14 / 255
第2章
第14話 観察される対象
しおりを挟む
窓の外は午後の陽光。室内には安定した空気。
教師の話し声が音響措置が成された天井に反響して、生徒の耳に入っていく様が見て取れるようだった。その内のどれくらいがきちんと脳内に留まっているだろうか、と想像。そんなことを考えている自分も、幾分意識がそれていることを認識。
教室の皆は眠たそうだった。実際に眠っている生徒もちらほらと見られる。中学生の頃から見慣れた光景だった。小学生の頃はどうっただろうか。内に残っている印象としては、皆が皆一心に先生の話に耳を傾けて、きらきらとしていたように覚えている。ただ、印象というものは当てにならない。あとからいくらでも改竄できてしまう。
目の前に掌を広げて、なんとなくその表面を見つめてみる。血管が反比例のグラフのように巡っているのが分かった。軸は一つしかない。ほかの人の場合はどうだろう、と思考。隣の席に座る生徒に見せてもらおうかと思いついたが、実行に移す一歩手前で自制した。
「数学というものは、結局のところ、世界をすべて数字で捉えようという学問ですからね。そういう点では、国語や英語と何ら変わりはない。国語とは、我々の国では日本語のことですから、世界をすべて日本語で捉えようという試みだし、英語とは、世界をすべて英語で捉えようという試みでしょう。だから、それ故に、したがって、英、国、数、と並べて提示されるのだと、私なんかは考えているわけです。それに対して、理科、社会というのは、それとは少し趣が違っている。その両者は、世界の、捉え方、ではあるかもしれないが、それより前に示した三者に比べると、世界そのものを反映している色が強いわけであります。ええ、ですから、こちらの方は実体といっても良いかもしれない。そうすると、英語、国語、数学は、インターフェースといえることになります。インターフェースって、分かりますか?」
数学の時間だったが、教師は数式の解読を放棄して、雑談をしていた。月夜は、どちらかというと、授業の内容より、こうした雑談の方が好きだ。けれど、そう考えてから、いや、どちらとも同様に好きかもしれない、と考え直して、それから、今度は、好きとは何だろう、というところに考えが行き着いた。
数字は表現だ。
文字も表現だ。
しかし、表現は世界ではない。
では、世界とは何か?
世界とは、地球のことか? それとも、宇宙のことか?
「インターフェースって、分かりますか?」
教師の話し声が音響措置が成された天井に反響して、生徒の耳に入っていく様が見て取れるようだった。その内のどれくらいがきちんと脳内に留まっているだろうか、と想像。そんなことを考えている自分も、幾分意識がそれていることを認識。
教室の皆は眠たそうだった。実際に眠っている生徒もちらほらと見られる。中学生の頃から見慣れた光景だった。小学生の頃はどうっただろうか。内に残っている印象としては、皆が皆一心に先生の話に耳を傾けて、きらきらとしていたように覚えている。ただ、印象というものは当てにならない。あとからいくらでも改竄できてしまう。
目の前に掌を広げて、なんとなくその表面を見つめてみる。血管が反比例のグラフのように巡っているのが分かった。軸は一つしかない。ほかの人の場合はどうだろう、と思考。隣の席に座る生徒に見せてもらおうかと思いついたが、実行に移す一歩手前で自制した。
「数学というものは、結局のところ、世界をすべて数字で捉えようという学問ですからね。そういう点では、国語や英語と何ら変わりはない。国語とは、我々の国では日本語のことですから、世界をすべて日本語で捉えようという試みだし、英語とは、世界をすべて英語で捉えようという試みでしょう。だから、それ故に、したがって、英、国、数、と並べて提示されるのだと、私なんかは考えているわけです。それに対して、理科、社会というのは、それとは少し趣が違っている。その両者は、世界の、捉え方、ではあるかもしれないが、それより前に示した三者に比べると、世界そのものを反映している色が強いわけであります。ええ、ですから、こちらの方は実体といっても良いかもしれない。そうすると、英語、国語、数学は、インターフェースといえることになります。インターフェースって、分かりますか?」
数学の時間だったが、教師は数式の解読を放棄して、雑談をしていた。月夜は、どちらかというと、授業の内容より、こうした雑談の方が好きだ。けれど、そう考えてから、いや、どちらとも同様に好きかもしれない、と考え直して、それから、今度は、好きとは何だろう、というところに考えが行き着いた。
数字は表現だ。
文字も表現だ。
しかし、表現は世界ではない。
では、世界とは何か?
世界とは、地球のことか? それとも、宇宙のことか?
「インターフェースって、分かりますか?」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【厳選】意味怖・呟怖
ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。
※考察大歓迎です✨
※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中
天狗の盃
大林 朔也
ライト文芸
兄と比較されて育った刈谷昌景は、一族の役割を果たす為に天狗のいる山へと向かうことになった。その山は、たくさんの鴉が飛び交い、不思議な雰囲気が漂っていた。
山に着くと、天狗は「盃」で酒を飲むということだったが、その盃は、他の妖怪によって盗まれてしまっていた。
主人公は、盃を取り戻す為に天狗と共に妖怪の世界を行き来し、両親からの呪縛である兄との比較を乗り越え、禍が降り注ぐのを阻止するために、様々な妖怪と戦うことになるのだった。
正義のヒーローはおじさん~イケてるおじさん三人とアンドロイド二体が事件に挑む!?~
桜 こころ
ライト文芸
輪島隆は55歳のしがないおじさん、探偵事務所を営んでいる。
久しぶりに開かれる同窓会に足を運んだことが、彼の運命を変えることになる。
同窓会で再会した二人のおじさん。
一人は研究大好き、見た目も心も可愛いおちゃめな天才おじさん!
もう一人は謎の多い、凄技を持つ根暗イケメンおじさん?
なぜか三人で探偵の仕事をすることに……。
三人はある日、野良猫を捕獲した。
その首輪に宝石がついていたことから大事件へと発展していく。
おじさん三人とアンドロイド二体も加わり、探偵の仕事ははちゃめちゃ、どんちゃん騒ぎ!?
尾道海岸通り café leaf へようこそ
川本明青
ライト文芸
咲和(さわ)は、広島県尾道市に住む大学2年生。
ある日、アルバイト先である海岸通り沿いのカフェの窓から、若い男性が海に落ちるのを目撃する。
マスターや通りがかった高校生らによって助け上げられた彼を、成り行きで少しの間お世話することになってしまうが、彼の正体とはいったい……。
逆さまの迷宮
福子
現代文学
白い世界で気がついた『ボク』。途中で出会った仲間とともに、象徴(シンボル)の謎を解きながら、不可思議な世界から脱出する。
世界とは何か、生きるとは何か、人生とは何か、自分とは何かを追求する、哲学ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる