【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru

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17.会いたい②

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 そして───
 眩い光が広がり部屋にいる人達は、目を細める。空気が少し冷気を帯びたせいか、冬の朝のような凛とした空気につつまれた。

「な、なんて力だ」
「神使様!手を手を離して下さい」

 何が起こったのか呆然としてしまって、身動きが取れない。体内から吸われ続けるのせいで水晶に亀裂が入り始める。

 手が離れなくてどうしていいのか分からない。

 エドワード殿下が、椅子の背もたれ越しに俺を抱き締めるような形になった。そして水晶に乗せた俺の手に、大きな手を重ね指を絡めてゆっくりと引き剥がしていく。
    ようやく手が水晶から離れた時は、疲労感が半端なく襲ってきた。

「だいぶ魔力を吸われたと思いますが、大丈夫ですか?」

 今の、魔力だったのか?体を支える事が難しい。

 エドワード殿下の声が優しく耳に届く。本当に椅子に座っていて良かった。立っていたら、倒れたかもしれない。目眩が少しする。とりあえず椅子からずり落ちなくて良かった。

「だ、いじょうぶ……です」
耳鳴りもしてきた。

「すごい。本物の聖女……いや神使様だ」

 違う。そんなものじゃない。否定したいのに段々と視界が黒く潰されていく。こんな風にまた具合が悪くなれば、また結に会えなくなってしまう。しっかりしなければ……歯を食いしばり、意識を保とうと必死になってしまう。

 バン!と激しくドアが開く音がした。
 殿下やかなり身分の上の方々が居るのに……突撃するように部屋に入っても良いのか?  無礼にならないのだろうか?また吐いてしまったら? 不敬にならないだろうか? 違う事を考えてないと、意識が沈んでしまいそうだ。ふと背中からの支えがなくなった。
 
──殿下?

    後ろから横へと移動して、背中と膝の所に手が入り、抱きかかえられる。
「エドワード殿下、降ろしてください」

 何も答えてくれなかった。
 必死に重たくなった手を持ち上げ、シャツを引っ張ろうとした。暗くなる視界で、見えなくなる前にじっと見つめて見る。ぼやけた輪郭に焦点を合わせると、夜空のような深い青の瞳が見えた。

「青?だ、れ?」
 本当なら、そんな色じゃなかった。少し明るめの茶色の髪。焦げ茶の瞳。でも、顔立ちは。自慢の美形の弟に似てた。

「──ゆ……い」
 シャツを引っ張るのを止めた。彼の頬に触れる。あたたかい。

「結。いなくなったらダメだよ」

 そして、意識をまた手放した。
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