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第100話

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 俺はトレイン娘に駆け寄った。

「目覚めませんよ」

 後ろにはいつの間にか女神の気配を感じた。

「サミスフィール、トレイン娘の魂はアルナの手によって傷ついてしまいました。

 ですが、可能性はあります。

 あなたが試練を受ける覚悟があるのなら、助かる可能性はあります」

「受ける!」
「まだ何も言っていません」
「何でもいい!受けよう!」

「落ち着いてください。それに、試練を受けるには他の者の決断も必要です」
「俺だけじゃ、決められないのか」
「そうなります」

「今から呼びます。ヒメ」

 俺の近くにヒメが現れた。

「ヒメ、先ほど言った通りです。きゅうの魂を使ってトレイン娘の魂の傷を修復することが出来ます」

「きゅうを使って?」
「そうです、きゅうはスキルでありながら、魂を持つに至りました。きゅうのスキルを持つに至ったハヤトのスキル、そしてきゅうを生き物と信じて可愛がったヒメのおかげできゅうは魂を持つに至りました。きゅうはハヤトとヒメの子供のようなものなのです」

「きゅうは、どう思っているのかな?」

 ヒメがきゅうを抱く。

「きゅう♪」
「そう、きゅうも、トレイン娘を助けたいんだね」

 ヒメがきゅうを抱いた。

「いいよ、トレイン娘を助けよう」

 俺の胸がチクリと痛んだ。

「ヒメ、きゅう、すまない。それでも俺は、またトレイン娘に会いたいんだ」

「では、更なる試練の話をしましょう」

 今まで代償だと思っていた能力値の初期化は試練なんだ。
 女神と人間ではその感覚が違うのかもしれない。



 ◇



「分かった。受けよう」
「では、大部屋で待ちましょう」

 俺の体が輝いて、みんながいる部屋に戻った。




【ヒメ視点】

 ハヤトが消えると、女神が私に話しかけた。

「いいのですか?もしトレイン娘が復活したら、ハヤトはトレイン娘を選ぶかもしれません。それは分かっているのでしょう?きゅうを失い、ハヤトも失うかもしれません」

「悲しいけど、それでいいよ。ハヤト君に、幸せになって欲しい」

 女神が私を抱きしめた。

「あなたは、苦しみの試練を負うかもしれません。ですが、試練とは、祝福と呪いをセットで貰う事を意味します。貴方が受け取るのは決して呪いだけではありません。呪いに見えても、カードを裏返せば祝福がそこにはあるのです」

 私は、女神に抱かれて、心のとげが抜けたような気がした。

「さあ、皆のいる大部屋に戻りましょう」
「うん」

 私は大部屋に戻った。




【女神視点】

 きゅうの魂とトレイン娘の魂を融合させる。
 
 トレイン娘がベッドから起き上がった。

「おはよう、サミスフィール、今までの話は聞こえていましたね?」
「聞こえて、いました」

「最後に大事な事を聞きます。貴方は、どうしたいのですか?」
「私は、ハヤトさんの負担になりたくありません!」

「そうではありません。貴方の心に聞いています。貴方はどうしたいのですか?あなたの心はどう思っているのですか?」

 トレイン娘が俯く。
 涙を流しながら言った。

「あいだいですう!はやどさんにいい!あいだいですうう!」

 私はトレイン娘が愛おしくて抱きしめる。

「それでいいのです。貴方はもう少し、自分の思ったように生きていいのです。今のようにもっと、自分に正直になっていいのです」

「うええええええんん!!」
「いいのです。たくさん泣いていいのです」



 トレイン娘が泣き止むまで私はトレイン娘を抱きしめた。

 トレイン娘が泣き止むと、私は扉を作った。

「さあ、行きなさい。この扉をくぐれば、新しい人生が始まります」

 トレイン娘は、振り向いて私を見た。
 その後前を向いて扉にまっすぐ歩いて行った。



 何と美しいのでしょう。

 ヒメも、ハヤトも、そして魂が傷ついたトレイン娘ですら、魂が輝き始めている。

 私は愛の女神。

 私は人を憎むことが出来ない。

 皆を助けたいと思ってしまう。

 人に罰を与えられない。

 人に祝福を与えすぎると、人は楽をしてしまう。

 楽をしすぎると、魂が黒く輝き、汚れてしまう。

 何度も人の行いで人が滅びてきた。

 人の行いによって文明は衰退し、それによって魔物に滅ぼされてきた。

 でも、次もう少しだけ、試練を与えよう。
 滅びを防ぐために。

 私は次の人を呼び出す。

「クサナギカムイ、2周目の世界に転生しましょう。次はあなただけではありません。うまくいくかもしれません」

「やれる事を、やるだけだ」

「期待していますよ。貴方はゲームの主人公なのですから」

「一周目は救えなかった。だが、もう一度、やってみよう」

 さて、アオイもアサヒも全員話は終わりました。
 旅立ちの時です。








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