チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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「まさかあなたがメティーナ殿下だとは思わなかった」
「隠したもの、逆に気づかれてたら怖いわ」

 いつぞや見た研究者気質が嘘のように、可愛らしく髪を結い上げて、うまく扇子で口元を隠しながら喋っている。

「確か第一王女だよね」
「ええ」

 チュールドレスような感じの落ち着いたピンク色のドレス。ちょうどいい感じの大人っぽさがあってすごく綺麗。

「あの弟が二人と妹が一人いる」
「そうだけど・・・? 」

 当たり前の情報を照らし合わせている私に、ほぼ同じ高さの目線で、メティーナ殿下が軽く首を傾げる。

「え、年齢は? 」
「十五よ」


 十五歳で私と同じ目線って・・・。

「なんだか身長が・・・」
「成長しなかったんだから、仕方ないじゃない! 」

 少し食い気味に言われた。

「これでも頑張って寝てるのよ! 」

 あ、やっぱり本人も気にしてたんだ。

「まあ、成長期が遅い人もいるっていうし」
「微妙にフォローになってないフォローなんて要らないわよ・・・」
「・・・」

 何も言わないほうが良かったか・・・。


「大丈夫よ、所詮側妃の子だからって下に見下してくる人たちの数百万倍はましよ」
「そっか」

 「側妃の子」というレッテルが、この国でどれほど重いものなのかはわからないけど、現代でいうと浮気相手との子のようなものだ。肩身の狭い思いをしてきたのだろう。


「そういえば、お兄様から聞いたわよ。あなたが中立を保つっていう話」
「あ、そう。今日メティーナ殿下に会えたら伝えようと思ってたんだけど、まさかあの時の子だったとは思わなかったんだよ」
「ごめんなさいね、騙すような形になってしまって」
「そんな事ないと思うけど? むしろ良かったと思ってる。第一王女として振る舞っているとき以外の様子を知れたからね」
「あらそう? 」

 これは本当にそう。

 あの日見た一人の研究者としてのメティーナ殿下が、演技によるものなのか、一切偽りのない本性なのか、私には判断できない。でも、王女として、一人の王位継承権持ちとして見せる面が彼女の全てではないとわかる。
 権力争いの中では、時に厳しい判断を下すこともあるだろう。それでも、その表面的な彼女しか知らないのと、裏面にいる彼女も知っているのでは、物事に対する見方も変わってくるものだ。


「でも本当にお兄様につかなくてよかったの? 」
「なんで? 」


「セシオン・ルシオンはともかく、どうせ私はいずれこの争いから降りることになるわ」


「・・・ずいぶんと悲観的なんだね」
「知ってる? 王になるための必要条件ってカリスマ性と狡猾さなの。聡明さや人格はあくまで十分条件なのよ。民や貴族たちを惹き付けていられるだけのカリスマ性、そして貴族たちの権力争いの中でうまく立ち回れる狡猾さ。例え王権を手に入れられたとしても、この二つがなければ生き残れないわ」

 確かにそれはそうだね。

「じゃあそう見ると、あなたのお父様は狡猾さが少し足りなさそうだね」
「あら、それを娘である私の前で言っちゃってよかったの? 」
「否定はしないんだね」
「・・・まあそうね、お父様は堅いところがあるもの」

 正直、今回の王位継承騒動に、突然登場した不確定要素である私まで駆り出された理由の一つとして、国王の手腕不足があると言える。より優秀な子を次期国王にしたいというのはわからなくもないが、二年前に最年少の王女様が十歳になった時点で決めれていたら、問題は今の今まで縺れ込まなかった。もたもたしてる間に貴族派閥が成長して、優秀な次期国王を決めれたとしても、成長しすぎた貴族派閥に脅かされ続けるのでは、これまた厄介な問題を次代に残すことになる。

「カリスマ性はお兄様が圧倒的だし、セシオン・ルシオンのように斬新な行動もできないわ。貴族たちにとっては、むしろ知識の持ち過ぎは都合の悪い部分もあるのでしょうね」

 そうやって自嘲する彼女だが、少し寂しそうな目をしていた。

「国王なんてただのとばっちり役職よ」

 本当に立派なのは肩書ぐらいよ、と彼女は続ける。


「・・・本当は国王になりたくないの? 」
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