32 / 208
急に大ピンチ!やっぱりエロは必要ですか?
32:よし、仕事をしよう!
しおりを挟むバカヤロー!と白い世界で怒鳴ったら、
自分の声に驚いて目が覚めた。
私はベットに寝ていて、
慌てて起き上がると、
そばに人がいることに気が付く。
ヴァレリアン、カーティス、スタンリーの3人だ。
さっきのことを急に思い出し、恥ずかしくなるが
カーティスがそっと近づいてきて、私の髪を撫でた。
「バカヤローって、私たちのこと?」
「ち、違…っ」
慌てて首と手を振った。
「女神ちゃ…様のことです」
「女神さま?」
私の声に、ヴァレリアンと
スタンリーもベットの傍まで来た。
「女神と会ったのか?」
ヴァレリアンが聞いてくる。
「はい。でも…その」
何を言えばいいのか。
愛は溜まりましたよーとか?
そんなの言えるはずがない。
顔が赤くなり、
シーツにもぐりたくなった。
「女神に何か言われたか?
……私たちのこととか」
スタンリーの気遣う声に、
はい、と私はうなずいた。
「それで?
俺たちは天罰を受けるとか、そういう話か?」
ヴァレリアンがとんでもないことを言う。
「そんなわけないですよ!」
私は慌ててヴァレリアンを見た。
「むしろ、大喜びでしたよ!
これで<愛>は溜まったとか言って。
しかも<愛>は使ったら減るから
補充は念入りにしろ、とか。
もう無茶苦茶なことばかり……!」
と振り上げた手を、私は静かにおろした。
3人が私を見る目つきが、変わったからだ。
「へぇ、じゃあ俺たちの仲は女神公認だってことか」
「しかも私たちに愛されることで、
ユウの中に世界を救う<愛>が溜まるんだね」
「なかなか効率的だな。余計なことを考える手間が省けた」
3人とも納得した顔で。
私は何かを訂正したかったけど、
どれも間違ってないので何も言えない。
いたたまれない空気になったとき、
ドアがノックされた。
「入れ」
ヴァレリアンの声に、バーナードが入ってきた。
「準備完了しました」
「わかった」
バーナードはヴァレリアンに短く報告し、
すぐに私のそばにきた。
腰を曲げて、私の顔を覗き込む。
「よかった。具合が悪くなったって聞いて心配したけど
良くなったようだな」
「は、はい」
良かった。
3人とあんなことをしてしまったことはバレてないみたい。
「団長、出発はどうします?」
私の顔を見た後、
バーナードはすぐにヴァレリアンを見た。
「そうだな、もうすぐ日も暮れるし…
明朝、できるだけ早い時間に出立しよう」
「了解」
バーナードは軽い敬礼をして部屋を出ていく。
……出発?
意味が分からずヴァレリアンを見ると、
ヴァレリアンはベットのそばにあった椅子をひいた。
「座れるか?」
その椅子に座れ、と言っているらしい。
私がうなずくと、
カーティスがすかさず手を貸してくれて。
ベットから下りると、
スタンリーが私を抱き上げて
椅子に座らせてくれた。
至れり尽くせりで、恥ずかしすぎる。
椅子に座ると、
すぐ前にあるテーブルには大きな地図があった。
地図にはいくつかの印がしてあり、
1つだけ赤いピンのようなもので留めてある箇所があった。
「ここがいまいる場所だ」
赤いピンの場所をヴァレリアンが指さした。
「そしてここが王都だ。ここに大神殿がある」
もしこの世界にも東西南北があって。
地図の上を北とするのであれば、王都は北に位置していた。
その少し南へと下がった場所に、
今いる屋敷がある村がある。
その場所を拠点に、いくつもの黒い印があった。
それらは神殿のある場所を示していて、
私が休んでいる間、金聖騎士団全員で手分けして
【聖樹】の状態を見に行っていたらしい。
……気が付かなかった。
確かに毎日見ないなーとか思うときもあったけど、
買い出しとか訓練とか、そういうのでいないのだと
勝手に思っていた。
「ユウの体調が良くなるまでは
ここに滞在するつもりだったが、
ユウの体調も随分と良くなったように見えるしな。
ユウが行けそうなら、この屋敷を出て
神殿を回りたいと俺たちは考えているんだ」
ヴァレリアンの指が、ここから離れた場所の
神殿を指さす。
「神殿の【聖樹】の状態は、どこ教会も芳しくない。
枯れ始めている【聖樹】もある。
この教会の【聖樹】も枯れてきているらしいのだが」
と、ヴァレリアンは一旦、呼吸を入れる。
私はヴァレリアンを見上げた。
互いに椅子に座っていても、身長差で自然と
私は見上げる形になる。
「……ここの【聖樹】は、枯れているのに
何故か1輪だけ、花が咲いているそうだ」
「1輪だけ?」
それは不思議だ。
「ケインたちに確認しに行かせたが、
確かに花は咲いていたらしい。
……幹はどんどん枯れていっているのに、だ。
そこれ俺たちはこの神殿か、【聖樹】か、
もしくは咲いている花が、
女神の何かに繋がっているのではないかと考えている」
「私がその花を見たら、何かがわかるかもしれない、
ってことですか?」
ヴァレリアンは頷いた。
だから、神殿に花を見に行って欲しい。
そう言われて、私はわかりました、と返事をする。
するとヴァレリアンは、ほっとしたような顔をした。
嫌がられるとでも思ったのだろうか。
「だが、地図を見てわかるように、
ここからはかなり距離がある」
ヴァレリアンの声に
スタンリーが横から地図を指さした。
「途中、町も村も何もない場所で野宿する可能性もある。
移動は馬車を準備したが、馬車に乗り続けるのも楽ではない。
行けそうか?」
スタンリーの心配そうな瞳に、私はうなずいた。
「頑張ります」
経験したことがないのに、
大丈夫、なんて気軽には言えない。
でも、頑張る。
私にはそれしかできないから。
「馬車が辛くなったら、私の馬にも乗せてあげよう」
後ろからカーティスが優しく肩を抱いてくれた。
「休憩もできるだけいれるようにする。
時間も惜しいが、ユウの体調が一番だからな」
ヴァレリアンの気遣いも嬉しい。
皆が気にかけてくれている。
たったそれだけで、あったかい気持ちになる。
施設ではずっと私が頑張って
皆を守らなくっちゃ、って思ってて。
社会人になって、一人で頑張っても
できないことがあることを知り、
頼らなければならないことを学んで。
でも、本気で誰かに心を預けるのは怖くて。
親にも捨てられた「いらない子」の私が
愛されるわけがない、とか心のどこかで思ってて。
そんなウダウダしていた気持ちが、
この3人の前だと、無くなっていくのを感じる。
私はもう「いらない子」じゃない、って
言われているような気がする。
それが嬉しくて。
少しくすぐったくて。
私は3人に頭を下げた。
「頑張るので、よろしくお願いします」
3人は目を丸くして、
それぞれ私にねぎらいの言葉と、
優しいキスを贈ってくれた。
37
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる