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第3章 火宅之境
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しおりを挟む「おっと、そっちじゃないぞ」
「うえっ」
歩き出そうとしたところをがっつり抱え込まれて引き止められた。
反動で後ろにひっくり返りそうになったのを、しっかり静先輩に受け止められてそのまま腕の中に抱き留められる。
「はいはい、こっちこっち」
「ちょ、ちょっと!! どこ連れてくんですか!? 僕は一人で帰るんです」
激しく反抗する僕を軽々と引っ張って正門とは逆方向に歩き始める二人に、それでもなお反抗し続けるけれど、全く僕を捕まえている腕は緩みそうにない。
「俺が弥桜と一緒にいたいんだよ。いいだろ、勝手について行くだけなんだから」
「じゃあどこに連れて行こうとしてるんですか!? 勝手について来るだけなら方向こっちじゃないですし、離してくださいよ!!」
もちろん勝手についてくるのもご遠慮頂きたいが、それ以上にどこかに連れていかれてより長い時間一緒にいる方が、更に致命的であることは誰の目から見ても明白だ。
間違っても家はそっち方向じゃない。
「どうせ目的地が同じなら一緒に行こう。結永が車で来てるから乗っけてってもらお」
ああ、なるほど、車か。
確かにこっちは駐車場のある方向だし、車は西門から出るのが普通だ。
じゃあこっちであってるのか・・・・・・。
って、何納得してんだよ。
そもそも一緒にいたくないって言ってるのに。
「いやだって、放してー!!」
何とかして逃げ出そうとするけど、静先輩の見た目以上に強い力にずるずる引きずられるだけで、全然抵抗できていない。
それに抵抗すれば抵抗するほど周りの人たちの視線が集まるばかりで、当の本人は涼しげな顔をしている。
「すごい周りに見られてるし・・・・・・」
もちろん僕が騒いでるのもあるだろうが、それにしてもみんながみんなして僕たちに道を空けるかのように離れていくものだから不自然すぎて仕方ない。
「そりゃ俺たちと一緒にいたらな」
僕の声に反応するようにぼそっと呟いた静先輩の言葉を聞いて、さっき朝夜先輩と言い争ってたことを思い出した。
「やっぱり!! 朝夜先輩と一緒にいるからみんなに避けられるんだ・・・・・・」
「はぁ? 結永?」
「え?」
なんだ?
僕何かおかしなことを言ったんだろうか。
静先輩に何言ってんだって顔されてしまった。
いや、だってそうでしょ。
静先輩には避けられる原因がないんだから、一緒にいる朝夜先輩に問題があるって考えるのが普通のはず。
「ああ、それね。さっき聞いた時あんまりにも可笑しくて反応出来なかったんだ」
僕たちのやり取りに朝夜先輩が気持ち悪い顔でにやにやしながら、すごく大げさに説明し出した。
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