【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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高等部とイケメンハーレム

107:結婚は突然に・2【ヴィンセントSIDE】

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 その後、俺はまだ話し合いをする
両家の面々を置いて
イクスがいる公爵家に向かった。

結婚したことを告げるのは
自分からにして欲しいと
公爵殿に頼んだのだ。

その願いを快諾されて
俺が公爵家に行くと、
すぐに中庭に案内された。

イクスは庭でお茶を飲んでいると言う。

だが、俺が顔を出すと、
いつも笑顔で俺の名を呼ぶイクスが、
今日は顔色が悪い。

侍女の話では昼食も
残したらしい。

テーブルの上には
イクスの大好きなケーキが
おいてあったが、それも手つかずだ。

原因は昨日のことだろうな。

俺はイクスを見て真っ先に
声を掛ける。

「大丈夫か?」
大変だったな」

だがイクスは少し首を傾げた。

「大変なことは何も……
あの駄犬…、んと。

レオナルド殿下が僕に
一生かけた罰ゲームに参加しろって
言うから、絶対に嫌、って言っただけ」

イクスの言葉に
俺は思わず笑うのを堪えた。

それでも口元が疼いたので
慌てて手で隠したが。

駄犬!
確かに、駄犬だ。

そう言われてしまうと
レオナルド殿下がイクスを
困らせるだけの駄犬に見えてくる。

レオナルド殿下がやたらと
イクスにまとわりついて
振り回しているという噂は
騎士団にまで伝わってきていた。

イクスが心配で
ハーディマン家の手の者に
学校や城での様子を探らせると
たいていは、レオナルド殿下の
暴走しすぎる行動力と
妄想をイクスが諫めていること。

しかもその諫め方が
犬のしつけをするように
容赦なくガンガン責めていること。

そしてそれをレオナルド殿下が
嬉しそうに聞いていると言った
内容の報告ばかりあがってきた。

もしかしたらレオナルド殿下は
イクスに恋愛感情というよりは
対等に扱ってもらえる
相手ができて嬉しいのかもしれない。

そうであれば、
イクスと結婚するのではなく
別の方向に誘導することもできそうだ。

イクスも恐らくだが
レオナルド殿下のことを
良くても友情程度の感情しか
持っていないだろう。

なにせ日々、自分を
振り回している相手だ。

プロポーズを受けて
今後のことを心配しているのか、
それともレオナルド殿下を
傷付けてしまったと
心配でもしているのかと思ったが。

そのレオナルド殿下のことを
駄犬と言うぐらいなのだから
さほど落ち込んではいないのかもしれない。

イクスがレオナルド殿下の言葉を
プロポーズではなく、
罰ゲームと言っていたことも
宰相からの話で俺も知っている。

つまりイクスはあれを
本気のプロポーズとは思っていない筈だ。

だからこそ、ケーキを食べるように
促したのだが、イクスは
甘えたように東屋のテーブルに突っ伏する。

「もう、駄犬のせいで、食欲ない~」

イクスは俺以外のヤツの前では
どんなに甘えたふりをしても
こんな風に泣き言を言うことは無い。

俺はそれがわかってるから、
つい、イクスを甘やかしたくなる。

突っ伏したイクスの
柔らかい髪をなでてやると、
イクスは顔を上げた。

可愛い顔で唇を尖らしている。

だから俺はイクスを
甘やかすべく、ケーキを
切り分けて、フォークで刺した。

「ほら」

とフォークを刺し出すと
イクスは小さな口を開けて
もぐもぐとケーキを食べる。

雛に懐かれている感覚だが、
時折見える舌が、
妙に生々しい。

ある程度ケーキを食べさせ
俺は思い切ってイクスに声を掛けた。

「なぁ、イクス」

どう言うべきか、考えた。

すでにもう俺とイクスの婚姻は
陛下の元で成立している。

だが、こんななし崩しではなく
きちんと結婚して欲しいと
伝えたい。

そして、イクスに俺を
選んで欲しい。

以前もプロポーズをしたことが
あったが、あの時とは状況が違う。

いつか来たら良いと
希望を持って遠くから眺めていた
【イクスとの結婚】という
憧れたものではなく、

今置かれている状況は、
希望や未来ではなく
実際にイクスと結婚しているという事実だ。

それをどう伝えればいいのか。

王命ではなく、
俺がイクスを愛しているから
結婚したのだと
きちんと伝えたい。

そう思っていたのに、
緊張して出て来た言葉は
最悪だった。

「今すぐ俺と、結婚するか?」

何を言っている、俺。

もっと気の利いた言葉があるだろう、

「ん?」

ほらイクスも、
意味が分からない、という顔をしてるじゃないか。

焦った俺は、また口から
いらない言葉が出る。

「陛下が特例で、
俺との結婚を許可してくれた」

そうじゃない。

愛してるって言うんだ。

そう思うのに、
口から出るのは
陛下の言葉と
公爵殿たちと決めた事務的な
内容ばかりだ。

こんなことを言いたいわけではない。

俺はイクスが好きだ。
だから俺を見て欲しいし、
レオナルド殿下よりも
俺を選んで欲しい。

誰にも取られたくない。
俺が、今すぐイクスを娶りたいのだ。

安心したい。
イクスが俺のものだと言う確約が欲しい。

だが、俺が一方的に
望んで結婚するのではだめだ。

イクスが望んで
俺と結婚して欲しいのだ。

そう思うのに、
焦っているせいで
なかなか想いを伝えることができない。

そんな俺を、
イクスはじっと見つめた。

澄んだ美しい瞳で、
まるで俺の心の中を見透かすように

そしてふにゃっと笑ったのだ。

「ヴィー兄様」

可愛い声が俺を呼ぶ。

「なんだ?」

イクスが可愛くて仕方が無い。
そんな気持ちを何とか抑えて
返事をすると、イクスが
やわらかな声で言う。

「僕と結婚して」

すべてを理解しているかのように、
俺の気持ちも、焦りも
全部わかっているかのように
イクスは笑った。

俺は一瞬、驚き、
そして、あぁ、好きだ、って思った。

聡いイクスのことだから、
全部お見通しなのかもしれない。

ほんとにイクスには敵わない。

「もちろんだ。
愛してるよ、イクス」

俺は腰を浮かして
イクスの頬にキスをする。

すると今までの大人びた
表情のイクスから一転、
あっという間に幼い、
可愛い顔が戻った。

顔を真っ赤にして、
恥ずかしそうに俺の胸に
顔を押し付けてくる。

……可愛い。

俺はイクスを抱きしめる。

今は書類だけの伴侶だが、
イクスが成人したときは
盛大に結婚式をしよう。

それから新居も考えねばならない。

父も引退までまだ何年もあるだろうし
イクスと二人っきりで
過ごす時間も欲しい。

これは父とこれから
交渉するしかないな。

俺はイクスを腕に抱きながら
今後をどうするかを考える。

公爵殿とはイクスの生活は
今まで通りだと約束をしたが、

出来るだけ多くの時間を
イクスと共有したい。

俺たちはもう結婚して
伴侶になったのだ。

……伴侶。

その言葉に俺は口元が
緩んで来るのを感じて
慌てて気を引き締めた。

「イクス」

「うん?」

「ずっと一緒だ」

俺がそう言うと
イクスは嬉しそうに
俺の背に手を回したかと思うと、
ぎゅーっと俺を抱きしめる。

こんな些細なことが嬉しくて仕方が無い。

「卒業したら結婚式だ。
ゆっくり準備しよう」

そうだ。
焦らなくてもいい。

イクスはこうやって
俺の腕の中にいるのだから。

俺はイクスの髪に口付て、
すり寄るイクスの体を
改めて抱きしめた。





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