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番外編ーside セレスティアー
お仕舞いを②
しおりを挟む「その謝罪は受け取りません。貴女は何に謝っているか分かっていますか?」
「…それは」
「俺が。女神の化身の様なお嬢様の初恋相手であるという名誉は、手放す気はありませんから」
そう言って、茶目っ気たっぷりにウィンクするのが、全く似合わなくて今度は私が吹き出してしまう。
「もうっふふ、似合わないわ…っあは…」
「くく…確かに。お嬢様の旦那様は似合いそうですね」
「……そうね…あの方が王子様のふりをしたら本当に素敵で…」
「………お嬢様、大人になっても”ごっこ”がお好きなんですね…。姫と王子ごっこですか?俺は騎士でしたけど」
「!」
デイビッドに言い当てられて、顔に血が集中する。
思わず両手で頬を包む。
「あははは…っ…――は~…、何だか肩の荷が降りた気がします」
「…心配までかけて…ごめんなさい」
「大切なお嬢様ですから。…幸せに、なってくださいよ」
「…うん、…ありがとう」
「もしも嫌な事があったら…今みたいに暴れるといい」
「嫌われちゃうわ…」
「…ずっと一緒に生きていく相手と喧嘩しないなんて、本当は異常なんですよ。本音が見えない相手は信用できないでしょう?お嬢様の本音をぶつけてやったらいいんです」
「……」
「もしそれでも聞かない様な人達だったら、この似非騎士も参上しますよ。」
「ふふ…えせ…!じゃあ私も…!貴方のピンチには駆けつけるわ。…その時は恩返しの機会を与えてね…」
私の言葉に、デイビッドは優しく微笑むだけだった。
――ふいに、胸に落ちてくる。
いま、初めて、あの頃のデイビッドに私は愛されていたのだと…胸の奥に届いた気がした。
「恩があるというなら…貴女が幸せに過ごすことが、一番の恩返しです」
デイビッドの暖かな声に、やっぱり堪えられない涙が何度も伝う。
まるで、仕舞っていた初恋に別れを告げているかのよう。
「…私も、貴方の幸せを、ずっと…願ってるわ…っ」
――そう告げた瞬間、暖かな腕に包まれた。
一瞬だけの力強い抱擁が解かれて、私たちの恋はお仕舞いを告げた。
「女神の祈りつきなら、百人力ですね。俺も幸せなりますよ」
◇◆◇◆
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