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創造神の愛し子
150:おじいちゃん大神官
しおりを挟む「ようこそお越しくださいました!」
野太い声が響き、
俺の目の前には筋肉ムキムキの
騎士っぽい人たちが総出で並んでいる。
俺はあっけにとられて立ち尽くしていた。
「あ、アキ様。
申し訳ありません。
我が家の侍従たちです」
クリムが慌てた様子で
俺に言う。
侍従……?
こんなに筋肉ムキムキで?
まるで壁のように
俺に立ちふさがるこの人たちが?
めちゃくちゃ威圧感あるし、
俺、クリムがいなかったら
ごめんなさい、して
帰ってるかも。
俺が呆然としていると
執事っぽい服を着た人が
俺の前に来て挨拶をした。
丁寧にお辞儀をしてくれたが
この人もめちゃくちゃ強そう。
「ようこそ当家にお越しくださいました。
残念ながら当主は王宮に出仕しており
ご挨拶ができないことを
ご容赦ください」
丁寧な言葉遣いで
言ってくれたが、
顔はにこりともしない。
俺は頷いたが、
内心はガクブルだ。
人は見た目で判断しては
ならないと思うのだが、
ものすごく厳つい顔で
威圧感も凄い。
前に来た時、
こんな人いなかったぞ?
「アキ様、こちらへ」
クリムは俺を促してくれたので
俺はへこへこ頭を下げて
威圧感のある侍従たちの
間を通り抜けた。
「申し訳ありません」
クリムが俺の様子を見て
頭を下げた。
クリムの家は代々
騎士団長を輩出している家門だ。
だからこそ、一族の人たちは
騎士になる者も多くいるが、
怪我などで若くても引退を
余儀なくされる者も多かったと言う。
オルガノ家は率先して
そういった騎士達を
侍従として雇っているらしい。
ただし、お茶会を開く時など
来客があるときは
彼らは裏方に配置して、
侍女やメイドたちが
客人の前に出るように
しているらしいのだが、
今回は急なこともあり、
そこまで準備できなかったらしい。
それに、俺と会いたいと言う
おじいちゃん大神官は、
かつては英雄とまで
言われたぐらい凄い人物だから、
騎士達の中では大人気だとか。
それで一目英雄と会いたいと
無理にタウンハウスに
押しかけてくる騎士もいるらしい。
クリムの父である騎士団長さんは
そんな騎士達を笑って
受け入れているらしくて、
現在は通常以上の強面の人間が
このタウンハウスに
集まっているそうだ。
なんかすごいな。
非力な俺には考えられない世界だ。
でも。
ちょっと思ったんだけど、
あの執事さんの腕っぷしなら
俺が3歳の時、遊んでくれたレノみたいに
今の俺をぶんぶん振り回したり、
肩車してくれたりできるかも?
いや、やって欲しいわけじゃないぞ。
ちょっと思っただけだ。
うん。
俺は前回来た時に案内された
サロンよりも、さらに奥に案内された。
普段はサロンまでしか
客は入れないようにしているらしい。
その奥には筋肉ムキムキの
騎士兼従者がウロウロしているからだ。
だがおじいちゃん大神官は
どうやらタウンハウスの
奥の部屋にいるらしい。
騎士達の鍛錬所が近く、
何かと便利だとクリムは言う。
「伯祖父は高齢ですし
専属の侍女を付けたいのですが
自分のことは自分でやると
なかなか受け入れてくれなくて」
クリムは廊下を歩きながら言う。
「ただ、あの部屋にいれば
伯祖父を尊敬している騎士達が
訓練しながらでも
何かと目を光らせていますし、
伯祖父も自分を慕う者を
無下に扱うこともできないようで
助かっています」
そうなんだ。
優しいおじいちゃんに見えたけど
頑固な一面もあるのかもな。
俺が案内されたのは
少し小さな部屋だった。
豪華な家具はないけれど、
神殿で見た時のような
木の素材が活かされた家具が
置いてある。
ただ、質素というよりは
シンプルで上品な
高級家具のように見えた。
部屋には大きなガラス戸があり
庭……というか、
訓練所に繋がっているようで
訓練している騎士達の姿が
良く見える。
それに大きな野太い声が
良く聞こえる。
なかなかに凄い環境だ。
俺が部屋に入ると
「紫の加護のお方!」
と、おじいちゃん大神官に
叫ばれた。
そんなに大声を出して
大丈夫かと心配するぐらい
大きな声で、しかも
座っていた椅子から
飛び上がるように立ち上がった。
……元気だな。
かなり高齢だと思うのに。
さすが60年経っても
元騎士団長の体力は凄いのか。
「おじい様、学友のアキルティア様です」
クリムは、おじいちゃん大神官のことを
おじい様と呼んでいるらしい。
「クリム!
紫の方の名を呼ぶなど
なんと恐れ多い!」
なんか色になってますよ、俺の名前。
俺はまぁまぁ、と宥めつつ
改めて自己紹介をする。
「アキルティア・アッシュフォードです。
クリムとは学園で一緒に
学んでます。
大事な友達です」
そう言うと、
クリムは恥ずかしそうな顔をする。
が、おじいちゃん大神官は
目を見開いた。
「なんと!
我が一族の者が
神の加護を持つ方と
本当に友人だったとは……」
それ、クリムに対して
かなり失礼な発言してますよね。
俺はクリムを見ると
クリムは苦笑している。
どうやら俺が公爵家の息子だから
何とかして会いたいと
オルガノ家に押しかけたものの
クリムと俺が友人たと
言うことに関しては
一向に信じてもらえなかったらしい。
うん。
やっぱり頑固者だな。
これは慎重に話をしよう。
「またお会いできて嬉しいです。
えっと、クリムのおじい様」
わざと親し気に俺が話しかけると
おじいちゃん大神官は
ほろり、と涙を落とした。
え?
情緒不安定過ぎない?
ほんと、大丈夫?!
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