【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru

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30.琥珀とジェイド②

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 顔が赤い。ジェイドも照れ屋だな。
 そう言えば、結も時々俺を見て赤くなってたんだよね。

「やっぱり、男同士でも急に近くに顔があったら照れくさいね。ジェイドは、美形だから人気があって大変だね。俺もさっきドキドキしたよ」

「それは、こちらのセリフです。琥珀様が綺麗だから。真っ直ぐに見つめられたら……誰だって勘違いさせます。誘惑されているのか?って思わせぶりになるので。気をつけて下さい」

「俺が? 誘惑? ないない。背が低いせいでモテた事ないよ。この王国は、美形だらけだよね。エドワード殿下もミカエル様も、人気があるの分かる。性格も良さそうだしね」

「エドワード殿下にミカエル様が気になるのですか? 好みのタイプだったりするのですか?」

「好み? 男の人だよ? 美形とは思うけど、恋愛的に見た事はないよ」

「じゃあ、聖女とかが好みとか? 女の方がいい?」

「聖女は子供っぽいし。女の子と付き合った事もないから……好みってのは分からないな。いつも結と遊んでたから」

「ユイとは……誰か聞いても?」
 結って言っても、ジェイドは反応しない。

「結は、大切な弟なんだ。行方不明になって……探してたんだ。その時この世界に来てしまって」

 (ねえ。ジェイドは結じゃないの?)

「──弟? 血の繋がってる?」

「そうだよ」
 父さんが勘違いだと言っても。母さんが否定しても。皆が認めなくても。俺のたった一人の大切な子なんだ。

 何故か、ジェイドは優しげな表情に変わった。

「ジェイド?」
「すみません。あまりにも切なそうに、ユイと名前を呼んでいたので。恋人だと思っていました」

恋人……より、深く繋がっていると思ってたんだ。

「そんな風に見えたんだ。結はね。小さい頃は天使って思うくらい可愛くて、それが今では身長越されてたんだよ。兄の威厳なんてこれっぽっちもなくなった……」

 さらにそばに来たジェイドに、抱きしめられた。
「ごめん。恋人じゃなくても、家族だよね。行方不明なら辛かったはず。泣かないで」

 いつの間にか、泣いていた。
 この温もり。本当に結じゃないのかな? 今だけ、抱きしめていいかな?俺、追いかけてここまで来たんだ。両親よりお前を優先したんだよ。

「ジェイド、聞いて。髪の色と瞳の色は違うけど……ジェイドは結にそっくりなんだ」

ジェイドの表情が変わった。

「──俺は殿下から、琥珀様を呼んだのはお前だと言われました。惹かれる相手を魔力で追えと言われて。何処かで会っていたのか? それが、分からないんです。召喚事故に巻き込まれて記憶が欠けています」

「記憶……そうだよね。この世界でコーディエライト侯爵家の息子で、両親も揃ってるなら。似ているだけなのかな?」

    お前にとって、忘れるくらい俺の事どうでもいい? 俺の勘違い?どっちが本物なんだろう。

でも、お前だって思うんだ。記憶……どうしたら、戻せるのかな?

   ジェイドの体温が気持ちよくて、力が抜けていく。そう言えば、あまり眠れてなかったっけ。

「琥珀様? 大丈夫? ここにいなかった時の記憶戻せる方法が無いか調べるので時間を下さい」

「俺も調べたい。でもごめん。今日は少し、このままでいて。あまり眠れてなくて……なんか、ジェイドの匂い落ち着く。このまま添い寝して欲しいか……も」

「え? 琥珀様、それはちょっと不味いかと」

「ん──なん、で?  弟みたいなものだよ。誰も気にしないから、ベッドいこ」

「だ、だめです」

「だから……お願い。あまり眠れて、ないから少しだけ一緒に……いてくれる?」

     優しい、ジェイドにわがままを言って困らせてる。ただ寂しいだけかも。

   体がふわりと浮いた。また抱っこされてる?

心配そうな顔をしてる。
「なんかごめん……少しだけそばにいて欲しいだけなんだ」

     ベッドに寝かされて、ブーツを脱がされているみたいだ。
そんなのどうでもいいのに。終わったかな?

「横にいて」
ベッドをトントンと掌で叩く。ここに来てって伝える。

ギシリとベッドが軋んだ。横に来てくれた。子供の頃は良くこうして寝てたな。

少し遠い。思わず抱きついた。
「せめて寝るまでここにいて欲しい」
「──分かりました」

「ありがとう……」


◇◇◇


「琥珀様……本当に寝てしまいましたか?」
    俺に抱きついて眠る琥珀様は、少しだけ幼く見えた。
    少しだけ涙で濡れた頬に、口付けを落とす。
「ユイは、血の繋がった弟なのですね。だったら……そんなにそっくりなら、俺を見てくれませんか?」

   少し体を動かすと、琥珀が身じろいで向きが変わった。

    唇に吸い寄せられるかのように、思わず唇を重ねる。その甘さに酔ってしまいそうだった。
もう一度だけ、そう言い訳をしながら唇を重ねた。

     何故だろう。ずっと、琥珀様とキスをしたかったのだ。この苦しい思いを知って欲しい。

     やっとその願いが叶った。そう思う自分がいた。

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