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死に戻り編
君の幸せを誓う③
しおりを挟む何せ友愛以外のスキンシップなどずっと無かった。
でも、しつこい程に焦がれてはいたのだ。
潤んだ瞳も上気した頬も、泣いているからだというのに。
力が抜けて少し乱れたセレスの夜着姿も手伝って、僕の下半身はすぐさま反応を見せる。
そもそも以前よりずっと若い肉体なのだからコントロールするのも難しいのだと思い至る。
それはセレスティアに即刻知られることになる。何せ上に座っているのだから。
「セレス…ちょっと…」
慌てて降ろそうとする僕は気づく、セレスティアがこちらをうっとりと見つめていることに。
(あ、そうか”今”は、夫婦生活も普通に…あった時期だから…)
以前の僕は、自身の性的なことに感づかれない様に細心の注意を払って過ごしてきた。
君に、手酷いことをした愚行を思い起こさせてしまったら、…僕が君にずっと欲情している男だと気づいたら、君がまた弱ってしまうかもしれないと、堪らぬ恐怖を抱いていた。
(今は、今だけは、そのまま表に出してしまっても、いいのだろうか。…君に触れたいと。…ずっと、僕の腕の中に帰って来て欲しかったのだと)
降ろそうと動かした腕を今度はセレスティアを抱きしめる動きに変えて、君を想いのまま抱きしめる。
夕食時のワインが回っていた、そうかもしれない。
巻き戻ってから数日で少し混乱していた、そうかもしれない。
…だが、全て都合のいい言い訳だ。
(…ちゃんと時が来たら、今度こそ彼との幸せを願うから。―――今だけは)
君の髪が、シーツに広がって、月明りに照らされたその華奢な腕が僕を離すまいという様に肩に回る。
きっと使用人達も起きている、だけれどそんなことはもう考える余裕もない。
最愛の人の溶けた表情に応える権利がある喜びに、全身が湧きたって。
――その日、これまでの人生で一番甘い夜へと堕ちていった。
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