【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

142:子どもの大人【ヴィンセントSIDE】

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 イクスの話には純粋に驚いた。
この国の王都の地下が
空洞になっている可能性があると言うのだ。

もちろん俺はイクスの力を
まじかで何度も見ていたし、
疑うことはない。

今日は朝から俺も
王宮に出仕していたが、
イクスが王宮に来たと
アキレスから報告があり、
俺は慌ててイクスを迎えに行った。

そこに何やら重要な件が
絡んでいるらしいと言うので
父と陛下に連絡を取り、
会議にさせてもらうことにしたのだ。

こんな時に騎士団長である父と
イクスの伴侶という俺の立場は
なかなかに有効なカードだ。

陛下もイクスのことは
ことさら大事にしているようだったし
イクスが俺に懐いていることは
周知の事実だ。

俺は事の経緯をざっくりと聞き、
イクスも案内されているという
会議室に向かったのだが。

会議室の扉を開ける前に、
イクスの泣き声が聞こえた。

まさか、いじめられてるのか!?

俺が反応する前に、
公爵殿が動いた。

俺よりも早く扉を開けて
怒鳴り込んだのだ。

まさか公爵がこんなに
俊敏に動くとは思わず、
俺は驚いた。

いや、だがイクスが。
公爵殿には驚かされたが
早く、公爵殿がイクスを
慰める前に俺が行かなくては。

妙な対抗心を燃やして
俺は部屋に入る。

すると、ぐしゃぐしゃな顔で
涙を流すイクスが目に入った。

俺は焦る。

誰だ!
イクスを泣かしたやつは!

殺気を飛ばして
周囲を威嚇してから
イクスの元に駆け寄るが、
公爵殿が両手を広げて
イクスを抱きしめよとしている。

俺はモヤモヤした感情が
わきおこり、わざと
大きく両手を広げた。

イクスに視線を向け、
声に出さずに唇だけで
イクスに、おいで、と合図をする。

するとイクスは、
公爵殿の腕をすり抜けて
俺の胸に飛び込んできた。

瞬間、胸のもやもやは吹き飛び
俺はイクスを抱きしめる。

公爵殿の視線が痛いが
気にしない。

公爵殿はイクスの父親かもしれないが
イクスが甘えて抱きつきに行くのは
俺だけでいいからだ。

イクスに話を聞くと、
どうやらこの場には文官とはいえ
国の中枢を担う高位貴族の者が
多くいたのだろう。

イクスと殿下たちどちらかの
婚約の話で呼び出されたと
勘違いしたらしい。

王都が地面に沈む件で
彼らを集めたと言うのに、
それを殿下たちの婚約と
勘違いするとは……。

平和な悩みだと思う。
イクスを泣かせた罪は重いが
これから話し合う議題との
ギャップが激しい。

だが陛下もわかっていたのだろう。

文官たちを追い出して、
俺たちだけで話し合いの場を
設けてくれた。

それはそれでよかったのだが
今度はオーリー魔法師団長だ。

平民出だが魔力量が半端なく多く、
神殿でその才を見出され、
騎士団長にまでなった人だ。

個人的には凄い人だと思っているし、
選民意識が強い貴族たちの中で
自分のやりかたを貫き通している
凄い人だとおも思う。

もっとも、学生時代から
仲が良かったという陛下や
俺の父、公爵殿という
後ろ盾もあるから、
ということもあるだろうが。

そんなオーリー魔法師団長に
イクスが興味を示した。

魔力量が多いから
仕方がないかもしれないが
オーリー魔法師団長のことを
カッコイイなどと言い出したのだ。

確かにオーリー魔法師団長は
年齢より若く見えるし、
魔法で言えば王国一の実力を
持っているとも言えるだろう。

オーリー魔法師団長が若く見えるのは
魔力量が関係していると
俺は思っている。

イクスも見た目はずっと
幼いままだし、魔力が多いと
身体に何かしらの影響を
与えているのだろう。

いや、問題はそこではない。
問題はイクスがオーリー魔法師団長に
興味を持ったと言うことだ。

イクスはたぶんだが、
年上が好きなのだと思う。

イクスは甘えただし、
大人顔負けの発言もするが
基本的には、甘えさせてくれる者に
懐いていると思うのだ。

俺がせっかく公爵殿よりも
俺を選ぶぐらいには
イクスを甘やかして
懐かせたと言うのに、
ここにきてまた別の敵が現れるとは。

イクスを取られないように
細心の注意を払う必要がありそうだ。

しばらくはイクスのそばから
離れるわけにはいかないな。

と思って父を見たら、
父も俺を見て頷いてくれた。

父もイクスのことは気に入っているし、
幼い頃からの付き合いだ。

イクスの【力】のことが無くても
権力争いに巻き込まれるような事が
無いようにイクスを守ろうと
動いてくれるだろう。

俺と父が無言で会話をしていると
オーリー魔法師団長がいきなり
飛び出していく。

イクスの発言で思い至ったことがあるらしい。

あわただしい人だ。

だが、イクスの興味が
これ以上あの人に向かずに済んだ。

その後、俺たちは話の流れで
王宮に泊まることになったのだが。

案内されたのは、
王族の住居にほどちかい
他国の重要な国賓たちを招く時に
使用される特別室だった。

こんな場所を使っても良いのかと
内心焦ったが、イクスに
動揺しているところを
見られたくない一心で俺は表情を取り繕った。

しかも他国の重要な国賓というのは
王族であることが多い。

夫婦で外交に来ることも多く、
通された部屋は、夫婦用の部屋だった。

大きなダブルベットに
さすがの俺も驚いた。

だがまぁ、俺たちはすでに
結婚しているのだから
構わなと言えば構わない。

陛下が気を利かせたのかもしれないし
一緒に居ないとイクスが何を
しでかすかわからないということもある。

俺はお目付け役のようなものだろうから
しっかりとイクスを見張っておく必要があるだろう。

部屋に入り俺はまずはイクスの着替えを手伝った。

いつまでも制服でいるわけにはいかないだろう。
皺になるしな。

俺はイクスの制服を脱がせて
新しいシャツを手渡す。

イクスは何故かもたもたしつつ
俺からシャツを受取った。

なにやら動きが鈍い。
疲れたのだろうか。

着替えをしたら侍女を呼んで
お茶でも淹れて貰おうか。

それかそろそろ昼の時間になるから
昼食を頼んでもいいかもしれない。

俺はイクスを着替えさせた後、
侍従から受け取ったイクスの着替えを
クローゼットの中に入れていく。

もし足りないものがあれば
言えば準備してくれるだろう。

と、考えていると
ふとイクスの視線を感じた。

振り返るとイクスは視線を
合すことなく、慌てた様子で
手もとを見る。

ん?

どう言う意味だ?

それから何度もイクスは
俺の様子を伺うように
視線を向けてくるが
視線だけは重ならない。

そこで俺はイクスを
振り返るのではなく、
作業をしているふりをして
イクスの様子を確かめた。

するとイクスは何度も
俺を見て、ダブルベットを見て
何やら顔を赤くしている。

もしかして。
俺のことを意識しているのか?

恋愛対象として?

思わず俺は顔を熱くして
クローゼットの扉を閉めた。


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