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高等部とイケメンハーレム
90:添い寝と告白
しおりを挟む俺はヴィンセントのいる客間で
冷たい果実水を飲ませてもらっている。
客間にはベットだけでなく
デスクやソファーもあり、
俺とヴィンセントはソファーに
向かい合わせに座っていた。
すぐに寝るのかと思っていたけれど、
ヴィンセントは俺に話があるのか
ソファーに座るように言ったのだ。
いや、俺が甘えたくなった理由を
早く話せ、と言うことなのだろうか。
俺は両手で果実水のカップを持ち、
ちらちらヴィンセントの様子を伺う。
なんだろうか。
空気がピリピリしている気がする。
俺が超わがままで、ヴィンセントと
一緒に寝ると言ったから
怒ってるのだろうか。
でも今までもこういうことは
多々あったし、こんなことぐらいで
ヴィンセントは怒らないと思う。
俺は居心地が悪い空気を変えたくて
思わず立ち上がった。
「イクス?」
「クルトが、
僕がクルトが好きだからって」
言うつもりはなかったのに、
空気を変えたいと思って
口から飛び出したのは
俺が悩んでいた言葉だった。
ヴィンセントの目が大きく開かれる。
「イクスがクルトを好き?」
いや、違った。
逆だ、逆。
焦り過ぎて、勝手に口から
言葉が飛び出しただけでなく、
主語までも間違っている。
「そうじゃなくて、
クルトが僕のことを好きって言って」
ヴィンセントこそ立ち上がる勢いで
俺を見るので、俺は慌てて
手を振った。
俺が否定したからか、
ヴィンセントは、そうか、と
半分上がった腰を下ろした。
「あのね。
今日、クルトと踊った時にね。
クルトに言われたんだ」
俺は正直に話す。
「ずっと、僕のこと好きだったって」
ヴィンセントにしてみたら、
それで? って感じだと思う。
俺の罪悪感とか、そういうのに
ヴィンセントは関係ないし。
俺の問題だから、
ヴィンセントにこんなこと言っても
意味がないってのはわかってる。
「ヴィー兄様、隣に座ってもいい?」
慰めてくれとか、
そう言うのじゃないけれど。
俺はヴィンセントの返事を聞く前に
急いで場所を移動した。
拒否されると思ってないが、
本当に拒否されたら
立ち直れる自信がない。
ここだけは。
ヴィンセントのそばだけは
俺の全然地帯で、
無条件で甘えられる場所だと
俺は思っているから。
俺が隣に座ると、
ヴィンセントのはテーブルにあった
俺の果実水を手に取った。
「イクスは、なんと返事をしたんだ?」
ヴィンセントに果実水を足されて持たされて
俺はそれを一口飲む。
「返事は、しなかった。
クルトは返事はいらないって
言ってくれたから」
「そうか」
優しく髪を撫でられる。
俺はこうしてヴィンセントに
頭を撫でられるのが好きだ。
全部言わなくても、
わかってくれるような気がするし、
すべてを許される気になる。
俺はグラスをテーブルに置いて、
ヴィンセントを見つめた。
「ヴィー兄様、好き」
いつもの俺の言葉だ。
撫でられると、口癖のように
つい、口から洩れてしまう。
そしてヴィンセントは
優しく俺に言うのだ。
『俺も』って。
俺はその言葉を待った。
なのに、いつまでたっても
ヴィンセントからその言葉は聞こえてこない。
「ヴィー兄様?」
不安になって俺は隣に座る
ヴィンセントを見上げた。
ヴィンセントは俺を見つめていたが、
その表情はいつもの優しい顔ではなく
真剣な表情で。
俺は思わず息を飲んだ。
急に、息苦しくなる。
怖いぐらいのヴィンセントの表情に
俺はまずいことを言ってしまったのかと
自分の言葉を思い出そうとした。
だが、その前にヴィンセントの口が動く。
「イクス、もう、お前の【兄】を
やめてもいいか?」
え?
今度こそ、心臓が止まるかと思った。
俺、甘え過ぎた?
クルトのことで、呆れられた?
それとも一緒に寝るって
俺が子どもみたいにわがままを言ったから?
もしかして、ヴィンセントに嫌われた?
そんなの、俺、生きていけない……。
「ちょ、イクス!?
何故、泣く?
わかった、俺は【兄】がいいんだな?
大丈夫だ、まだまだ【兄】でいるから。
泣くな」
ヴィンセントが早口で言って
俺を胸に抱き込んでくれたが、
俺は溢れた涙を止めることはできない。
だって、無理やり俺のそばに居て貰って
無理やり、兄になってもらっても
俺は嬉しくない。
「ご、ごめん……なさい。
ヴィー兄様は、僕のこと、
負担だったった……のに」
「違う、そうじゃない」
ヴィンセントが俺の背に回した手に
力を込めた。
「俺は、イクスの兄ではなくて
生涯を共にする相手になりたいんだ」
泣いているから、
頭がぼーっとして、
言われた意味がよくわからない。
「兄弟だったら一生、一緒……だよ?」
そう。
ヴィンセントが誰かと結婚しても
俺が誰かと婚約しても。
兄弟だったら、ずっと一緒だろ?
ヴィンセントがいつまでも
俺のヴィー兄様だったら、俺は嬉しい。
俺がそのようなことを言うと、
ヴィンセントは少し悲しそうな瞳をして
やんわりと笑った。
「そうだな。
だから今は、兄でも良い。
だがいつか、俺を恋愛対象として
見てくれれるか?」
は?
言葉も出ずに俺はヴィンセントの
胸の中でその端正な顔を見上げる。
「ずっと好きだった。
イクスが俺を兄だと思っていることは
わかっている。
だがイクスを守るのは
これからも俺でありたい。
誰よりも愛すると誓うから
俺と婚約してくれないか?」
意味が分からないのだが。
俺が声もなく見つめているからだろう。
ヴィンセントは苦笑して
また、俺の髪を大きな指で梳く。
「すぐに結婚というわけではない。
少なくともイクスが学校を卒業するまでは
今までと何も変わらない。
だけど、一度、俺との未来を
考えてくれないか?
それに……その、すまない。
婚約はダメという言葉だけは、
聞き入れるわけにはいかない」
すまなそうに言いわれても
俺は何をどうリアクションすれば
いいのかわからなかった。
ヴィンセントは今まで隠してて
申し訳なかったと、
そう前置きをして、ずっともっと前に
俺とヴィンセントが婚約をしていたと
そう言った。
最初は王家との婚姻を避けるために
俺の父が下した判断だった。
だが、ヴィンセントも、
俺のことを最初は弟として
可愛いと思っていたが、
いつの間にか本気で愛していたのだと
俺を抱きしめて何度も言う。
待って。
待ってくれ。
ぶっちゃけ、キャパオーバーだ。
目が回ってきて、
俺はヴィンセントにしがみついた。
「イクス?」
「ヴィー兄様、もう寝よう?」
告白されて抱きしめられてるのに、
この言葉は良くなかった。
後から考えるとそう思う。
だがもう俺の脳は考えることを
放棄してしまっていて
とにかく寝たい、としか
考えていなかった。
ヴィンセントは諦めたような顔をして
そうだな、と頷いた。
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