122 / 214
溺愛と結婚と
122:戸惑い
しおりを挟む突然、ヴィンセントとの
結婚が、というか、
俺の恋心と言えばいいのか。
とにかく俺は急激に
自分とヴィンセントが
恋愛していることに気が付いた。
俺はまだどこかで
俺とヴィンセントの結婚ですら
パズルゲームの主人公イクスと
攻略対象者ヴィンセントの結婚、
って捉えていた部分があった。
自分の結婚だったのに、
自分の恋愛だったのに
どこか他人事だったのだ。
確かに俺は、
ヴィンセントのことが好きで
ずっと一緒に居たいって思ってた。
でもその想いは
幼い恋心で、どこか他人事で。
たとえば、初恋のように
相手の良いところばかりを見て
自分の都合の良いことばかりを
相手に押し付けているような、
そんな『恋』だった。
だってヴィンセントはいつだって
俺を甘やかして、
居心地の良い場所を作ってくれて。
俺は自分のやりたいこと
して欲しいことばかりを言って
それを叶えて貰っていた。
ヴィンセントの気持ちとか
想いとか、もっといえば
家同士の結びつきがどうとか、
全く考えなかった。
でも。
相手のことを、
ヴィンセントのことを考えて
ハーディマン侯爵家に嫁ぐと
自覚をした今、
そんなふわふわした
都合の良い『恋』は
あっという間に終わってしまった。
だって、そう、だって。
俺は今まで「好き」って伝えても、
それで自分の胸が苦しくなったり、
かき乱されるような、
そんな想いではなかった。
でも。
俺はヴィンセントとの結婚を
現実問題として理解した途端、
急に甘い恋愛ごっこが、
本物の感情として
俺に迫って来たのだ。
結婚、だ。
一生一緒にいれるから嬉しい、
そんな可愛いことを言ってる場合ではない。
結婚だぞ?
それこそ結婚なんて
欲情を伴うような
激しい愛情を持つ者同士がするものだ。
俺はもしかして、
そう言った感情をヴィンセントに
求められているのか?
いや、違う。
俺がヴィンセントに
求められたいと思ってる……かも?
俺?
俺は確かにヴィンセントのことが好きだ。
結婚してもいいというか、
一生一緒にいたいって思うし、
相手がヴィンセントだからこそ、
男同士で婚約するということも
自然に受け入れられた。
でも、え?
このままいくと俺、
初夜?
初夜とか、そういうことにならないか?
男同士で?
どうやって?
いや違う。
問題なのは……俺はそれが
嫌だと思ってないことだ。
俺、俺、ヴィンセントと
抱き合いたいと思うぐらい
好きって。
ヴィンセントのこと、
愛してるってことか?
「あわわわ」
俺は焦ってクッションに顔をうずめた。
自分の気持ちに気が付いてしまうと
俺は恥ずかしすぎて
ヴィンセントの顔をまともに
見れそうにない。
でも俺、今まで何度も
ヴィンセントとキスしてたよな。
平気で、とは言わないけれど、
よく受け入れたと思う。
いや、違う。
キスしたのが嫌だったんじゃない。
でも、なんか……
あの時のキスは恥ずかしかったが
なんとなく、親愛のキスとか
俺は弟枠だから、
弟が可愛いのキスの延長だとか、
そんな感じで思ってた。
ヴィンセントが甘えさせてくれるから
嬉しかったし、一緒に居るのが
楽しくて、嬉しくて。
でも急に新婚の話になって、
俺は気が付いた。
俺がヴィンセントの『妻』に
なってしまったことを。
どれはどうすればいい?
いや、何もしなくてもいいのか?
学校を卒業するまでは
今のままでいいって言ってたよな。
でも、でも。
俺はハーディマン侯爵家に
嫁ぐってことは、
これからはハーディマン侯爵家の
嫁ってことになるんだよな?
なんか、侯爵家の仕事とか
俺がしていかないとダメなんじゃないのか?
屋敷の仕事って何すりゃいいんだ?
領地を治めるって言われても
よくわからないし。
俺、魔法とか魔術とかを研究して
生きていきたかったんだけどな。
そういうの、できるのか?
無理そう?
無理そうだよな。
……離婚してもいいか?
「……様、イクス様」
急に名を呼ばれて
俺はベットから飛び起きた。
「リタ」
「おはようございます、イクス様。
今日はいかがされますか?」
そうだった。
俺は結局、学校を早退した翌日も
熱を出して寝込んでしまったのだ。
今日から学校に行くつもりだったが、
念のため、朝の調子を見てから
登校を決めようと母と昨夜
決めたのだ。
そして今朝は体調も良かったし
早めに目が覚めたので、
つい、ベットの上でウダウダと
ヴィンセントのことを考えてしまった。
1人で悩んでも仕方ないし、
こんな時は友人に相談に乗ってもらおう。
となると、学校には行くしかないよな。
「大丈夫。もう体調もいいし、
今日は登校するよ」
「かしこまりました」
リタは頭を下げ、
俺の着替えを準備すると
朝のお茶を淹れてくれた。
そして俺が着替えるからだろう。
朝食を準備して参ります、と
俺に告げて部屋から出ていく。
俺は一人で着替えて
ゆっくりと熱いお茶を飲んだ。
ほんと、優雅な朝だ。
前世では考えられないよな。
着替えが終わるころ、
リタが俺を呼びに来たので
食堂で簡単な朝食を食べ、
俺はすぐに学校に向かうことにした。
早くミゲルたちに会って
話を聞いてもらいたい。
俺が玄関まで行くと
すでに護衛のアキレスが
準備をしてくれていたので、
俺はすぐに馬車に乗った。
アキレスは俺の体調を
気にした様子だったが、
俺は大丈夫だと言って
深く椅子に腰かける。
まだ早い時間だが、
ミゲルならもう学校の
教室にいると思う。
ミゲルは毎朝早く来て
教室で本を読んでいるのだ。
そうだ、ミゲルに
『新婚』の意味も聞いてみよう。
俺が知っている意味と
絶対に違うはず。
いやまてよ。
そういやミゲルと
ヴァルターには俺とヴィンセントが
結婚したこと、言えてないんだよな。
言おうと思った昼休み前に
俺は早退してしまったし。
まずは結婚したことから
言わないとダメだよな。
なんかやることがいっぱいだ。
俺の人生プランがどんどん
変化していってる気がする……。
でも、でも。
俺は魔法を研究したいし、
魔術も使えるようになりたい。
そういうの、
ヴィンセントに言った方が良いよな。
なんか、だんだん気が重くなってきた。
だって俺、侯爵家の嫁とか
できそうにないし。
レオナルドがいなくなったら
離婚してもいいだろうか。
いや、王命なんだから無理か。
それに離婚したら
もうヴィンセントと一緒に
遊んだり、お茶飲んだり
することはできなくなるだろうし。
それだけは絶対に嫌だ。
なんかもう、いっぱいいっぱいだ。
頭を抱えたくなったが、
ゆっくりと馬車が止まる。
どうやら学校に着いたらしい。
俺はアキレスの手を借りて
馬車から下りると、
よし!と気を引き締めて
教室へと向かった。
287
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる