MOMO

百はな

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第5章 ゴールデン・ドリーム

65.駒としての自分

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CASE 四郎

10歳の誕生日パーティーの夢を見た。

三郎(さぶろう)に手を引かれながらリビングに訪れると、メンバーの皆んながクラッカーを持っていたのを覚えてる。

部屋は誕生日用の装飾がされ、花やら子供用のシャンパンが用意されていた。

「何…、これ」

「何って、お前の誕生日だろ?ほら、座れよ」

一郎(いちろう)が椅子を引き、座るように指示を送ってきたので黙って座った。

コトッ。

目の前に置かれたのは、真っ赤な苺が乗ったホールの
ショートケーキだった。

大きなチョコレートプレートには、誕生日おめでとうと言う文字が書かれている。

見た事がない大きなホールケーキ、ボスが優しい顔をして笑っていた。

パァァンッ!!

「「「「誕生日、おめでとう!!!」」」」

メンバーの声が重なり、紙吹雪が宙に舞う。

10本の蝋燭に火が灯され、クラッカーの音が鳴り響く。

その他には、買って来たであろうフライドキチンやデパートの惣菜がテーブルに置かれる。

俺を囲んで三郎達が座り、浮かれている様子だった。

初めて見たご馳走に目を奪われていると、ボスが四角形の箱を置いた。

コトッ。

「10歳の誕生日おめでとう。これもプレゼントだ」

カチャッとテーブルに置かれたトカレフTT-33。

「ボス、これって本物?」

「あぁ、弾丸は抜いてあるがな。六郎(ろくろう)の誕生日にも違う銃を渡すつもりだ」

「やった。ありがとう、ボス」

六郎の問いに答えたボスは、俺の背後に周りトカレフTT-33を握らせた。

初めて握った銃の感触は冷たくて、硬く重く感じた。

「お前の命を救い、敵を殺す武器だ。そして、この箱はお前が興味を持った物だ。開けてみるか?」

「良いんですか?」

「あぁ、お前へのプレゼントだ。好きにしたら良い」

箱に装飾された青いリボンを解き、中身を開封して行く。

ガサッガサッ。

箱から出て来たのは、キャノンのカメラだった。

キャノン(Canon)
キヤノンの前身は1933年に創設された精機光学研究所です。
創設以来、自社開発のレンズ・CMOSセンサー(画像を電気信号に変換する装置)・映像エンジンなどの革新的な技術を生み出し続け、現在では日本の3大カメラブランド一つに君臨しています。
キヤノンのデジタル一眼レフは、プロの現場から圧倒的な人気の誇る「EOS-1D」シリーズ、中級者向けの「EOS 5D」と「EOS 6D」シリーズ、初心者向けの「EOS Kiss」シリーズなどががあります。
ミラーレスは中級者向けの「EOS R」シリーズ、初心者向けの「EOS M」シリーズ、「EOS Kiss M」などがあります。

「カメラ…?」

俺の言葉を聞いたボスは、何かを思い出しながら語りだす。

「お前、写真に興味ありそうだったからな。ほら、スマホで写真を撮っていた事があっただろう?」

「へぇ、四郎にそんな趣味があったなんてな。知らなかったよ、良かったな?四郎」

ボスの話を聞いた二郎が笑い掛けてきた。

拾われて間もない頃、スマホで何かと写真を撮るのが癖だった。

その光景を見たボスは、俺が写真好きだと勘違いしたのだろう。

実際に好きで写真を撮っていた訳じゃない。

だけど、ボスは空を撮った写真を見て褒めてくれた事があった。

「中々良いじゃないか」

一言だけだったが、俺は凄く嬉しかった。

また写真を撮ったら褒めてくれるだろうか。

俺は邪な気持ちを持って写真を撮っていたんだ。

だけど、スマホで写真を撮る事はなくなってしまった。

誰かを殺す日々を繰り返すようになったからだ。

手のひらに置かれたカメラは、俺のいる世界には不釣り合いだった。

「俺はお前には写真のセンスがあると思っている。ま
た写真を撮ったら見せてくれ、四郎」

「はい」

ボスは俺がカメラを貰って喜んでいると思ってるだろう。

だから、本音を飲み込んで返答をした。

それからあのキャノンのカメラは、机の上に放置されたままだ。

あの日以来、キャノンのカメラには触れていない。


夢鬱のまま目を開けると、見慣れた黒い天井が視界に入る。

ズキズキと全身から痛みが走り、体に倦怠感が押し寄せた。

呼吸をする度に肺に激痛が走る。

肺が痛い、こんな風になったのは初めてだ。

傷による発熱を起こしているのか、寒さと暑さが同時に押し寄せる。

頭が痛てぇし、めちゃくちゃ怠るい。

周囲を見渡してみるが、アジトの自室のベットで寝ている事が分かった。

いつの間に戻ってきたのだろうか。 

右側に視線を移すと、モモが静かな寝息を立て眠っていた。

甘い砂糖菓子のような匂いが髪から漂う。

暗い部屋にいても、モモの肌白さが際立っている。

身体中の痛みが甘い匂いで中和されて行くのが分かった。

モモの体を抱き寄せ、小さな背中に手を回す。

髪の毛に顔を埋め甘い匂いを噛み締める。

こんな事をするのは熱の所為だ。

「四郎…?大丈夫?」

アパタイトの瞳をキラッと光らせながら、モモが顔を上げた。

「大丈夫じゃないのかもな」

「えっ?」

「お前を抱き締めているのは…。熱で頭がおかしくなってる証拠だろうな」

俺の言葉を聞いたモモは黙って背中に手を回す。

「じゃあ、こうしてるモモも頭がおかしくなってるね」

俺達が抱き締め合って眠るのもおかしい事なんだ。

モモを抱き締める事がしっくり来る事も。

モモに気を許してる事すらも。

あぁ、俺は頭がイカれちまってるのかもな。

「俺とお前もおかしい事に気が付いてねぇ…んだ」

そう言って、俺は瞼を下ろした。


CASE 三郎

キィィ…。

四郎の部屋の扉を開けた俺は、部屋の中を覗く。

モモちゃんと2人で眠っている姿を見てから、扉を閉める。

「四郎は起きた?」

俺に声を掛けたのは六郎だった。

「いや、まだ寝てる。熱も高いし…」

「大怪我だったんだから当然よ。それと、お爺さんから三郎にって」

「何?この封筒。あ、もしかして請求書?」

「じゃない?あたし、仕事の時間だから行くわ。四郎が起きたら作り置きしたご飯を食べさせといて」

そう言って六郎は封筒を渡した後、アジトを出て行った。

「コーヒーを飲みながら、中身を見るかな」

リビングに入り、冷蔵庫に入っていた缶コーヒーを取
り出す。

ソファーに腰を下ろしコーヒーを一口飲み、封筒を開封した。

カサッ。

封筒の中には2枚の紙が入っており、1枚目は予想通り請求書だった。

2枚目の紙は俺宛てで、どうやら四郎の診断結果が書かれている。

「診断結果…?何でまた…」

疑問に思いながらも、内容を読み進めるて行く。

内容としては四郎の肺が炎症を起こしており、禁煙と安静が必要との事。

原因として、モモちゃんのJewelry Words (ジュエリーワード)を使用した事によるダメージらしい。

「はぁ…、最悪なんだけど」

肺が炎症って…、肺炎って事?

Jewelry Wordsを使った影響が体に出たんだ。

ベットで寝ている2人を見て、第2段階に進んだ事は明白だった。

その事は良い。

四郎の戦力になるのだから。

だけど、モモちゃんのJewelry Wordsを使った影響が大き過ぎる。

何回使ったのか分からないけど、また使ったらどうなる?

最悪の場合、死ぬ可能性もあるんじゃ…。

「それは…、ダメだ」

四郎を死なせたくない。

四郎が死んだら俺は…、生きていけない。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

もう、四郎にJewelry Wordsは使わせたくない。

いや、使わせてたまるか。

ブー、ブー、ブー。
そんな事を考えていると、スマホが振動した。

ポケットからスマホを取り出し、着信相手を確認する。

画面に映し出された名前はボスだった。

急いで通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

「お疲れ様です」

「四郎の様子はどうだ?」

「まだ寝てますよ、熱がありますし。それに肺炎を起こしてますんで、安静が必要って爺さんから手紙がありました」

少しイラついた声色で話をしてしまう。

「四郎が肺炎?元々、肺が悪かったのか?」

「いえ、モモちゃんのJewelry Wordsを使用したのが原因です。暫く休ませてあげてほしいんです」

「それはお前の意思だろ?四郎とお前を食事に誘うと思っているんだが…。四郎が体調が悪いなら仕方ないな」

ボスが俺と四郎を食事に?

突然の提案に俺は困惑していると、ボスが言葉を続けた。

「直接、アジトに向かう事にする。そうだな、あと30分程で到着する予定だ。すまないが、四郎に伝えてくれるか」

「え…。あ、はい。分かりました」

「宜しく」

そう言って、ボスは通話を終わらせた。

何だか、嫌な感じがする。

今まで俺達を外食に誘う事はなかった。

それがいきなり俺と四郎を食事に誘うには理由がある筈。

ブー、ブー、ブー。

ボスとの通話が終わった直後、嘉助からも着信が入る。

その瞬間、俺は悟った。

苛々した気持ちを残したまま、嘉助からの通話に出た。

「もしもし、三郎君?今、少し良いかな?」

「お前、ボスと会っただろ。何を吹き込んだんだ」

「あれ?雪哉さんから話を聞いたの?」

「聞いてねーよ、そんな事はどうでも良い。妙な動きをしやがって」

どうやら俺の予想は当たったようだ。
 
2人が会ってどんな会話をしたかは分からない。

だけど、四郎と俺に関する事だけは分かる。

「椿を殺す為に動きだす時が来たんだよ。雪哉さんの
同意も得ている」

「ボスの同意…って。そう言う事かよ」

脳裏に流れた映像が嘉助の言っている意味を物語っていた。

ボスが四郎を椿を殺す為の道具として使う未来が過った。

何だよ、そう言う事か。

「アンタ等2人は良く似てるよ。目的の為なら手段を選ばない所がね」

「僕と雪哉さんが似てる?本当にそうかな。僕はあの人のように優しさは残してないよ」

嘉助はそう言って、通話を終了させた。

「三郎、どうした?」

ソファーの背後に立っていた二郎が声を掛けてきた。

俺は背後から声を掛けられるのは嫌いだった。

それに加えて機嫌が悪い。

「背後から声掛けられんの好きじゃないってさ。前にも言わなかった?」

「あ、ごめんごめん。さっきの電話だけど、ボスからだった?」
 
「そうだけど…」

「そっか。もしかしたら、僕と五郎が関係してるかもしれない」

「は?どう言う事」

俺の言葉を聞いた二郎は、泉病院での事を話し出した。

五郎の命を救う為に警察の女に取り引きをされた事。

その為に、二郎は俺達を説得する約束をしたと。

だけど二郎は四郎を見捨てるつもりはなく、目的を探ろうとしてるらしい。

「成る程。だから、ボスがご飯に誘って来たわけね」

「ごめん」

「二郎が謝る事じゃないでしょ?それに、四郎を助ける事を考えてくれた。それがなかったら殺してたけど
ね」
 
「あはは、だよな」

そう言って、二郎は缶コーヒーを口に付けた。

「四郎はボスの命令に従うよ。それが四郎の生き甲斐だから」

「…、三郎。お前はそうなったら、どうするんだ?」

「俺?四郎がそうするなら、俺もそうするだけ」

「あのさ、もしもの場合だよ?四郎が死んだら…、どうするの?」

「死ぬよ、一緒に」

二郎の問いに即答した俺は、煙草を咥える。

呆気に取られている二郎を他所に言葉を続けた。

「四郎がいない世界で生きる価値はない。四郎が死んだら死ぬのは当然でしょ?」

「…そっか。お前ならそう答える気がしたよ」
 
「二郎は俺よりも五郎の心配をしたら?アイツ、二郎と仲直り出来て喜んでたし」

「別に喧嘩した訳じゃないけどね。ったく、仕方ないな」

二郎は小言を言いながら、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出しす。

「なんか、吹っ切れた感じがするね?二郎」

「そう?まぁ、考える事がなくなったからかな」

「良いんじゃない?前の二郎はさ、なんか暗かったし」

「あははは、暗いのは良くないな。じゃ、五郎の様子を見てくるよ」

そう言って、二郎はリビングから出て行った。


長い廊下を歩き五郎の部屋の前で足を止め、ドアを軽く叩く。

トントンッ。

「…」

五郎からの返答はないが、二郎は扉を開け部屋の中に入った。

キィィ…。

アメリカンカジュアルテイストのインテリア、壁にはバイクのポスターが張られている。

テーブルにもバイクのミニキュアが飾られていた。

「起きてんだろ、莇(あざみ)。返事ぐらいしたらどうだ?」

「春だって分かってるから良いじゃん。それに、俺は怪我人だからー」

そう言って、煙草に手を伸ばそうとした五郎の手を叩いた。

ペシッ!!

「あいた!?」

「暫く禁煙だ」

「えぇ!?それはないだろ!?」

「そもそも、莇に煙草は生意気だ。」

二郎の言葉を聞いた五郎は不貞腐れながら顔を背ける。

五郎の首元には包帯が巻かれ、隙間から縫われた傷口が見えた。

二郎が傷口を見ている事に気付いた五郎は、包帯で傷口を隠した。

「お前の所為じゃねーよ。泉淳だろ?この傷を作ったの」

「…。カバータトゥーとか入れたらどうだ?治ったらさ」

「いや、今回はやめとく。これはあった方が良いからよ」

「お前が良いなら良いよ。あ、今度さ…、墓参りに行こう」

「っ!!おう!!」

五郎は満面の笑みを浮かべながら返事をした。


CASE 四郎

トントンッ。

扉が叩かれた瞬間、俺は目を開けた。

気配で誰だか予想は出来ていた為、モモを起こさないようにベットを降りる。

「三郎、どうした」

「ごめんね、寝てるのに。ボスがもう少しで到着するみたいで…」

「ボスが?分かった」

扉を開けて廊下を出ると、三郎がタオルを持って来ていた。

「顔、洗って来るでしょ?」

「あー、そうだな。」

俺は三郎からタオルを受け取り、洗面所で顔を洗う。

冷たい水が熱った顔を一瞬だけ冷やしてくれた。

着替えは…、してる暇はなさそうだな。

急いでリビングに向かい、ボスの到着を待つ事に。

数10秒後、玄関の扉が開く音がした。
 
ガチャッ。

廊下から足音をが聞こえたので、俺はリビングの扉を開けた。

扉の先には全身黒いスーツを着たボスが立っていた。
 
「お疲れ様です、ボス。すいません、こんな格好で」
 
「気にするな、俺が勝手に来たんだ。座ってろ、話は長くはならない」

「分かりました」

ボスよりも先にソファーに腰を下ろすと、隣に三郎が腰を下ろす。

対面するように座ったボスの顔持ちが固かった。

「四郎、お前にこれから大きな任務を任せたい」

「大きな任務ですか?それは俺だけですか」

「いや、三郎とモモちゃんにも関係してくる任務だ」

「この2人って事は…、Jewelry Pupil(ジュエリーピューピル)が関係してるんですね」
 
俺の言葉を聞いたボスは頷いた後、話を続けた。

「息子を殺したのは椿恭弥だ。俺は椿を殺す為にお前達を拾った理由の中にある。伊織(いおり)に殺し屋としての知識と技術を叩き込ませた。四郎、椿恭弥を殺す任務を任せたい」
 
「分かりました」

「俺と嘉助を含めた話し合いの場を設けよう。嘉助とも話はついているから、安心して良い」
 
「ボス、四郎にモモちゃんのJewelry Wordsを絶対に使わせないで下さい」

三郎の突然の申し出に少し驚いた。
 
「四郎、爺さんから診断結果の紙を貰ったんだ。四郎の肺が炎症してるって…っ。また使ったら体に影響が出るかもしれない」

「そう言う事か、肺が痛い理由が分かった。安心しろ、はなからモモのJewelry Wordsを使う気はねぇ」
 
「え?」

俺の言葉を聞いた三郎は目を丸くさせる。

「ボスもモモが傷付く事は望んでいない。俺はボスの言われた通りの事はするつもりだ」
 
「四郎…」

「三郎、右肩骨折してんだろ。痛みを感じないからっ
て、無茶すんなよ」

「四郎のそう言う所は昔から変わらないよね」

そう言って、三郎は嬉しそうに笑う。
 
「分かった、今は体を休めてくれ」

ボスはそう言ってから立ち上がり、三郎に視線を送る。

「三郎。お前を指名での依頼が来てるんだが、どうする」
 
「仕事はしますよ、所属してる以上は。タブレットに詳細を送って下さい。あ、玄関まで送ります」

三郎は立ち上がりなから言葉を吐く。

「あぁ、悪いな。四郎は来なくて良い、座ってろ。」

「分かりました」

「また連絡する」

2人が出て行ったリンビングのソファーに寝転んだ。

キィィ…。

「四郎?ここにいたの?」
 
「モモか」

扉の方に視線を送ると枕を持ったモモが立っていた。

「うん、起きたら四郎がいなかったから探しに来た」

「あぁ」
 
「誰か来てた?」

「ボスがな」

タタタッと小走りして来たモモは、ソファーに腰を下ろす。

「何話してたの?」

「仕事の話」

「そっか。仕事話なら仕方ないね」

「あぁ」

モモが勝手に引っ付いて寝転んで来たが、そのままにしておいた。

「四郎の部屋にカメラがあったけど、写真撮るの?」

「スマホでだけどな」

「カメラは使わないの?」
 
俺があのカメラを使う日が来るのだろうか。

誕生日に貰ったカメラを持って、色んな場所に行きたいと思った事はあった。

だけど、僅かに抱いた夢よりもボスの役に立つ方が大事だ。

俺はあの人に助けられて生きていられている。

「四郎が撮った写真みたいなぁ…」

「いつかな」

ボスの駒として生きて死ぬ。

それが俺の生きる理由であり、死ぬ理由だ。

そう思いながら、俺は抱き付いてきたモモを抱き締めた。


玄関前まで見送った三郎に、兵頭雪哉(ひょうどうゆきや)が言葉を投げた。

「三郎、お前は意見して来ると思ってたんだけどな。静かに話を聞いていたな」

「二郎から大体の事は聞きましたからね。それに四郎は貴方の役に立つ事が生き甲斐なんで」

「確かに四郎は俺に忠順だ。そう育てたからな」
ガッ!!

その言葉を聞いた三郎は、兵頭雪哉の胸ぐらを掴んだ。

「三郎、お前の言葉で四郎は動かせねぇ。その事はお前自身が分かってんだろ」
 
「マジで許せねぇ。だから、四郎を1番に可愛がってたんだな」

「お前みたいに人の為に怒れる奴は、四郎の側にいるべきだ。これからもこの先もな」

兵頭雪哉は話をしながら、三郎の腕を掴み胸ぐらから離す。

「三郎、お前は四郎の側にいろ。そして、アイツの枷になれ」

「どう言う意味ですか、それ」

「いずれにせよ、そのうち分かる。俺の事を嫌うお前

ならなそう言って、兵頭雪哉はアジトを後にした。
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