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第3章 汚れ仕事からの脱却
第25話 包囲網
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ラルフルの提案。"ガルペラ侯爵側につく"。
確かにドーマン男爵より上位貴族であるガルペラ侯爵の下に入れば丸く収まるかもしれない。
「貴族から身を守るために貴族に助けを求めるか……。だが下手をすれば今度はガルペラ侯爵に圧力をかけられかねねえぞ?」
「それについては大丈夫だと思います。ガルペラ侯爵は平民の立場改善に努めておられる方なので、こちらを悪いようには扱わないかと」
イトーさんが不安を述べるが、ラルフルの言う通りガルペラ侯爵は今まで俺に仕事を依頼してきた貴族たちとは目線が違う。自身の領地であるセンビレッジの発展と領民の生活を守るために尽力しているという噂はよく聞いている。
「今のところ他に策はねえし、それで行くしかなさそうだな」
「まあ。このままズルズルいくわけにもいかないしな」
俺とイトーさんはラルフルの考えに従い、センビレッジについたらガルペラ侯爵のもとに向かうことにした。
「自分、お役に立てましたか? お役に立てましたか!?」
誇らしげなラルフル。すごく嬉しそうだな。まあ、名案ありがとよ。今度お菓子でもおごってやるよ。
■
俺達三人はセンビレッジの街に入った。
「では早速ガルペラ侯爵のお屋敷に向かいましょう!」
「いや、待て。……どうやら見張られてるみてえだぜ」
ラルフルとイトーさんに俺が発言する。丁度街に入ったあたりからだ。何人もの目線がこちらに向かっている気配を感じ取れた。
「流石だな、ゼロラ。こりゃあ……結構な数の人間に見張られてるぜ」
「そ、そうなんですか!? じ、自分には分からないです!」
「あまりキョロキョロするな。下手な動きを見せるとどうなるか分からねえ……」
イトーさんも俺と同じく気配を感じ取っていた。ラルフルは気付いていないようだ。
はっきりと姿を確認することはできない。だが、俺達が見張られていることは確かだ。
ドーマン男爵の手の者だろう。おそらく俺がちゃんと依頼を遂行するかの監視役か……。いや……。
「……男爵の部下にしては数が多すぎねえか? 狙いはゼロラ一人だろうが、一人につける見張りの数じゃねえぞ?」
そう、数が多すぎるのだ。イトーさんも感じ取った気配から俺と同じ疑問を抱いていた。
「も、もしかして……ガルペラ侯爵の部下もいるのでは……?」
気配は感じ取れていないが、見張りの数の多さを聞いたラルフルは一つの可能性を述べた。
「……なるほど。だとすれば納得がいく。ドーマン男爵の動きはもうとっくにガルペラ侯爵に筒抜けで、そのガルペラ侯爵も身を守るために俺を見張ってるってわけか……」
ドーマン男爵とガルペラ侯爵の二勢力による包囲網。これでは素直にガルペラ侯爵の元へと行けそうにない。
「ラルフルの話が本当ならばガルペラ侯爵は相当なやり手だな。……こっちとしては不都合だが」
「それぐらいやり手な方が、俺も相談しやすいってもんさ」
イトーさんが困惑もしているが、プラスに考えればガルペラ侯爵の手腕はすでにドーマン男爵を上回っている証明にもなる。
「ですがどうしましょう? このままでは埒があきませんよ?」
「……一旦人ごみに紛れ込むぞ。様子を伺いながら隙をついて、俺はガルペラ侯爵邸に忍び込む」
「忍び込むって……助けを求めに行くのに完全に不審者じゃねえか……」
だが今はこれぐらいしか方法が思いつかない。仮に見られたとしてもガルペラ侯爵邸に忍び込む様子を見ればドーマン男爵の部下は納得するだろう。ガルペラ侯爵の部下に見つけられると警戒されてしまうが……。
「とにかく人ごみに紛れるのには賛成だ。……ん? 都合よく目の前に人だかりが見えるな」
イトーさんに言われて前方を見ると何やらお偉いさんでも来ているのか、見物人であふれかえっている。丁度俺たちの横を通りかかった関係者と思われる人間が何かを話していたので聞き耳を立ててみた。
「聖女様も大変だな。接待とはいえ、ドーマン男爵の相手をしなきゃいけないなんて」
「リョウ大神官がいないのは幸いだったな。あの人、同伴できないことをメチャクチャ愚痴ってたけど」
…………。
どうやら"聖女"と呼ばれるお方がドーマン男爵のもとに来ているらしい。
「聖女様ってのに会ったことはねえが、色々大変なんだろうな」
「ああ。俺も噂で聞いたことがあるだけだ。聖女と呼ばれるようになると、社交界での付き合いも必要なんだな」
俺とイトーさんは他愛ない感想を述べた。
そう。俺たちの知り合いなんてさっきの会話に出てこなかったのだ。リョウ神官の名前なんて出てこなかったのだ。リョウ神官の悔しがる顔が思わず目に浮かぶが、そんなことは関係ないのだ。
「よ、よかった……。ミリアさんの近くにあの人がいなくて……」
ああ、そうか。ラルフルはあいつの被害者だったな。
……ん? ミリアさん?
「なんだ? ラルフルは聖女様と知り合いなのか?」
「スタアラ魔法聖堂で修行してたんなら知り合っててもおかしくねえが、もしかしてさっきの昔話に出てきた仲のいいシスターのことか?」
俺とイトーさんがラルフルに尋ねると――
「そ、そそそそ、そんな! じ、自分はミリアさ……聖女様とは、特別親しくともなんとも……!」
いや、俺達は聖女様との仲がどうなのかなんて聞いてないんだが? 声が上ずってるし、妙に顔が赤いし……。この反応ってもしかして……。
「お前、その聖女ミリア様に惚れてるのか?」
「じ、じじじ、自分は! ミリアさんとはお友達なだけです! 付き合ってなんかいません! 手を握ったこと……は、子供の頃にありましたけど! 好きとかそんなのじゃありませんから!!」
煙でも出そうなぐらい顔を真っ赤にしながらの弁明という名の自爆。
こいつ……わかりやすいな。
確かにドーマン男爵より上位貴族であるガルペラ侯爵の下に入れば丸く収まるかもしれない。
「貴族から身を守るために貴族に助けを求めるか……。だが下手をすれば今度はガルペラ侯爵に圧力をかけられかねねえぞ?」
「それについては大丈夫だと思います。ガルペラ侯爵は平民の立場改善に努めておられる方なので、こちらを悪いようには扱わないかと」
イトーさんが不安を述べるが、ラルフルの言う通りガルペラ侯爵は今まで俺に仕事を依頼してきた貴族たちとは目線が違う。自身の領地であるセンビレッジの発展と領民の生活を守るために尽力しているという噂はよく聞いている。
「今のところ他に策はねえし、それで行くしかなさそうだな」
「まあ。このままズルズルいくわけにもいかないしな」
俺とイトーさんはラルフルの考えに従い、センビレッジについたらガルペラ侯爵のもとに向かうことにした。
「自分、お役に立てましたか? お役に立てましたか!?」
誇らしげなラルフル。すごく嬉しそうだな。まあ、名案ありがとよ。今度お菓子でもおごってやるよ。
■
俺達三人はセンビレッジの街に入った。
「では早速ガルペラ侯爵のお屋敷に向かいましょう!」
「いや、待て。……どうやら見張られてるみてえだぜ」
ラルフルとイトーさんに俺が発言する。丁度街に入ったあたりからだ。何人もの目線がこちらに向かっている気配を感じ取れた。
「流石だな、ゼロラ。こりゃあ……結構な数の人間に見張られてるぜ」
「そ、そうなんですか!? じ、自分には分からないです!」
「あまりキョロキョロするな。下手な動きを見せるとどうなるか分からねえ……」
イトーさんも俺と同じく気配を感じ取っていた。ラルフルは気付いていないようだ。
はっきりと姿を確認することはできない。だが、俺達が見張られていることは確かだ。
ドーマン男爵の手の者だろう。おそらく俺がちゃんと依頼を遂行するかの監視役か……。いや……。
「……男爵の部下にしては数が多すぎねえか? 狙いはゼロラ一人だろうが、一人につける見張りの数じゃねえぞ?」
そう、数が多すぎるのだ。イトーさんも感じ取った気配から俺と同じ疑問を抱いていた。
「も、もしかして……ガルペラ侯爵の部下もいるのでは……?」
気配は感じ取れていないが、見張りの数の多さを聞いたラルフルは一つの可能性を述べた。
「……なるほど。だとすれば納得がいく。ドーマン男爵の動きはもうとっくにガルペラ侯爵に筒抜けで、そのガルペラ侯爵も身を守るために俺を見張ってるってわけか……」
ドーマン男爵とガルペラ侯爵の二勢力による包囲網。これでは素直にガルペラ侯爵の元へと行けそうにない。
「ラルフルの話が本当ならばガルペラ侯爵は相当なやり手だな。……こっちとしては不都合だが」
「それぐらいやり手な方が、俺も相談しやすいってもんさ」
イトーさんが困惑もしているが、プラスに考えればガルペラ侯爵の手腕はすでにドーマン男爵を上回っている証明にもなる。
「ですがどうしましょう? このままでは埒があきませんよ?」
「……一旦人ごみに紛れ込むぞ。様子を伺いながら隙をついて、俺はガルペラ侯爵邸に忍び込む」
「忍び込むって……助けを求めに行くのに完全に不審者じゃねえか……」
だが今はこれぐらいしか方法が思いつかない。仮に見られたとしてもガルペラ侯爵邸に忍び込む様子を見ればドーマン男爵の部下は納得するだろう。ガルペラ侯爵の部下に見つけられると警戒されてしまうが……。
「とにかく人ごみに紛れるのには賛成だ。……ん? 都合よく目の前に人だかりが見えるな」
イトーさんに言われて前方を見ると何やらお偉いさんでも来ているのか、見物人であふれかえっている。丁度俺たちの横を通りかかった関係者と思われる人間が何かを話していたので聞き耳を立ててみた。
「聖女様も大変だな。接待とはいえ、ドーマン男爵の相手をしなきゃいけないなんて」
「リョウ大神官がいないのは幸いだったな。あの人、同伴できないことをメチャクチャ愚痴ってたけど」
…………。
どうやら"聖女"と呼ばれるお方がドーマン男爵のもとに来ているらしい。
「聖女様ってのに会ったことはねえが、色々大変なんだろうな」
「ああ。俺も噂で聞いたことがあるだけだ。聖女と呼ばれるようになると、社交界での付き合いも必要なんだな」
俺とイトーさんは他愛ない感想を述べた。
そう。俺たちの知り合いなんてさっきの会話に出てこなかったのだ。リョウ神官の名前なんて出てこなかったのだ。リョウ神官の悔しがる顔が思わず目に浮かぶが、そんなことは関係ないのだ。
「よ、よかった……。ミリアさんの近くにあの人がいなくて……」
ああ、そうか。ラルフルはあいつの被害者だったな。
……ん? ミリアさん?
「なんだ? ラルフルは聖女様と知り合いなのか?」
「スタアラ魔法聖堂で修行してたんなら知り合っててもおかしくねえが、もしかしてさっきの昔話に出てきた仲のいいシスターのことか?」
俺とイトーさんがラルフルに尋ねると――
「そ、そそそそ、そんな! じ、自分はミリアさ……聖女様とは、特別親しくともなんとも……!」
いや、俺達は聖女様との仲がどうなのかなんて聞いてないんだが? 声が上ずってるし、妙に顔が赤いし……。この反応ってもしかして……。
「お前、その聖女ミリア様に惚れてるのか?」
「じ、じじじ、自分は! ミリアさんとはお友達なだけです! 付き合ってなんかいません! 手を握ったこと……は、子供の頃にありましたけど! 好きとかそんなのじゃありませんから!!」
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こいつ……わかりやすいな。
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