エルフに転生したけど、魔法じゃなくておもちゃで無双する

暇人太一

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第一章 転生と計画

第三話 コソ泥クソ野郎、地獄行きが決定する

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 俺は今、まさかの衝撃的事実を知り絶望していた。その衝撃的事実とは、【トイBOX】内に収納されているものが手紙だけということである。つまり、お助けアイテムはもらえなかったということだ。

 村はずれの小屋生活が確定している状況を打開するためには、無限に飲み水が湧き出る水筒や食料が複製できる弁当箱が欲しかった。さらに言えば、破損することがない衣服とかあれば最高である。

 しかし、そんなものは一切存在しなかった。

 それならば、この手紙に全てを賭けたい。俺がどうやって転生して、何で転生できたのかなど気になることがいくつかあるからだ。その全てが判明するならば手紙だけでも十分だと納得しよう。

 俺は心の整理を行い、【トイBOX】と念じる。すると、頭の中に透明なタブレットが出てきた。タブレットの一番上には手紙と書かれていて、手紙の下は空欄だった。当然手紙を選ぶ。

 頭の中での操作で十分なようで、手紙も頭の中で開かれた。

 『拝啓、転生者殿。

 突然の転生に驚いていることだろう。少々込み入った状況により転生することが決まったのだが、転生者殿が選ばれた理由はそこに魂があったから。さらに、ハーフエルフになったのは都合がよかったから。ちなみに、父親は人族じゃないから一般的なハーフではないことを覚えておいて欲しい。

 さて、込み入った状況のことは身内の恥になりそうなので後日機会があったらということにして、気になっているであろうスキルのことについて簡単に説明しよう。

 まず、この世界はスキル制である。魔法も複合属性を除けば、適性属性がなければ使用不可能である。だが、魔法以外のスキルで格闘術や鍛冶など訓練次第で身につくものも存在する。

 前提を説明した上で言おう。

 転生者殿のスキルは基本的には・・・・・【トイ】と【トイBOX】、【言語理解】だけである。スキルレベルは五段階あるから、スキルレベルによってできることが増えるかもしれないが、訓練しても剣術などのスキルは表示されない。だが決して無駄にはならないので精進を怠らないように。
 次に、既に膨大な魔力を持っていることを知っているかもしれないが、基本的には・・・・・魔法は使えない。それならば何に使われているかというと、体を覆って鎧のようになっている。一応名前はあって【霊魔武装】という。体の機能に近いせいでスキルと判断されず、明確に記されることはない。強化方法は魔力量を増やし、魔力感知と魔力操作の訓練をすることである。このスキルがあれば簡単には死にはしないと思われる。
 続いて、精霊が近寄って来ないのは理由があるが適性がないわけではない。頑張ってほしい。
 あと一番重要と言っても過言ではないことを言っておこう。転生者殿のスキルは強力であると思われるため、祝福の儀まではキッズロックというものかけ、体験版モードになっているので無茶をしないように。

 最後に、君は神子ではないし勇者や英雄の類いでもない。やって欲しいことはあるが強制ではない。この人生始まったばかりで絶望しているかもしれないが、世界に転生者殿一人ということはありえない。だから希望を持って強く生きていって欲しい。

                敬具

 追伸 もうすぐ行くからねー!』

 意外にも内容が濃く、お助けアイテムと言ってもいいほどにいい手紙だった。内容で気になったことがいくつかある。

 一つ目は、当然父親のことである。あのコソ泥クソ野郎が母親の資産がどうとか言っていたから、母親がエルフなんだろうとは思っていた。そしてハーフと言うくらいだから父親は人族で、母親と一緒に住めなくなったか死んだのだろうと赤子ながらに考えていた。
 だが違うなら生きているのか、そして今どこで何をしているのかが気になるのも仕方がないだろう。

 二つ目は、神様の込み入った状況についてである。そのことがやって欲しいことに関係するのかや、今後の人生にどう影響するのかが気になる。

 三つ目は、当然スキルについてである。ただでさえ意味不明なスキルにキッズロックって……。ちょっと酷いんじゃないかなと思わずにはいられない。

 四つ目は、最後の一文でである。不覚にもウルウルっと来てしまった次の瞬間、一気に力が抜けるような一文が目に飛び込んできたのだ。もうすぐ何が来るんだ? 明らかに手紙を書いた人物とは別人のような口調であったが、手紙にメッセージを書き込める者が下界に降りてきてもいいものなのだろうかという疑問も同時に湧いてきた。

 最後に、神子じゃないことの確定である。別に神子になりたかったわけではない。ただ一発逆転があるとしたら神子になることだけだと思っていたのだ。まぁ当日神子ではありませんので処分しましょうと言われるよりは、早い段階で知っておいた方が逃亡の準備ができるだろう。

 これら五つのことが気になるが、気になったことを踏まえたこれからの行動は、もうすぐ来る何かを待ちつつ魔力量を増やしながら感知と操作の訓練をする。同時に祝福の儀を終えた後、すぐに逃亡できるように準備すること。具体的には、この世界でお金を稼ぐ方法とエルフ統治圏内から出る方法である。出来ることなら差別が少ない場所に行きたい。

 とりあえず、すぐにやらなければならないことは決まっている。意味不明スキルの検証である。どこをどう見れば強力だと思えるのかが疑問でたまらない。確かに使い方が悪ければ事故に繋がったりして危ないけど、殺傷を目的にした攻撃魔法に比べれば可愛いものである。

 というか、ほぼ赤子に【魔導師】のスキルを持たせておく方が危ないんだから、般若さんの娘にはキッズロックより強力そうなチャイルドロックをかけてもらいたい。

 どうにもならないと分かっていても理不尽に対する愚痴というのは自然に出てしまうものだ。

 さて、愚痴を言っていても現状が良くなるはずもないし、時間を失って行くだけなので早速スキル検証を行っていこう。

 スキル【トイ】を意識すると、【トイBOX】のときに頭の中に出てきた透明なタブレットが目の前に現れた。全体的に透明なのに輪郭がくっきりしているせいか、目の前にはっきりと確認できる。例えて言うとするならば、機器を使用しないARである。

 そしてタブレットの画面には商品名と金額、概要がサムネイル画像とともにカラーで表示されていた。

 ーーおい、金とるんかい!

 思わず突っ込んでしまったほど違う意味で驚いた。タブレットの表示方法としては川の名前としても有名な世界最大級の通販サイトに似ている。使いやすいようにとの配慮なんだろうけども、それならば何故意味不明なスキルにキッズロックまでかけて制限をした上で、お金まで払わせようとするのだろうか。

 というか、払ったお金はどこに行くというのだろうか。神様には下界の金銭など不要でしょうに。

 しかも概要を読んでいくと、電化製品が魔化製品になっており電池の代わりが必要らしい。さらに、「間違った使い方をすると破損の原因となりますので、おやめください」と明記されている。

 いったいどこのメーカーだと聞いてみたい。スキルで買った物が壊れるってあり得る? だいたいこういうユニークっぽいスキルで作った物や買った物って、他と一線を画すものが主であるから強力なのでは? でも俺にはこれしかないのだ。我慢してこのスキルと向き合うことにしよう。

 といっても、今は無理だけど……。

 なんてったってお金がないからね。体験版のくせに無料でもらえる物は存在していなかったのだ。まぁお金があっても、おままごとキッチンとか知育系しかないんだけど。

 道理で手紙にスキルについての具体的な説明はなく、魔力を強化するよう書かれているわけである。他にすることないんじゃ説明しても意味がないからだろう。

 ということは【トイBOX】も意味がないのだろう。実際、枕を掴んで収納と念じても何も起こらない。つまり、【トイBOX】はどこまでいってもおもちゃ箱だということだろう。おもちゃ以外は対象外という悲しい落ちだ。

 結局スキル検証は残念な結果に終わり、残ったのは不安と悲しみだけであった。

 そしてそんなときに限って来て欲しくない人物とは現れるものである。

「いやー、あんなに喜んでもらえるとは頑張ったかいがあったってもんだ。それもこれもお前の母親が汚れ堕ちたおかげだな。人族なんかと交わるからボロボロになって早死にすることになるんだ。そんな汚物が遺したゴミクズの面倒をみてやるんだから感謝しろよ!」

 ーーはい、決定! お前だけは許さない。

 見たこともない女性のことだが、それでも自分の身を削ってまで俺を五体満足で生んでくれた人だ。感謝と敬意を抱かない方がおかしいというものだ。そしてそんな誇り高い女性を侮辱したクソ野郎を許せるほど、俺は寛容な性格ではない。

 その報いを受けるときまで、せいぜい人のお金で幸せを満喫していればいい。祝福の儀は俺の独立記念日と報復記念日となることだろう。もちろん、愛しのアイビーも一緒に同じところに行けるだろうよ。

 そして俺が既に言葉を理解していて、復讐を決意していることなど少しも気づかないコソ泥クソ野郎はというと、お金の使い途を考えニヤけ面を浮かべていた。しばらく指を折りながら思案していたが、算段がついたのだろう。俺をつまみ上げて、家へと向かいだした。

 相当触りたくないのか、魔法で補助しながら服の背中部分を掴み、片手でぶら下げながら歩いていた。おかげで地面しか見えないわ、揺られて気持ち悪いわで散々だった。

「ほらよ。この空き家が今日からお前の家だ。幸いなことに先日お前の母親が死んでくれたおかげで空き家ができたわけだ。よかったな。野宿でない上に母親が死んだ場所で。せいぜい祝福の儀まで生きていてくれよ。俺のためにもな!」

 はっはっはっと笑いながら出て行くコソ泥クソ野郎の背中を出せる限りの力で睨みつけ、復讐を堅く心に誓ったのだった。



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