【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

155:まずは保健体育

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 ごめんって。
俺は固まってしまったヴィンセントの
腕を引っ張った。

「えーっと、今すぐじゃなくてもいいよ。
そのうち、僕も学ぶと思うし」

「学ぶ?」

「うん、だって学校で
教えてくれる……ことはなかったけど
父様に聞けば……」

「ダメだ!」

急にヴィンセントが大きな声を
出したので俺はビックリする。

「いや、すまない。
大きな声を出して」

俺が驚いたのが分かったのだろう。
ヴィンセントがすぐに謝る。

だって俺、びっくりしただけで
勝手に涙が浮かぶからな。

俺が泣こうと思って
涙を浮かべているのではないと
ぜひヴィンセントには
理解して欲しいところだ。

ヴィンセントは俺を抱き上げ
膝に乗せた。

「イクスは知らなかったと思うが
そう言う知識は
学校では学ばないんだ」

だよな。そうだと思った。

「だが、きっと公爵殿も
イクスにはそういう家庭教師は
屋敷に呼ばない……はずだ」

なんで?

俺が首を傾げると、
ヴィンセントは複雑そうな顔をする。

「その役目は、公爵殿から
俺に依頼された」

「え?」

ってことはヴィンセントは
男同士でどうやって子どもが
作れるのか知ってるってことか?

俺がまじまじとヴィンセントを
見上げたからか、違うぞ、と
ヴィンセントは声を出した。

「俺も経験はないが、
ハーディマン侯爵家で
少し……だが、そういう
授業があり、知識だけは学んだんだ」

「そうなんだ」

俺は頷いたが、
ヴィンセントの顔色を窺うと、
まだ顔を赤らめている。

こんな表情で、
歯切れが悪いってことは
やっぱり人前で大っぴらに
聞くようなことではないってことだよな。

こういう倫理観は前世と同じようだ。
それは良かったと思う。

いや、だってさ。
あの時は別のことで頭が
いっぱいだったから気にしなかったけど、
あの秘密基地で見た性教育の
分厚い本って、かなり鮮明な描写の
挿絵が載ってたんだ。

それこそ、がっつり
性知識を学ぶような文化が
あったとした思えない。

今はそれが廃れたようでなによりだ。

「だから、その、
俺の知っていることでよければ、
教えることはできる」

「うん。じゃあ、お願い」

俺がそう言うと、
何故かヴィンセントは立ち上がる。

しかも俺を抱き上げて。

ちょっと慌て過ぎでは無いか?
大丈夫か?

そこに部屋をノックする音が聞こえた。

ヴィンセントは俺をソファーに座らせ
ドアへと向かう。

どうやら使用人が食事の用意を
持って来てくれたらしい。

ヴィンセントがドア前で
対応しているので
俺は使用人の顔もみなかったが
会話を聞いていると

どうやら俺とヴィンセントの
声が聞こえて来たので、
俺が目覚めたのでは?
と軽食を準備して来たらしい。

気配りがすごい。
さすが陛下直属の人たちだ。

ヴィンセントはこの部屋には
誰も入れる気が無いらしく、
扉の前でワゴンを受取り
俺が使用人を見ようと思う前に
扉を閉めた。

「イクス、何か食べれそうか?」

ワゴンを見るとお茶の準備と
サンドイッチやパンケーキ、
スープにサラダまである。

よりどりみどりだな。

まぁ俺は、クリームを乗せた
パンケーキパ一択だが。

俺の主張にヴィンセントは
笑って頷き、テーブルにお茶の
準備をしてくれた。

そういや腹も減って来た。

随分と寝てしまってたようだし、
保健体育の話は後回しだ。

俺は甘いクリームと
ハチミツがかかった
パンケーキをほおばった。

紅茶はミルクと砂糖たっぷりだ。

前世ではさほど
甘い物を好まなかったが
今の俺はめちゃくちゃ
甘い物が好きだ。

甘い物を食べたら
幸せな気分になるし
疲れが取れたような気もする。

甘い物が本当に
俺の身体や魔力に作用して
いるかどうかはわからない。

だが1つだけ確かなことは
前世妹が持っていた設定集の
イクスの人物紹介に

イクス・パットレイの好物
あまいもの・特にクリームや
ハチミツが大好き

と書かれていたことだ。

それは俺の趣味趣向に大いに
影響を与えていると思う。

まぁ、だからと言って
何も不都合はないのだが
俺の身体や魔力は……いや、
この世界は、どこまで
前世妹たちの腐妄想に
左右されているのかと
たまに心配になる。

とはいえ、妹も結婚したのだ。

子どもでも出来たら
腐妄想などしている場合では
なくなろうだろうし、
きっと今だけだな。

そう思い、俺はパンケーキを
飲み込んでヴィンセントを見る。

子ども。
子どもか。

前世では考えたことが無かったが
俺に子どもができるのか。

いや、まだそれは気が早いな。
できるかどうかは、
まだわからないし。

でも自分の家族が増えるというのは
嬉しいと思う。

しかも俺とヴィンセントの
子どもだと言うのなら
絶対に可愛がると思うんだ。

「イクス」

ヴィンセントがカップを置き、
俺を見る。

「さっきの話だが……」

さっきの話?
子どもができる話か?

「イクスは女性の身体が
何故子どもができるか知ってるか?」

俺は聞かれている意味が分からず
首を傾げた。

それは子宮があって、と言う意味だろうか。

俺が首を傾げたからか
ヴィンセントは俺の隣に
座っていたのに、さらに
距離を詰めて来た。

「女性の身体はな、
男と違って子どもを宿す場所があるんだ」

やけに真剣にヴィンセントは言う。
やはり子宮の話だったか。

ヴィンセントは真赤になりながら
俺に説明をしてくれるのだが、
大丈夫だ、そのあたりは理解している。

問題は男には子宮が無いってことだ。

「それでな。
男が子どもを授かるには
魔力を固めた特別な『珠』がいるんだ」

何でもその『珠』は体内に入ると
女性の子宮のような役割を担い、
体内で赤ちゃんができる場所になるらしい。

ただ、その『珠』は高額で
ヴィンセントも話は聞いたことがあるが
実物は見たことが無いと言う。

しかも『珠』を使っても
絶対に子どもが生まれるわけでもない。

人によっては、副作用もあるようなので
話を聞く限りではヴィンセントは
『珠』を使うことに
消極的のように見えた。

「陛下は『珠』を必要なだけ
用意すると言ってくれているが
俺は無理に子どもは必要ないと思う。

もしどうしてもイクスが欲しいというなら
俺が生んでも構わない」

「え? ヴィー兄様が?」

「あぁ、『珠』の副作用は辛いというし、
妊娠中も体が重くなり、
負担もかなりかかると聞く。

イクスにそのような真似をさせたくない」

手を握られてそう言われるが
俺はヴィンセントの妊娠した姿を
想像して、いや、無理無理、と思った。

俺も痛いとか苦しいとかは嫌だが
ヴィンセントが妊娠している姿など
想像もできない。

それにヴィンセントは騎士だし、
妊娠している場合ではないだろう。

この世界で産休や育休があるかも
よくわからないし。

どちらかと言えば
ハーディマン侯爵家に嫁ぐ俺が
嫁なのだから、
子どもを生むのなら俺だろう。

「でも僕は、ヴィー兄様の
赤ちゃんなら、僕が生むよ」

「え? え、え?」

「だって僕が生みたいし」

そう言うとヴィンセントが
真赤になる。

えっと……また言い方がまずかったか?

恋愛は言葉選びが難しい。

俺は素直に言っているだけなのだが
ヴィンセントにそのまま伝わっている
ような気がしないんだよな。

どう言えばいいんだ?

「だからね。
僕はどうやったらヴィー兄様の
赤ちゃんができるの?」

その『珠』とやらの
使い方を教えて欲しい。

高額なようなので
頻繁には使え無さそうだし、
『珠』は一度体内に入れたら
永久的に使えるのかとか、
耐久頻度も知りたい。

そもそも、その『珠』は
どうやって体内に入れるんだ?

手術とかだと怖いし嫌だよな。

俺の転移魔法とかで
自分の体の中に埋めるのは
無理なんだろうか。

俺が考えているとヴィンセントは
俺の手を握り、その手のひらに
唇を押し当てた。

え?
何故、今、俺にキスをする?

そういう雰囲気だったか?

「イクスがそう言ってくれるなんて嬉しい」

「う、うん」

「なら今夜、俺がゆっくり教えてやる」

それは嬉しいんだけど、
今夜?
今じゃなくて?

なんかそれ、アダルト方向の話になってない?

俺は首を傾げるしかなかったが
真剣なヴィンセントはの顔に
頷く以外の返事はできなかった。

……俺、大丈夫だろうか。



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