僕とあなたの地獄-しあわせ-

第3章 火宅之境

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｢ちょ、ちょっと!! 静先輩、待ってください!! 僕一緒に入るなんて言ってないし、やですよ!!｣
｢え、弥桜が一緒にいてなんで一人で入んなきゃけないんだよ。大丈夫大丈夫、変なこととかしないしその番避けの使い方教えてやるから｣

静先輩はさも当たり前のように言ってるけど、どこも当たり前なんかじゃないから。
え、じゃないよ!!
僕がいるからって一緒に入らなきゃいけない理由なんてないし。

こんなことならちゃんとパジャマ片付けておけばよかった。
雅兄以外家に来ないと思ってたから、朝着替える時に脱いだままベッドに置きっぱなしにしてたのが仇になった。
ちゃんとしまっておけば少しは言い訳をする時間くらい稼げたかもしれない。

少なくともこんな問答無用に引っ張られたりはしなかっただろう。
いくら後悔してもこうなってしまってはもうどうすることも出来ない。
圧倒的に強い力に成す術もなくお風呂場まで連れていかれると、あっという間に素っ裸に剝むかれてしまった。
｢あーあ、こんなに傷作って･･････｣
体中の湿布を一つずつ剝はがしながら治りきっていない痣に優しく触れる。
｢ちょっ･･･ん･･････、擽ったい｣

先輩たちに散々殴られてできた青痣。
酷いものは青いを通りこして黄色くなってしまったものもあった。
どれも酷い痛みは引いてきているが、まだまだ見た目に酷いものが多くしっかり湿布をしていないと痕が残ることになりかねない。
殴られるのも何されるのもΩとしては当然の扱いだと思ってるけど、過程や理由は良くても、その結果が良いかどうかはまた別の話である。
痣自体はあまり見ていて気分のいいものじゃないから、それなりに治そうという努力はしていた。
自分でもそう思うくらいだから、なおさら人に見られていい気分ではない。

｢あんまりじろじろ見ないで･･････｣
いつまでも視線を逸らさない静先輩に気まずくなって、その視線から逃れるようにお風呂に入る。
扉を閉めてから、つい自分から入ってしまったとはっとしてやっぱり出ようと振り向くと、既に扉を開けて静先輩が入ってくるところだった。

｢ぼけっと突っ立って何してんだ｣
当たり前のように全裸で入ってきた静先輩から今度は僕が目を逸らせない。
昨日今日出会ったばかりの人とうちのこのクッソ狭いお風呂に入るとかそんな小さなことが気にならないくらいに、静先輩の体は綺麗だった。
ひょろっひょろの僕とは違って少なすぎず多すぎない均整の取れた筋肉、羨ましい程の身長と手足の長さ。

ただ一つ、腹部に目立つ大きな痣さえなければ完璧な体だった。