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LESSON:2
第17話
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喉の渇きを覚えて、梨乃は手を止めた。置き時計を見れば、いつの間にか午後四時になっていた。また練習に没頭していて、お昼ご飯を食べ損ねてしまったなと苦笑し立ちあがる。朝食を終えてからすぐにピアノに向かったため、七時間半ほどピアノと向き合っていた計算になる。その間に飲食は一切していないため、さすが立ちくらみを覚えた。おやつにも夕飯にも中途半端な時間帯だが、胃は何でもいいから入れてくれと主張する。
お昼用に作っておいたサンドイッチを冷蔵庫から取りだし、オレンジジュースをグラスに注ぐとリビングのソファに腰を下ろした。早朝ランニングの帰りに作ったそれは少し水分が抜け、ぱさついていたが味に問題は無い。小腹を落ち着かせるためのひと切れはあっという間になくなり、物足りない分はジュースを飲むことで誤魔化す。テーブルの上に放置してあったスマホが、チカチカと点滅していることに気付いた。
練習中はマナーモードにしてあったので、着信音が聞こえなかったのは当然だ。それを手にし、不在着信の件数を確認すると同じ人物から三件とあった。吉柳の音楽学科声楽コースに在籍する、親友の松本美由紀からだった。朝、昼、そしてつい五分前にも着信があった事が表示されている。気付いたからには無視できない性分の梨乃は、美由紀に電話をかける。
コール三回で美由紀は出た。
『あら、けっこう早いコールバックじゃない。休憩を入れたの?』
何度も空振りに終わっていた割には声が怒っていないのは、練習モードの梨乃は余計なことを頭からすっ飛ばす性格だと、長年の付き合いでよく判っているからだ。
『独り暮らしはどう? 慣れた?』
「それなりに生活リズムは掴んだよ。あとは実際に学校が始まってみないと、判らないけれどね」
『じゃあさ、明日遊びに行ってもいい? 私の試験用の調整と新居の見学も兼ねて』
特に用事はないので了承し、明日の午前十時に美由紀が遊びに来ることが決定した。昼食を梨乃の部屋で摂ることを約束し、二人は通話を終えた。
部屋着のままスマホだけを手にすると、気分転換に散歩に出ようと決め部屋を出る。と、かすかだがアルトサックスの音が廊下に響いており、今日は部屋で練習しているんだなと目を細めた。一度くらいスタジオに行き、恭一の演奏を聴いてみたいと思うが、働き始めた彼はこれから忙しくなるだろう。
いつでも連絡してよと言われたものの、異性に個人的にメッセージを送ったことがない彼女にとって、それはとてもハードルが高い作業に感じた。何も考えずに気軽に送ればいいと頭では判っているが、男慣れしていないために女友達とメッセージのやり取りをするのとは勝手が違う。
お昼用に作っておいたサンドイッチを冷蔵庫から取りだし、オレンジジュースをグラスに注ぐとリビングのソファに腰を下ろした。早朝ランニングの帰りに作ったそれは少し水分が抜け、ぱさついていたが味に問題は無い。小腹を落ち着かせるためのひと切れはあっという間になくなり、物足りない分はジュースを飲むことで誤魔化す。テーブルの上に放置してあったスマホが、チカチカと点滅していることに気付いた。
練習中はマナーモードにしてあったので、着信音が聞こえなかったのは当然だ。それを手にし、不在着信の件数を確認すると同じ人物から三件とあった。吉柳の音楽学科声楽コースに在籍する、親友の松本美由紀からだった。朝、昼、そしてつい五分前にも着信があった事が表示されている。気付いたからには無視できない性分の梨乃は、美由紀に電話をかける。
コール三回で美由紀は出た。
『あら、けっこう早いコールバックじゃない。休憩を入れたの?』
何度も空振りに終わっていた割には声が怒っていないのは、練習モードの梨乃は余計なことを頭からすっ飛ばす性格だと、長年の付き合いでよく判っているからだ。
『独り暮らしはどう? 慣れた?』
「それなりに生活リズムは掴んだよ。あとは実際に学校が始まってみないと、判らないけれどね」
『じゃあさ、明日遊びに行ってもいい? 私の試験用の調整と新居の見学も兼ねて』
特に用事はないので了承し、明日の午前十時に美由紀が遊びに来ることが決定した。昼食を梨乃の部屋で摂ることを約束し、二人は通話を終えた。
部屋着のままスマホだけを手にすると、気分転換に散歩に出ようと決め部屋を出る。と、かすかだがアルトサックスの音が廊下に響いており、今日は部屋で練習しているんだなと目を細めた。一度くらいスタジオに行き、恭一の演奏を聴いてみたいと思うが、働き始めた彼はこれから忙しくなるだろう。
いつでも連絡してよと言われたものの、異性に個人的にメッセージを送ったことがない彼女にとって、それはとてもハードルが高い作業に感じた。何も考えずに気軽に送ればいいと頭では判っているが、男慣れしていないために女友達とメッセージのやり取りをするのとは勝手が違う。
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