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第3章 火宅之境
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しおりを挟むここまできたらもう静先輩が何を言い出そうと驚かない自信がある。
呆れはすれどそれでどうこう思ったりはしないから、お風呂に入ること自体はどうでもいい。
元々帰ってきたら入ろうと思ってたから溜めてから家を出た。
あとは追い炊きすればちゃんと入れるようになる。
だからあとは入りたいなら勝手に入ってくれって話だ。
つまり服もバスタオルもご自分のをお使いください、ということで。
「自分の服もないのに入るとか言ってるんですか・・・・・・」
最悪バスタオルはどうにかなるとしても、服まで借りようとするのはどうかと思う。
そもそも僕の部屋に静先輩が着れるサイズの服がどうしてあると思っているんだろう。
どう考えても僕のサイズじゃ静先輩には小さくて、着れるわけがないのは一目瞭然なはずなのに。
「はぁ」
今日のところはこれ以上何も言うまいと漏れそうになる文句を飲み込んで、クローゼットの中をごそごそと漁る。
そして一番奥から引っ張り出してきたジャージを静先輩に手渡す。
「これ、義兄が泊まりに来た時に置いてったやつです。予備としてあるやつなんで今日は特別です」
両親が僕を大事にしてくれているように、異母兄弟の雅貴兄さん、雅兄もとっても僕を可愛がってくれていた。
雅兄のお母さんが病気で亡くなって僕の母さんと再婚して僕が生まれた。
雅兄の意向でお母さんが亡くなって以来母方の実家に住んでいるけど、距離が近いこともあってしょっちゅう家に来ては夕飯食べてったりお泊りしたりしていた。
母さんと雅兄は直接の血縁関係はないけれど、ちゃんと家族としてとても仲が良い。
僕もそんな家族が大好きだった。
年々酷くなる居心地の悪さもみんなのためなら我慢出来ていた。
それでもどうしようもなくなって家を出ることにした時、母さんと約束したことがもう一つだけあった。
雅兄とはちゃんと会うこと。
最初は母さんたちが家に来るって言ってたんだけど、それはどうしてもいやだって言ったらせめて雅兄にだけは会ってくれって頭を下げられた。
母さんたちは見た目で分かるほど豪華で、言い方悪いかもだけど、金持ちって感じのオーラみたいなのが出まくってる。
そのままこんなところに来られて万が一誰かに見られでもしたら。
即バレる自信がある。
もちろん大学に通ってる時点で裕福なのは隠せていないけれど、うちは製薬会社の社長一家だった。
そこら辺の裕福とはそもそもの格が違うのだ。
もちろん母さんも父さんも有名で、どこで誰に見られていつバレるかわかったものじゃない。
それじゃあ家を出る意味がない。
その分、雅兄は普段仕事に行く時はスーツで家にいるときはさっき出したジャージとかすごくラフな、いい意味で普通の格好で普通の人なのだ。
今は父さんの跡を継いで会社の社長だけど、雅兄は世間への露出があまり好きじゃなくてそういう仕事は今でも母さんと父さんがやってる。
そんな感じですごく大事に大事にしてくれる人だけど、雅兄の側が一番落ち着ける場所だった。
だから雅兄に会うことを約束した。
それで雅兄はちょくちょく泊まりに来ては、大学はどうだとか一人暮らしは不自由してないかとか近況報告みたいなことを聞いて帰る。
そんなこんなで家に来る度にお泊りセットを持ってくるのは大変だからと、服は何着か置きっぱなしにしてあった。
で、静先輩と雅兄は大体同じくらいの身長だから着れるだろうと、引っ張り出してきたわけだ。
若干静先輩の方が大きいかなぐらいだ。
「よっしゃ、ありがと。さ、これで問題は解決したわけだし、弥桜も服持って行くぞ」
「はぁ!?」
それだけ言うと静先輩は僕の返事も待たずにベッドの上に脱ぎっぱなしにしてあるパジャマを拾うと、僕の腕をつかんで問答無用で引っ張ってお風呂場へと歩き出した。
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