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章間<…if>
12:闇の魔素に囚われる…?
しおりを挟むすでに私はふらふらだった。
湯に浸かったままの状態で、
カーティスに体をいたぶられたのだ。
のぼせたし、恥ずかしいし、
とにかく、身体が火照っている。
カーティスが私の身体を抱き上げて
ソファーの上におろしてくれた。
身体にはタオルが巻かれていたけれど
寝間着の準備はない。
カーティスのあの様子だと
まだ何かおかしな…
新婚アイテムとかを出してきそうだ。
新婚アイテム…
なんてオソロシイものなのだろう。
我を忘れて快感に流されてしまった。
……私が快感や快楽に流される祝福を
持っていることにも原因はあるとは思うけど。
元の世界では、成人を迎えていたとはいえ
はっきり言って、誰かと恋愛関係に
なったことなどないし、
もちろん、誰かと肌を重ねたこともない。
ただ、元の世界では
スマホゲームをしているときに
成人向けの広告を数多くみていた。
広告を見ることで、
課金をしなくてもポイントがたまり、
ゲームを効率良く進めることができたからだ。
そんなわけで、
成人向けの情報もある程度の
知識は持っている…つもりだ。
だから、新婚アイテムと言われ
最初は何だろうと思ったけれど、
もしかして元の世界で言うところの
アダルトグッズではないかと
身体に丸い何かが入ってきた時に気が付いた。
もちろん、拒絶はできなかったけど。
アダルトグッズにどんな種類があるのかまで
もちろんわからなかったし、
この世界でのそういうものに対する
知識もまったくない。
まったくわからないからこその恐怖と、
あの快感に脳が支配される感覚への恐怖と。
湯の中で抱かれたとき、
すべてを忘れて、ただ快感を追ってしまった。
カーティスの太い欲棒で
貫かれたときの衝撃と同時に
ものすごい快感が脳を痺れさせた。
体内の丸い何かが、
身体の奥で、ゴロゴロと動き、
カーティスの欲望に押されて
潰れ、弾ける感覚は
今、思い出しても震える。
あの時、
カーティスに抱かれることしか
考えることができなかった。
抱かれた後も、
いつもなら『器』に溜まった<愛>を
自然に確認していたのに、
それすらもできなかった。
ただ、カーティスだけを
感じていたからだ。
そんな自分に驚いてしまう。
この世界に来た目的は
この体に…いや、魂と言う名の『器』に
<愛>を溜めて、世界を救うことなのに。
だからこそ、こうして愛され、
抱かれているのに。
そんな使命など関係ないと
ただ愛されたいと心が叫んでいた。
カーティスに愛されるのが、
求められるのが嬉しいと、
ずっと愛を求めていた悠子の魂が
叫んでいた。
激しく求められるのは
初めてのことではない。
それこそ、カーティス以外の…
ヴァレリアンやスタンリーにも
何度も求められてきた。
けれども、我を忘れ、
抱かれることだけに喜びを
感じたのは初めてだった。
初めて使用した新婚アイテムのせいだろうか。
そう思いはしたが、
未知の感覚に脅えてしまう。
全てを捨てて、
カーティスにただ愛されたいと
そう思ってしまったからだ。
私はこの世界を救うために
ユウとしてこの世界に来たと言うのに、
この世界のカーティスに愛されて
世界を崩壊させるなど、
あってはならないことだ。
私は自戒する。
快楽におぼれてはならないと。
そんな不安を胸を満たした状態で
ユウはカーティスから渡された
冷たい水を飲んだ。
ほっとする。
「私のことが、怖い?」
カーティスが隣に座り、
優しい口調で聞く。
髪を撫で、笑顔を浮かべ。
でも、金色の瞳の奥で
拒絶を怖がる子どもが隠れているのを
私は知っている。
いつもカーティスが優しいのは
誰かに拒絶されたくないから。
でも、わざと意地悪をしてくるのも
愛されていると確認したいから。
だから、返事も決まっている。
「怖くないよ」
ウソだと金色の目が言う。
だから、もっと言葉を繋ぐ。
「カーティスは怖くない」
「じゃあ、不安?
そんな顔をしている」
「不安…でもない。
うん、不安かな?
あと、怖い」
「私が怖いのではなくて?」
「カーティスは好き」
言った瞬間、笑ってしまった。
金色の瞳が嬉しそうに輝いたからだ。
「でも、キモチイイになったら
自分が自分じゃなくなるみたいに
ふわふわして、何も考えられなくなる。
意識が保てなくて、
すべてを捨てて身を任せたくなる。
……だから、怖いし、不安」
世界を救うとか、
『聖樹』がどうとか。
そんなのすべてどうでも良くなってしまう。
だからカーティスは怖くないけど、
行為は怖いのだと、
思っていることをそのまま告げた。
「ははっ」
カーティスはそれを聞くなり
ユウを抱き寄せる。
「もう、ユウは私を喜ばせる天才だ」
「喜ばせてない」
もう抱かれるのは嫌だと言ったのに、
聞いていたのだろうか。
わざと不機嫌な顔をしてカーティスを見たら
瞬間、口づけられた。
軽く何度も重なって、
唇を舐められて。
そして、カーティスの癖なのだろう。
軽く唇に咬みついてくる。
刺激に口を開けると
すぐに舌が潜り込んでくる。
深く、深く舌が喉の奥へと
入り込み、唾液が流れて来た。
カーティスは舌を吸い上げ
角度を変えては、唾液を飲ませてくる。
息苦しくなった頃、
ようやくカーティスの腕から解放された。
ぐったりしたが、カーティスは
腕から離したものの、
そのまま舌を頬に、首筋に、鎖骨へと移動させる。
鎖骨をちゅーっと吸われ、
先ほどの熱い熱を思い出した。
快感に溺れるのは怖いと伝えたばかりなのに、
何故、また始めるのか。
抗議の意味も込めて
カーティスの腕を掴むと、
カーティスは、ふふっと笑う。
「ユウ、私はね。
世界が滅んでも、ユウを抱きたい」
王子としてはこんな発言、
ダメなんだろうけど、と前置きをして
カーティスは笑った。
「私は世界よりも、ユウが大事だ。
国の民も、仲間も、家族も。
もちろん大切だが、もしそれらとユウの
どちらかしか選べないとしたら、
私は死ぬ瞬間まで。
世界が崩壊する瞬間まで
ユウと共にあることを願うだろう」
じわり、と『器』が反応した。
カーティスの愛に、歓喜している。
「ユウが世界を救うのが嫌になったら、
私の腕の中で快楽に溺れるのなら
それでもいい。
私は…ユウを愛してるし、
ユウをこうして…独り占めしたいのだから」
独り占めできるのなら
世界を滅ぼしても構わない。
そう言い切るカーティスに
嬉しさを隠せない。
ずっと愛されたかったのだから、
深く愛されて嫌な思いをするはずがない。
けれど。
ふと、カーティスの瞳に、
陰りがあるのが見えた。
いつも強い金色の瞳に、
暗い影が見えたのだ。
まるで<闇>の魔素のような…
濁った嫌な陰りだ。
<闇>の魔素は人間の負の感情から生まれる。
もしカーティスが強い負の感情を持っていて
<闇>の魔素が生まれようとしているのなら
それを阻止しなければ。
カーティスの陰りに不安が沸き起こり、
私は咄嗟にカーティスの首を掻き抱いた。
驚くカーティスに唇を重ね、
耳もとで「大好き」を繰り返す。
カーティスに<闇>の魔素など似合わない。
「カーティス、私も、好き。
もちろん、ヴァレリアンもスタンリーも
大好きだし、エルヴィンとケインも大好き。
でも、一番最初に大好きになったのは
カーティスだよ。
言葉がわからない私とずっと一緒にいてくれた。
いつも優しく髪を撫でてくれた。
この体に戸惑っていることに気づいてくれて
服を着たり、湯に浸かったり。
できて当たり前のことを沢山、手伝ってくれた。
私ね、お母さんとかお父さんとか、
そういう人たちのことを知らないけど、
カーティスがお母さんだったらいいな、って
思ったことがあるの。
カーティスなら、絶対に私を嫌いにならないし、
ずっと愛してくれるって思ったから。
私が泣いたら絶対に抱きしめてくれて
大丈夫ってキスして。
いつだって守ってくれる。
ずっと一緒にいてくれる人だって思った。
……私の母親に対するイメージって
そんなのだから。
だからね。
カーティスがこうして一緒にいてくれるのが、
私は嬉しい。
愛してるって言ってくれるのが嬉しい。
カーティスになら何をされても
怖くないし平気だし。
カーティスなら、私がどんなになっても
一緒にいて、愛してくれて、
守ってくれるってわかってるもん」
金色の瞳から陰りが消え、
じわじわと潤んでくる。
「大好き。
だからね、私がキモチイイに支配されたら
カーティスが私を呼び戻してね。
私を守って、沢山、好きって言ってね」
必死で思っていることを伝えた。
大好きだから、一緒に居てと。
<闇>の魔素になんか囚われないで、と。
もし「世界とユウを天秤にかけたら…」という
そんな理由で<闇>の魔素を生みだして
しまったのだとしたら、
そんなのは、その理由ごと消し去ればいいのだ。
「世界が滅んでもいい」という自分を
蔑み、<闇>の魔素を生み出すと言うのなら
私が、世界を守ればいい。
簡単なことだ。
「……わかった。
約束する」
カーティスは真剣に頷いてくれた。
「うん。約束。
その代わり…カーティスが私を
愛して守ってくれるかわりに、
私がカーティスの大切な人たちを
守ってあげる。
カーティスが私にくれた<愛>で
世界を救うの」
「私の…愛で?」
「そう、カーティスの愛で。
私の中にある女神ちゃんがくれた『器』が
カーティスの愛であふれてるのがわかるの。
私はこの『器』にたまった<愛>を
力にしてるんだよ。
だからね。
カーティスが私を愛してくれることは
世界を守ることに繋がるの。
だからカーティスと一緒にいたら
世界は崩壊なんてしないし、
私とカーティスは離れなくてもいいんだよ」
「そう…か。
すごいな、私がユウを愛することが
世界を救うことになるのか」
「そう、だからね。
カーティスは世界とか考えなくていいから
私と一緒に居るときは、一緒に笑って、
一緒に楽しんで。
たくさん、幸せを感じよう?」
「そう…だね、ユウ。
ありがとう」
カーティスはまた
強く抱きしめてきた。
けれど、それは優しい抱擁ではなく
どこか淫靡な匂いがする。
カーティスの指先が
身体に巻いていたタオルの中に
滑り込み、優しく撫でた、
「か、カーティス?」
「ユウが嬉しいことを言ってくれたから
一緒に沢山、愉しもうと思ってね。
朝まで時間はたっぷりあるし、
私がユウを愛することで
世界は救われるのだろう?」
え?
いやいや、そうなのだけど。
いや、やっぱり違うし。
「愛してるよ、ユウ」
うっとりするような声で言われては
反論することができない。
それに、さきほどの激しい口づけで
身体がまた蜜がにじんできていることに
すでに私は気が付いていた。
「新婚アイテム、色々あるのだけど
どれを試そうか。
ユウにどれがいいか選んでもらってもいいかな」
どれも遠慮したい。
というか、見せられても選べない。
どんな顔をして
アダルトグッズを選べと言うのか。
しかも自分が今から使うものを!
「恥ずかしがるユウも可愛い。
今は私だけのユウだからね。
私だけに…私だけのユウの可愛い顔を見せて」
カーティスの嬉しそうな顔を
見ていられなくて、
まだ熱いカーティスの胸にしがみつく。
そんな私をカーティスが
嬉しそうな顔をしながら受け止め、
隠してあった新婚アイテムのケースに
視線を向けていたことを
私は気づくことはなかった。
新婚アイテムの本領発揮は
これからだった。
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