【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

154:突然蜜月

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 俺が目を覚ますと、
心地よい、花の香りがした。

随分と眠っていたような気がする。

俺、頑張ったもんな。

そう思ってベットから起き上がると
全く知らない部屋だった。

え?
王宮の部屋から引っ越ししたのか?

なんで?
しかも俺が寝てる間に。

俺はベットの天蓋から
抜けらして、部屋を見回した。

めちゃくちゃ豪華な部屋だった。

俺が寝ているベットは
王宮の部屋と同じぐらい、
もしかしたらそれ以上に大きい。

つまり、そんなベットが入るぐらい
大きな部屋なのだ。

天井にはおとぎ話に出てくる
神獣たちが神々しく描かれていて、
花の香りをたどって視線を向けると、
これもまた高価そうな大きな花瓶に
大量の華が飾られている。

大きな花瓶はきっと
俺一人では持ち上げることさえ
できないと思う。

きっとここは寝室なのだろう。

ベットサイドには、
水差しやグラスが準備されている。

ただ、その水差しもグラスも
物凄く細かな装飾がされていて
とてもじゃないが、
普段使いには思えない。

大きな窓からレースのカーテン越しに
差し込む日差しに、今は昼間だと
言うことだけはわかるが、
部屋に時計はなかった。

快適に眠るためだけの部屋だと思う。

思うのだが。

俺、こんなところで寝てて
大丈夫か?

ちょっとでも粗相をして……
寝相が悪くて天蓋の
細かなレース編みのレースを
引っ掻けてしまったとか、

水を飲もうとしてグラスを
落としてしまったとか。

もしそんなことをしでかしたら、
弁償金はどれほどなのかと
正直、肝が冷える。

いくら俺が公爵家の子息でも
金銭感覚は前世のままなのだ。

公爵家では確かに
高級な調度品などを使っていたし、
身の回りの使用していた物も
それなりに高級な品だったと思う。

でも使っている物は
基本的に両親から与えられたものを
使っているだけだし、
服だってそうだ。

自分から選んだり
欲しいと思ったものなど
一つもない。

まぁ、服に関しては
基本は制服だしな。

自分で何も買わないから
物価とかもわからないし
箱入息子と言われたら
そうなのだと思う。

けれど。
この部屋の調度品は
そんな世間知らずの俺でさえ
別格だとわかるものだった。

何故俺がこんな部屋に寝ている?

ヴィンセントはどうしたんだ?
寝てる俺をこんな場所に
放置して、罰ゲームか!?

俺はとにかく部屋を出ようと
目に入った部屋の扉に向かって歩いた。

が。

「は? え?」

俺は部屋にあった鏡に気が付き、
呆然とした。

大きな鏡には俺の姿が
映っていたのだが、
来ていた服が!

肌が丸見えになりそうな
スケスケの生地で作られた
女性向けのワンピースだったのだ。

いつの間に着替えさせられたのか。

いや、どうみてもこれ、
女性物だよな。

ほら、女性のナイトドレスとか
そういうやつ。

俺の着替え、なかったのか?

それとも俺を女子と勘違いした人がいる……?

いや、ないない。

俺は鏡を見て、速攻首を振る。

確かにこの顔は、前世妹の最推しだけあり
美人だとは思う。

幸薄美人顔だ。

父やヴィンセントは、可愛い、可愛いと
俺を評してくれるが、
客観的に見てこの顔は
可愛いよりも、幸薄美人なのだ。

顔だけ見たら、もしかしたら
庇護欲をそそられる女子に
見えるかもしれない。

だがどう見ての身体は男だ。

女性特有の丸みもない身体を見て
いくら俺がチビだからと言って
女子と間違うわけがない、と思う。

というか、そんなことより、
ヴィンセントはどこだ?

こんな場所に俺を一人置いて
どこ行ったんだよ。

俺は急に不安になったが、
それは前触れもなく開いたドアに
あっと言う間に掻き消された。

「イクス、起きたのか」

「ヴィー兄様」

俺は慌ててヴィンセントにしがみつく。

「ここ、どこ?
この服……ううん、そうじゃなくて、
あの後、どうなったの?

地震は?
王都の地下は?」

俺の女子間違い事件など
後回しで構わない。

俺は王都のことを思い出し
矢継ぎ早にヴィンセントに聞く。

ヴィンセントは、わかったから
落ち着け、と俺を抱き上げた。

そしてそのまま俺を
隣の部屋へと連れて行く。

隣の部屋はこれもまた豪華な
物凄く高価そうな照明や
ソファーにテーブル。

壁には美しい花が描かれた絵が飾ってあり、
重厚そうな暖炉まで備え付けられている。

ヴィンセントヴは俺をソファーに下ろし、
俺が着ている服に気が付いたのだろう。

すぐに立ち上がり、
俺の肩にショールのような物を
羽織らせてくれた。

「ここはな、たぶん、陛下の
隠れ家のような場所だと思う」

ヴィンセントはそう言ってぃ、
ここに来た経緯を説明した。

俺は丸一日眠っていたそうだが、
本来であれば、数日眠っていても
おかしくはないと医者には
言われていたらしい。

魔力が枯渇したと言うのは
そういうことなのだと
ヴィンセントは言う。

だが俺にはジュがいたからな。
最悪の事態にはならなかったのだろう。

「そういや、ジュは?」

「いつの間にかいなくなってたぞ」

そうか。
ジュも休息するために
精霊の樹か、カミサマのところに
戻ったのかもしれないな。

「ここで十分な休養を取るように、と
伝言を受けている。
もちろん、イクスの学校の対応や
公爵殿たちの説明も
陛下がしてくれているだろう。

ここの使用人たちは
陛下直属の者たちばかりなのだと思う。

信用できる者ばかりだろうし、
なにより、必要以上に俺たちに
接してくることは無い」

ただ、何かを言えば、
最高の状態で調えてくれるだろう、と
ヴィンセントは笑う。

きっとその
この部屋なのだろうと俺は思った。

「それで、僕とヴィー兄様は
なんでここに連れて来られたの?」

純粋に俺は尋ねた。

だって俺の【力】のことで俺を
軟禁しているのであれば、
ヴィンセントが一緒に居るのは
おかしいし、俺が空間を繋いだり、
転移魔法を使えることは
オーリー魔法師団長にはバレている。

つまり、この世界では俺を
監禁できる者はいないのだ。

だが俺が聞くと、
ヴィンセントは困ったような顔をする。

「ヴィー兄様?」

どうしたのかと顔を覗き込むと
ヴィンセントの顔がみるみる
耳まで赤くなった。

え?
なんで?

熱でもある?

俺がさらに顔を覗き込むと
ヴィンセントは片手で
俺の顔を軽く押さえ、
もう片方の手で自分の顔を隠した。

「……だそうだ」

「え? なんて?」

よく聞き取れない。

「陛下公認の
……蜜月期間だそうだ」

は!?
え!?

「有能な者ほど、
早く子どもを儲けるようにと……」

「こ、子ども!?」

俺は思わず立ち上がる。

そりゃ、保健体育の授業というか
性教育は必要だとは思ったけれど。

いきなりそれ?!

ちょっと展開が早すぎる。

だが、俺も結婚した身だ。

この世界の知識を得るには
必要なことかもしれない。

ヴィンセントも絶対に初心者だよな。
見て居ればわかる。

それならば俺が聞くことは一つだ。

ヴィンセントは小さな声で、
しかも早口で、
「イクスが望まないなら
俺は急がなくても……」などと
ブツブツ言っているが、
俺は無視した。

「ヴィー兄様」

「え、あ、なんだ?」

「子どもってどうやって作るの?」

まずはそこからだ。
男同士でどうやって子どもが生まれるのか。

そこを理解しなければ
先には進めそうにない。

だが。
聞き方が悪かったのだろう。

ヴィンセントは顔を真っ赤にして
俺を見たまま、固まってしまった。

スマン、聞き方を間違えた。

これは大人にしてはいけない質問、
ナンバーワンだよな。

一緒に勉強しよう、と言えば良かった。

……空気の読めない子どもで申し訳ない。








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