰めて頭突きを食らわせる。
ゴウゥウン!
その衝撃にたまらずジフウは掴んでいた左手を離し、その左手で掴まれていた俺の左腕に掌底を放って引き剥がすと、再度距離を置く。
「……随分、面白い戦い方をするな」
「シシバならこう動くんじゃないかと思って試してみたんだが、それなりに効果はあるみたいだな」
「なるほど……。確かに両目があった時のあいつの動きに似てる」
現状でのある意味最適解か。
ジフウはかなり的確な戦い方をするが、それは"型にはまりすぎている"とも言える。
型にはまらない変則的な戦い方には対応しきれない面もあるようだ。
「ウハハハ……! 面白くなってきた……!」
その後も俺とジフウの攻防は続く。
対応されてしまう場面もあったが、俺も回し蹴りから反対の足での延髄蹴り、止められた拳の上から体重を乗せながら反対の手での掌底、振り下ろしたパンチを空振りさせてからのキック等、体幹を大きくずらしながらの連撃で着実にダメージを与えていく。
その間に気付いたこともあった。
ジフウは冷静になったことで組技も使うようになったが、そちらに意識が回ったせいで打撃技の質が以前よりもわずかながら落ちている。
今の俺とジフウなら、打撃技では俺の方が有利だ。
「フゥ……。ダメージは入るようになったが、相変わらず拮抗状態には変わりないか」
「ウハ、ウハハハ……! 打撃では俺の方が劣っちまうか」
ジフウもそのことには気づいているようだ。
こうなってくると後は体力勝負と根競べか。
そう俺が思っていると――
「なら打撃でも俺が上回らせてもらうか。魔力がないお前相手には純粋な格闘戦だけで挑んでみたかったんだが――このまま長々と勝負を続けるのも面倒だ」
――そうジフウは言い放った。
そうか、こいつもシシバの兄だ。俺と違って、"魔力が全くない"わけではない。
「ウハハハ! 光栄に思え! 俺がこの技を使うのは、本当に認めた相手だけだ!!」
笑いながら宣言するかのように、ジフウは自身の右腕を眼前に立てる。
「まずは右。――<蛇の予告>!」
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