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子ども時代を愉しんで
24:恋の話は大好きですか?
しおりを挟む一通り食事をして、
その後、焼き菓子とお茶を
リタに出してもらってからは
おしゃべりの時間だ。
最初はテストのことだったが
だんだんと話がズレてくる。
俺たちは社交界にはまだ出ていないが、
ミゲルは兄から話を聞いているらしく、
クラスメイトの兄や姉が
どこに嫁いだとか、
何をしているとか、
そう言う話も聞かせてくれた。
ヴァルターは辺境にいたので
そう言った話題は俺同様に
全くと言っていいほど
知らない様子だった。
だが、クラスメイトの
誰と誰が婚約している、
と言うような話には
ひたすら驚いている。
「もう婚約してんのか?
早くないか?」
「王都では珍しくないですよ。
もちろん、家同士の利益あっての
婚約だとは思いますが」
ミゲルの言葉にヴァルターは
嫌そうな顔をする。
「俺は結婚するなら
そういうのは嫌だけどな」
わかる!
俺もなんか政略結婚って
嫌ではないが、ピンとこないんだ。
「そうですね。
僕もできれば好きな人と、とは思います」
と言ったミゲルの頬が
少し赤い気がする。
思わず俺とヴァルターは
視線を合わせた。
「なんだ? 好きな相手いるのか?」
俺が遠慮した言葉を
ヴァルターは直球で言う。
「そ、そ、そんなの」
焦るミゲルが、なんか可愛い。
俺も思わず身を乗り出してしまった。
俺たち二人が聞く体勢になったからか
ミゲルは小さな声で、実は、と言った。
「父方の親戚なのですが、
素敵な方がいて……」
年上!
年上なのか。
どんな女性なんだ?
俺はさらに身を乗り出す。
「魔法がとても上手くて」
うんうん、それで?
「剣も腕も良くて、
今は魔法科の専攻にいて
将来は……。
正式な職業ではないけど
魔法剣士になるだろうって
皆から言われているんです」
へー。
凄い!
と思ったけど。
魔法剣士??
「あ、俺、知ってる、
あの人だろ。
高等部の魔法科を
首席で卒業した
歴代最強とか言われてる……」
歴代最強の魔法剣士!?
俺は目を見開いた。
それってヴィンセントより
強いってことか。
いや、違う。
驚くところは、
今はそこではない。
注目すべきことは
この世界は男女関係なく
恋愛をするってことだ。
つまりミゲルが恋に落ちたのは
年上の男性ということか。
ほんとに、そういう世界なんだ。
俺は今更だが、
ミゲルの頬を染める顔を見て
同性結婚がある世界だということを
言葉での理解ではなく、
実感として認識した。
いやだからと言って、
俺がヴィンセントに惚れるとか
そういうのはあり得ないがな。
……きっと、たぶん。
「年上ですし、
僕のことは弟としか
見てくれていないことは
わかってるんです」
ミゲルはそう言ってから
俺を見た。
「だからじつは、イクスが羨ましくて」
「え? 僕?」
「だって、ヴィンセントさんに
弟みたいだけれど、
恋人みたいにも扱って貰えて。
お二人は僕の理想なんです」
いやいや、俺が弟枠なのは
認めるが、恋人ではないし。
否定しようとしたが
ヴァルターが俺の言葉の
前にからかう様に言葉を紡ぐ。
「そうそう。
ヴィンセント様はすっげー
カッコイイし、
何をやっても完璧なのに、
イクスを前にしたら
過保護だし、嫉妬するし、
なんか人間味があるって言うか、
そういうのもいいんだよな」
嫉妬?
ヴィンセントが嫉妬?
何言ってんだ。
そんなの、見たこと無いぞ?
俺は開いた口が塞がらない。
「イクスはどうやって
ヴィンセントさんに告白したの?
それともヴィンセントさんから?」
「こ、こ、告白?」
そんなのしてないし。
「なに言ってんだよ。
イクスはいつも
ヴィンセント様のこと、
カッコイイ、好き、って
毎回言ってるじゃん」
確かに言ってる!
言ってるが、それは告白ではない。
ただ口が勝手に言ってるだけだ。
「そうか。
ちゃんとそうやって
声に出して伝えてるから
イクスは愛されてるんだね。
……僕も言えたらいいのに」
違う、違う。
全てが違うとは言えないが、
やっぱり違うと思う。
「まぁ、気持ちを伝えるのは
大事かもしれないな」
なんてヴァルターが言うと、
ミゲルはそんなヴァルターを見た。
「そういうヴァルターは
好きな人はいないんですか?」
「俺!?
俺は……今は強くなることが
目標だからな。
そういうのは、後でもいいや」
俺も!
俺もそんな感じなんです。
ほんとに。
「でもイクスは大変だな、
ほら、王子のこともあるし」
ヴァルターは続けて言いながら
俺を見た。
「僕? 王子?」
何?と聞くと、
ヴァルターは、気づいてないのか?
と呆れた声を出す。
「何が?」
「クルト殿下のことですよ。
どう見てもイクスのこと
意識してるじゃないですか」
ミゲルがヴァルターの代わりに
説明してくれるが、
俺は、はぁ?だ。
「ないない、無いよー。
クルトとは幼馴染で仲良かったけど、
ただそれだけだし」
俺が言うと二人は訝し気な顔をする。
「もしさ、クルトが僕を
気にしているように
見えるのなら、
僕が階段から落ちたことを
まだ気にしてるんだと思う」
「あぁ、あの癇癪もちの
伯爵家の三男に突き落とされたってやつか」
そうなんだ。
俺を突き落としたのは
伯爵家の三男だったんだ。
自分が嫌だったからって、
他人を階段から突き落とすなんて
まぁ、甘やかされて育ったんだとは思ったが。
「その話を聞いたときは
僕も驚きました。
じつは僕、
その茶会に呼ばれていたのですが
体調を崩して欠席したんです」
そうだったのか。
まぁ、ミゲルは伯爵家の筆頭である
クライス家の子息なんだから
招待されてて当たり前だよな。
「僕はこうして元気だし、
クルトにはもう気にしなくて
いいって伝えてるんだけど。
クルトは優しいから
どうしても気にしてしまうみたいで。
でも、おかげで僕は
クルトと仲良くなりたい人たちから
嫉妬されることがないように
王家からも配慮してもらえてるし
随分助かってるんだ」
俺が王子妃候補と呼ばれていることも
ミゲルの話で知ったが、
そのおかげで俺に婚約の申し込みが
来ていないだろうことも
教えて貰った。
どう考えても俺が
カミルやクルトと結婚する未来なんて
来るわけがないが、
俺の婚約話を王家の名で
二人が阻止してくれているのなら
有難いと思う。
純粋に友情をありがたく思っているし、
なんなら、拝んでも良いぐらいだ。
「では、クルト殿下は……」
ミゲルの言葉に俺は
「ただの幼馴染、
クルトは優しいから
友情に甘えさせてもらってるんだ」
と元気いっぱいに応えた。
俺の言葉を聞いた二人は
なんとなく顔を見合わせたけれど、
否定の言葉は言わず。
ただ、困ったような顔をした。
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