記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
60 / 476
第6章 少年少女の思いの先

第60話 スタアラ魔法聖堂へ

しおりを挟む
「ガルペラ侯爵とゼロラ様ですね。お話は聖女ミリア様より伺っています。どうぞこちらへ」

 俺とガルペラはスタアラ魔法聖堂に到着すると、門番に聖堂内部へと案内された。
 ルクガイア王国内の重要拠点というだけのことはあり、外装も内装も立派な造りだ。
 一つ気になるのは俺につけられた衛兵が入り口の門番一人だったのに対し、ガルペラにつけられた衛兵は四人ということだ。身分の違いからだろうか?

「なあ、門番のあんた。なんでガルペラにはこんなに衛兵がついてるんだ?」
「ゼロラ様はリョウ大神官のご友人でしたよね……」

 察した。ここはスタアラ魔法聖堂。あの腐女神官もいるんだった。

「私も聖堂の中に入るのは初めてなのです。それより衛兵の皆さんはなんで怖い顔をしながら前を見てるのですか?」

 よく見るとガルペラの周りの衛兵は何かに強い警戒心を抱いている。いや、それが何かなのは分かり切った話なのだが。

「クフフフ。ガルペラ侯爵にゼロラ殿。ようこそスタアラ魔法聖堂へ。特にガルペラ侯爵と会うのは初めてですね。噂通り麗しい少女でボクも感激しております」
「うわぁ……」

 思わず変な声が出た。聖堂の奥にある階段の上で待っていたのは俺の中での"会いたくない人間ベスト3"にランクインしている、リョウ神官だった。

「申し訳ございません、ガルペラ侯爵にゼロラ様。私は門番としての仕事もありますので、ここから先はリョウ大神官がご案内いたします。申し訳ございません」
「なんで二回も謝ったのですか?」
「……知らなくていい」

 それにしても案内人はリョウ神官かよ……。ここから俺とガルペラとリョウ神官の三人で聖女様がいる部屋まで行かなきゃならねえのか……。

「君達も下がっていいよ」
「いえ。ミリア様がお待ちしている部屋まで護衛せよとの命を受けているので」

 よかった。さっきの門番以外の衛兵四人は残ってくれるのか。

「これより先はミリア様のおわす場所。護衛は一層厳重に行います」

 さらに衛兵が四人増えて八人になった。どんだけ信用ねえんだよ、リョウ神官……。

「チッ……。うまくゼロラ殿を撒いてガルペラ侯爵と二人きりになろうと思ったのに……」

 本音を隠す努力をしろ。このダメ神官。



 先頭を行くリョウ神官のすぐ後ろに俺、その後ろを少し離れて衛兵八人に超厳重に守られたガルペラがついてくるという、傍から見ると"ガルペラが聖堂の大権力者"に見えてしまいそうな構図で聖堂の奥へと進んで行った。

「ゼロラ殿も衛兵達も、どうしてボクの邪魔をするのかな?」
「むしろなんでお前は来客にまで手を出そうとするんだ?」

 もうここが聖堂なんてことは知ったこともなく、俺はいつもの調子でリョウ神官にツッコミを入れる。

「まあ、表向きの理由はここまでにしよう。半分は本気だったけど」

 半分も本気ならアウトだろ。だが、表向きの理由だと?

「ゼロラ殿達はミリア様とラルフル君のことについては聞いたかな?」
「お前……何か知ってるんだな?」
「ご名答。そのせいでミリア様のお心はひどく荒んでおいでなのさ。……今誰かに会うのは得策じゃないかもね」

 仮にも大神官であるこいつの地位ならば、事情を知っていてもおかしくはない。だがそうなるとラルフルと聖女様の個人的な理由ではなく、何か立場的な問題か?

「理由を教えてはくれねえか?」
「それはボクの口からは言えないね。第一、君達は今回、協力の申し立てでやって来たと聞いたけど?」
「事情が変わった。ラルフルの件について話がしたい。お前が言わないなら本人から直接聞く」
「そうしてくれたまえ。……ボクにはどうにもできない話だ」

 リョウ神官が真面目な顔で俺に言葉を返す。
 リョウ神官の真面目な顔ってあんまり……いや、まったく見たことがない。それだけの事情があるってことか。



「お二方ともお待たせいたしました。こちらで当聖堂の聖女、ミリア様がお待ちです」

 リョウ神官がひと際立派な扉の前でこちらにお辞儀をして案内を終える。

「ここに聖女ミリア様がいるのですか。それにしてもゼロラさんはこういうところは慣れてなさそうなのに、妙に落ち着いてるですね」
「悪友との話で緊張も何もなかった」
「ああ、ゼロラさんとリョウ大神官はお友達だったですね。……悪友ってどういうことです?」

 ガルペラ。世の中には知らない方がいい、真っ黒な心を持った人間だっているんだ。それがスタアラ魔法聖堂の中であってもな。

「では我らもこれで失礼します。者ども! 部屋を守るものを残してリョウ大神官を連れて行くのだ!」
「え? いや? ボクまだ何もしてないのに?」

 リョウ神官が衛兵にズルズルと引きずられて無理矢理部屋から遠ざけられる。
 立場上一緒にここまで来たんだろうが、あいつがついてくる意味あったのか?

「よく分からないですけど、まずは目の前の課題からです。部屋に入るです」
「そうだな」

 まあ、あのクソ神官がいないのは幸いだ。『まだ何もしてない』と言ってたが、言い換えれば『後で何かする』ともとれるし。
 俺とガルペラは聖女ミリア様が待つ部屋へと入っていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...