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第13話 不吉な予感
しおりを挟むアミードはあれから何度も、アムルの胎内に精を放った。
アミードに苛まれ、気力も体力もすっかりなくなったアムルを、アミードは裸のまま抱きしめて眠りについた。
早朝、目を覚ましたアムルに、アミードはこれ以上なく優しいキスを落とした。
「アミード……、お前はっ」
まだ体の自由がきかないことに、アムルは顔をしかめた。
「アムル、今から俺が全部終わらせてくる。だから、少しだけいい子で待ってて。
大丈夫、アムルは何も心配いらないよ……」
アミードの微笑みに、アムルは何か言い知れない不吉な予感を覚えた。
「アミード、ちょっと待て!」
「アムルは絶対にここから出ないで。誰も入れないように結界も張っておくから」
アミードはてきぱきと身支度を始める。
「アミード、少しでいいから話を!」
「大丈夫、俺がここに戻ってくるころには、心配事は全部なくなってるよ」
「アミード、ちゃんと説明して! 拘束も今すぐ解いてくれ!」
「ここで待ってて、アムル。……愛してる」
儚げな笑み。
その時のアミードの顔を、アムルは今でも忘れられずにいる……。
――結局、アムルは裸のまま、寝台に一人取り残された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アムルは目を閉じて魔力を集中し、アミードに拘束された身体を自由にするための呪文を唱える。
もともと魔力量が少ないアムル。アミードには魔法ではかなうはずもない。
だが、なぜか今日だけは、魔力をふんだんに身体の内側から感じることができた。
王立学院に通っていたころに習った呪文は、すんなりとアミードの拘束魔法を破ることができた。
――よかった。これで、アミードを止められる。
窓の外を見ると、もうすっかり日は高くなっている。
アミードがなにかよからぬことを考えていることは確実だ。
もうすぐマーリクに輿入れするアムルの純潔を奪った双子の弟。
全部終わらせる、とはいったいどういう意味なのか。
アムルが起き上がると、後孔からはドロリと白い精液が漏れた。
「くそっ…‥!」
アムルは舌打ちすると、自分の指で胎内に残るアミードの白濁を掻きだした。
「くっ……、んっ……」
よみがえってくるのは、あのアミードの悩まし気な吐息と、熱い手のひら、舌使い、そして……。
「……っ」
アムルは歯を食いしばって耐えると、適当な服を身に着け、アミードの部屋へ向かった。
屋敷にはすでに家族の姿はなく、しんとしていた。
「……」
部屋の鏡に映った自分の姿を見て、アムルは激しい嫌悪を覚えた。
衝動的に机の上にあったペーパーナイフを手に取り、肩まで伸ばしていた髪を切り落とす。
後ろ髪を全部短くすると、うなじにはアミードの噛み痕があった。
まだ完全に傷口はふさがっておらず、血がにじんでいる。
――番にはなれなかったみたいだ……。
焦燥感とともに、愛し気にアムルはその傷を撫でる。
――アミード!
そのままアミードのクローゼットに向かい、いつもの女性的な服を脱ぎ捨て、アミードの服を身に着ける。
ぶかぶかだった袖と裾はまくった。不格好に違いなかったが、身体のラインがわかるいつもの装飾ばかりの服装より、ずっと自分らしいとアムルには思えた。
そのまま外に出ると、馬番の男に声をかける。
「……!? アムル様っ!? その、恰好は……?」
いつもと様子のちがうアムルに馬番は目をむいたが、アミードの行く先を聞くと、近くの湖に向かったと教えてくれた。
馬を走らせれば、半刻ほどの距離だ。
「馬を借りるぞ!」
「あ、え!? あ、アムル様っ、あの、奥様の許可は……っ!」
返事より先に、栗毛の馬にまたがると、アムルは一気に走り出した。
――早く、アミードに会いたい!
だが、たどり着いた湖でアムルが見た光景は、アムルを絶望させるものだった……。
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