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三章〜願いを叶えて〜

十二(※)

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 いつも涼しい顔をしている渉に、焦燥感がにじんでいる。夕日に染まる部屋で最後の仕事として、トランクスにさえ手をかけてきた。こうなったら腹をくくるしかないと覚悟を決めるが、もう自分では見られたものではない。彼に腰を上げるよう要求されながら、両手で顔をおおってしまう。

 そうして、すぐに下半身を床の冷たさが襲う。その感触と羞恥でとっさに股を閉じようとしたが、股に位置している彼の体のせいで閉じることは不可能。俺は「うぇぇぇ……」と蛙が踏みつぶされたようなうめき声をあげながら、指の隙間から様子を窺う。

 かつて見たことのない渉の優越感に満ちたまなざしが股間に注がれているのだから、声にならない叫びが喉を締め付ける。

「じっくりみんなよ!いつもトイレで見てただろうが!」
「勃ってるね……」
「いうなぁぁぁぁ!」
「どうして?ずっと想像してたんだよね。鳴海さんのちんこって、勃ったらどういう風なのかなって。いつも一人の時に考えてた」
「え……一人って……」
「想像して抜いてたってことだよ。当たり前でしょ、好きなんだから」
「お前、もうヤダ……」
「ふふふ、もう無理だろ。俺に惚れちまったんだからさ」

 視界が見えない感覚で、俺のモノが渉の手にそっと包まれる。

 今までの人生で誰かにペニス触られるとか体験したことがなかったので、その不思議な感覚に下半身に緊張が走る。彼もそれを察して、数度やんわり握ってすってきた。このまま扱かれるのだろうか。そう顔をさらに熱くしていた刹那。生温かいモノが、オスを咥えこむ。

 本当に一瞬の出来事だったため、思考は一瞬リセットされた。え、これって、あれですか、これもエロビで見たことのある。そうそう、フェラだ。

 結論が出た途端、首をもたげて今度こそ本気で渉を止めに入った。

「止めろ!風呂とか入ってないし!本当、止めろ!」
「はひひに、ほひたからはいほうふへほ」
「ちょ、咥えながら……喋るな……」

 口内から伝わってくる渉の温もりだけでも腰にくるのに、喋ることによって微弱な振動がそこから伝わり、奇妙な刺激を与えてくる。胸からせりあがる声をだすまいと、下唇を噛むことで耐える。

 人のモノを呑みこみながら、こちらの反応を楽しそうに観察しているから憎らしい。怒りを込めて睨みつけると、それをさとすように二三回扱いてくる。ジュプジュプと卑猥な音が耳を犯してくるが、今は声を抑えることに必死で耳を押さえることが出来ない。さらに先端を見せつけるように、ぴちゃぴちゃと舐める。

 我慢を強いられている状態だと分かっているはずだ。だが奴は実験とばかりに、チンコのあらゆる部分に舌を這わせて吸い、根元まで呑み込んでから一気に先端へ引き抜き、尿道口を舌で執拗に攻めてくる。

 先ほどまでの余裕なんて、欠片もない。ただ声を耐えることだけに集中しているので、渉の見上げてくる瞳が「気持ちいいでしょ?」と問いかけてくる。が、激しく首を横に振った。そのことがどれほど意欲に火をつけたかも知らず、なおも首をふり、渉は執拗に愛撫を続けてくる。

「わた……駄目……イく、から……」

 涎が垂れていることも気にならぬまま限界が近いことをつたえようと、右手だけ口元から離して、白い髪を握る。しかし渉はなおもピストンを止めず、むしろ催促するかのように動きを激しくした。彼の汗が垂れて温もりが太ももに触れ、息遣いが股間を愛せば、もう我慢など出来るはずなかった。

「わた……る……も、ぐっ……わ、渉!」

 最後に名を叫ぶと同時に、自分の左手人差し指に噛みつく。体が大きく震えて、痺れるような快感が足先から頭までを電流のように走りぬける。視界が白くなり、思考がフェイドアウトしそうになる。熱い熱を吐き出した後も渉がさらに吸引して絞り出そうとしてくるので、余韻はなかなか去っていかない。

 ようやく一回で出る分が出尽くし、俺は乱れた呼吸を正そうと口から左手を離した。くっきりとした歯型が残っている。

 いつの間にか流れていた涙でぼやける視界。そんな中彼に目をやれば、いまだに痺れるような感覚を残すオスを口から外すところだった。口の端から、白い液体が流れているなぁと、乱れた脳内で考えていたそのとき……ゴクリ。

「濃いね」

 そのひとことで記憶が再生され、先ほどまでの羞恥心とかが体中を駆け巡る。

「なに飲んでんだぁぁぁぁぁ!!」
「鳴海さんのだから」
「いやいやいや、その返答おかしいから!」
「おかしくないよ。飲みたかったし、ずっと」

 だから、そういうことを涼しい顔でいわないでくれ!
 火照る顔を静める手段なんてあるわけなく、俺は一人で百面相のようにうめき声をもらしながら快楽に流されてしまった自分に後悔した。

 一方渉は俺から一度体を離すと、着ていたシャツを脱いだ後。自身の腰のベルトを緩め始めた。ためらいなく下を脱ぎ捨て、ボクサーパンツ姿を晒してくる。つい彼の股間に目がいき、苦しそうにしているのをみて恥ずかしさに目を逸らした。
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