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第6章 少年少女の思いの先
第73話 戦いの夜が明けて
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「大丈夫か、あんた? 無理はするな」
「大丈夫だ。それより早くミリア様とラルフルの元へ……!」
俺はミリアが連れていた衛兵の肩を抱えながら、崖下へと向かっていた。
あれから結構時間が経っているが、大丈夫だろうか……?
「そこの脇道を下ってくれ。遠回りになるが崖下に行ける」
「その必要はないのです」
俺達が脇道に入ろうとすると、そこからガルペラが上がってきた。
「ガルペラだけか? ラルフルとミリアはどうしたんだ?」
「今は二人の時間なのです。邪魔するのは無粋なのです」
笑顔で答えるガルペラを見て俺は理解した。
よかった……。間に合ったんだ……。
それに二人の仲も戻ったようだ。
「おやおや? そっちは思ったより大変だったみたいだね」
聖堂正面からリョウ神官が歩いてきた。いつもと同じ、どこかおどけた語り口だ。
「そっちもうまくいったみたいだな」
「ちょーっと暴れすぎちゃったけどね。クフフフ」
なんだかんだで強いんだよな、こいつ。素行最悪だけど。
俺達はその日、スタアラ魔法聖堂内で一泊させてもらうことになった。
■
「あ、あの~……ミリアさん? そろそろこの体勢やめませんか?」
「ダメよ。アンタのケガだって治りきったわけじゃないのに、放っておいたらまた無茶するつもりでしょ?」
「だからって膝枕する必要はないんじゃないですか。……それも皆さんの目の前で」
翌朝、俺、ガルペラ、ラルフル、ミリア、リョウ神官の五人は聖堂の一室に集まっていた。
なお、ラルフルはミリアの膝の上で無理矢理膝枕されている。
なんだか二人の周囲に綺麗な花畑が見える……ような気がする。
「甘いです! この光景、すっごく甘いのです! ブラックコーヒーを飲んでるのに甘いのです!」
「いやいや、ガルペラ侯爵。この光景こそボクが求めていたものだよ。うんうん。ボクも頑張った甲斐があったね」
やたらと口の中が甘ったるそうなガルペラと、いつものいやらしい笑顔で二人を見るリョウ神官。
うん。平和な光景だ。
「ゼロラさん、ありがとうございました。このご恩は忘れません」
「別に俺は大したことしてねえよ」
「ガルペラ侯爵もありがとうございました。あなたがいなければラルフルを助けられませんでした」
「この件については貸し借りなしなのです。私も二人が無事でよかったのです」
「リョウ大神官、聖堂正面での戦い、大儀でした」
「じゃあお礼としてラルフル君との今後を逐一ボクに伝えてくれないかな?」
「それとこれとは話が別です」
「……ミリア様は意地悪だね」
俺達は談笑を続けた。
ミリアもスタアラ魔法聖堂一丸となってガルペラの意思に賛同してくれることになった。ラルフルの件を抜きにしても聖堂として、貴族と平民の格差は見過ごせないようだ。
「こちらでも協力できる相手がいないか探してみます。また何かあったら連絡いたします」
「協力感謝なのです!」
「それじゃ、俺達はこれで帰るとするか」
「折角だから門まではボクが送ってあげるよ」
俺とガルペラはリョウ神官に案内されてスタアラ魔法聖堂を後にした。
「あの~。自分はさっきから膝枕されたままなのですが? そんな状態で大事な話を進めないでほしいです。それと自然に自分を置いていかないでくださいよ~」
ラルフルは置いてきた。あいつの今の居場所はここだ。
「大丈夫だ。それより早くミリア様とラルフルの元へ……!」
俺はミリアが連れていた衛兵の肩を抱えながら、崖下へと向かっていた。
あれから結構時間が経っているが、大丈夫だろうか……?
「そこの脇道を下ってくれ。遠回りになるが崖下に行ける」
「その必要はないのです」
俺達が脇道に入ろうとすると、そこからガルペラが上がってきた。
「ガルペラだけか? ラルフルとミリアはどうしたんだ?」
「今は二人の時間なのです。邪魔するのは無粋なのです」
笑顔で答えるガルペラを見て俺は理解した。
よかった……。間に合ったんだ……。
それに二人の仲も戻ったようだ。
「おやおや? そっちは思ったより大変だったみたいだね」
聖堂正面からリョウ神官が歩いてきた。いつもと同じ、どこかおどけた語り口だ。
「そっちもうまくいったみたいだな」
「ちょーっと暴れすぎちゃったけどね。クフフフ」
なんだかんだで強いんだよな、こいつ。素行最悪だけど。
俺達はその日、スタアラ魔法聖堂内で一泊させてもらうことになった。
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「あ、あの~……ミリアさん? そろそろこの体勢やめませんか?」
「ダメよ。アンタのケガだって治りきったわけじゃないのに、放っておいたらまた無茶するつもりでしょ?」
「だからって膝枕する必要はないんじゃないですか。……それも皆さんの目の前で」
翌朝、俺、ガルペラ、ラルフル、ミリア、リョウ神官の五人は聖堂の一室に集まっていた。
なお、ラルフルはミリアの膝の上で無理矢理膝枕されている。
なんだか二人の周囲に綺麗な花畑が見える……ような気がする。
「甘いです! この光景、すっごく甘いのです! ブラックコーヒーを飲んでるのに甘いのです!」
「いやいや、ガルペラ侯爵。この光景こそボクが求めていたものだよ。うんうん。ボクも頑張った甲斐があったね」
やたらと口の中が甘ったるそうなガルペラと、いつものいやらしい笑顔で二人を見るリョウ神官。
うん。平和な光景だ。
「ゼロラさん、ありがとうございました。このご恩は忘れません」
「別に俺は大したことしてねえよ」
「ガルペラ侯爵もありがとうございました。あなたがいなければラルフルを助けられませんでした」
「この件については貸し借りなしなのです。私も二人が無事でよかったのです」
「リョウ大神官、聖堂正面での戦い、大儀でした」
「じゃあお礼としてラルフル君との今後を逐一ボクに伝えてくれないかな?」
「それとこれとは話が別です」
「……ミリア様は意地悪だね」
俺達は談笑を続けた。
ミリアもスタアラ魔法聖堂一丸となってガルペラの意思に賛同してくれることになった。ラルフルの件を抜きにしても聖堂として、貴族と平民の格差は見過ごせないようだ。
「こちらでも協力できる相手がいないか探してみます。また何かあったら連絡いたします」
「協力感謝なのです!」
「それじゃ、俺達はこれで帰るとするか」
「折角だから門まではボクが送ってあげるよ」
俺とガルペラはリョウ神官に案内されてスタアラ魔法聖堂を後にした。
「あの~。自分はさっきから膝枕されたままなのですが? そんな状態で大事な話を進めないでほしいです。それと自然に自分を置いていかないでくださいよ~」
ラルフルは置いてきた。あいつの今の居場所はここだ。
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