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第五章 大きな彼。後編
それは惚れた弱みというやつで【彼視点】
しおりを挟む当たり前だが、性別が違えば成長する速度も最終地点も違うわけで。俺の掌に手を乗せて「大きいね」と蕩けたように笑う漣が好きだった。この気持ちがあいつの求めるものじゃなくても俺は漣のそばにいられるのなら一生黙ってるつもりだし、今後だって伝えるつもりはない。
「鹹蛋、何考え込んでんの」
美味そうに唐揚げを頬張る漣になんとも言えない気持ちを抱きつつもう一つ唐揚げを口に放り込んでみた。やっぱり美味しいのが腹立たしいし、その向こう側でニタニタと下卑た笑みを浮かべる男にも苛立ちを覚える。
してやったりみたいな顔をする男になんとも言えないし今思い出しても殴っていいのなら殴ってやりたい。
唐揚げの肉が何か?
あー……腿肉だったかな。あいつはムネ肉の唐揚げの方がいいけどとれる量が少ないからって腿肉にしてるらしい。んなこと知らねぇけど。
「別になんでもねぇよ」
「竜騎、こっちの唐揚げどうすんの?」
「普通のお肉だしね。祐の夕食にでも回してあげようかな」
ふふ、って胡散臭い笑い方をしたあの男の胡散臭さといえば今でも変わっていないんだろうな。あぁ、最近は会ってないから知らないんだよ。
漣は肉を摘み続けるし、俺はその一つでやめて普通のもう一つの皿の方の唐揚げを口に放り込んだ。どっちにしても美味いのは少し腹が立つ。粗探しってわけじゃないけれども少しでもヘタ打てば馬鹿にできるのになんて考える俺も俺でどうかしてるとおもう。
「無理しなくていいからね」
「無理してねぇよ。現にこっちの食べてる」
不安そうに眉尻を下げてる漣に呆れたようにため息を漏らしながら言ってやればあいつはそれでも心配そうにする。そんなふうに心配されるのが嬉しくて、もっと俺をみて欲しくて、この時は無理をして竜騎が作った唐揚げを何個か頬張る。隣で竜騎が「夕飯分残しといてねぇ~」と言ってきていた。
漣は食に関して関心がない。出されたものはなんでも食うし、好き嫌いもあんまりないと思う。それでも美味い不味いはハッキリいうし、竜騎が作る料理でもいつもに比べて味付けが微妙だとそれでも不味いという。
「唐揚げ、好き?」
問い掛ければ、笑顔を浮かべながら見上げてくる漣が可愛らしい。惚れた弱みとか、そう言うんじゃなくて。まぁ見ればわかるだろう顔は世間的にいえば整っているほうだし、贔屓目なしに綺麗なほうだと思う。そこに惚れ込んだ男が見ればそりゃ可愛らしく見えるだろ。
あぁ、結局は惚れた弱みだな。
「おいしいものはなんでもすき」
好きな女が笑ってたら、なんでも良くなるだろ。
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