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第3章 火宅之境
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しおりを挟むついに断り切れず頷いてしまった僕に、静先輩はそれはそれは上機嫌で歯磨きやら何やらせっせと寝る準備を進め始めた。
「もう寝るんですか」
「もうって言っても10時は過ぎたし、今日は一週間ぶりの学校で色々無理させちまったから、気づいてないだけで疲れてるはずなんだ。早めに寝た方がいいし、まぁそれだけじゃないんだけどな。・・・・・・ここ、やることなさすぎ」
最後に静先輩がぼそっと呟いた言葉に、ここにきて極力物を置かないようにしていたことが仇になったと、図星を突かれた。
自分の身なんてこれからどうなるか分かったものじゃないって思ってたのもあるし、何より今までのような裕福な暮らしなんか絶対にしちゃいけないと思ってたから、生きていくために必要なもの以外必要最低限しか置いていなかった。
携帯一つあれば両親や義兄との連絡、世の中の情報を知るためのニュース、大学の課題関係の調べ物等、ほとんどのことが済む。
そのため、テレビやパソコンは必要ない、と置こうと考えたことすらなかった。
あとは必要最低限の食器や服、大学の教材や家の維持に必要なものばかりで、特にこれと言って遊べるものや時間を潰せるものはないのだ。
雅兄はいつも仕事で遅くにきて朝も早くに出てしまうから、話したいことを話してるうちにあっという間に時間が過ぎていた。
だからこんなこと、気になったこともなかった。
それがここにきて仇となった。
そりゃあ必然的に寝るという選択になるわけである。
静先輩と同じ布団に入るのがこんなに早くなるとは。
「うわっ」
歯磨きも済ませてしまって静先輩が何か色々してる間に、本当にもう逃げ道はないのかと必死に考え込んでいたら、戻ってきていたことに全然気づかなかった。
後ろからぐいっとベッドに引きずり込まれて抱きしめられる。
「弥桜・・・・・・」
背中に伝わる温もりと吐息に、トクトクと自分の鼓動を意識してしまう。
抱きしめられている腕の力がゆっくり強くなっていて、より静先輩の存在を意識する。
それにしてもなんだかやけに大人しい気がする。
お風呂でもあれだけ隙あらばあちこち触ってこようとしていたのに。
「いい、匂い」
「え?」
静かに聞こえた言葉に振りむこうとした瞬間、気づけば静先輩に乗っかられて両手を頭の上で一纏めに押さえられていた。
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