31 / 81
30.琥珀とジェイド②
しおりを挟む
顔が赤い。ジェイドも照れ屋だな。
そう言えば、結も時々俺を見て赤くなってたんだよね。
「やっぱり、男同士でも急に近くに顔があったら照れくさいね。ジェイドは、美形だから人気があって大変だね。俺もさっきドキドキしたよ」
「それは、こちらのセリフです。琥珀様が綺麗だから。真っ直ぐに見つめられたら……誰だって勘違いさせます。誘惑されているのか?って思わせぶりになるので。気をつけて下さい」
「俺が? 誘惑? ないない。背が低いせいでモテた事ないよ。この王国は、美形だらけだよね。エドワード殿下もミカエル様も、人気があるの分かる。性格も良さそうだしね」
「エドワード殿下にミカエル様が気になるのですか? 好みのタイプだったりするのですか?」
「好み? 男の人だよ? 美形とは思うけど、恋愛的に見た事はないよ」
「じゃあ、聖女とかが好みとか? 女の方がいい?」
「聖女は子供っぽいし。女の子と付き合った事もないから……好みってのは分からないな。いつも結と遊んでたから」
「ユイとは……誰か聞いても?」
結って言っても、ジェイドは反応しない。
「結は、大切な弟なんだ。行方不明になって……探してたんだ。その時この世界に来てしまって」
(ねえ。ジェイドは結じゃないの?)
「──弟? 血の繋がってる?」
「そうだよ」
父さんが勘違いだと言っても。母さんが否定しても。皆が認めなくても。俺のたった一人の大切な子なんだ。
何故か、ジェイドは優しげな表情に変わった。
「ジェイド?」
「すみません。あまりにも切なそうに、ユイと名前を呼んでいたので。恋人だと思っていました」
恋人……より、深く繋がっていると思ってたんだ。
「そんな風に見えたんだ。結はね。小さい頃は天使って思うくらい可愛くて、それが今では身長越されてたんだよ。兄の威厳なんてこれっぽっちもなくなった……」
さらにそばに来たジェイドに、抱きしめられた。
「ごめん。恋人じゃなくても、家族だよね。行方不明なら辛かったはず。泣かないで」
いつの間にか、泣いていた。
この温もり。本当に結じゃないのかな? 今だけ、抱きしめていいかな?俺、追いかけてここまで来たんだ。両親よりお前を優先したんだよ。
「ジェイド、聞いて。髪の色と瞳の色は違うけど……ジェイドは結にそっくりなんだ」
ジェイドの表情が変わった。
「──俺は殿下から、琥珀様を呼んだのはお前だと言われました。惹かれる相手を魔力で追えと言われて。何処かで会っていたのか? それが、分からないんです。召喚事故に巻き込まれて記憶が欠けています」
「記憶……そうだよね。この世界でコーディエライト侯爵家の息子で、両親も揃ってるなら。似ているだけなのかな?」
お前にとって、忘れるくらい俺の事どうでもいい? 俺の勘違い?どっちが本物なんだろう。
でも、お前だって思うんだ。記憶……どうしたら、戻せるのかな?
ジェイドの体温が気持ちよくて、力が抜けていく。そう言えば、あまり眠れてなかったっけ。
「琥珀様? 大丈夫? ここにいなかった時の記憶戻せる方法が無いか調べるので時間を下さい」
「俺も調べたい。でもごめん。今日は少し、このままでいて。あまり眠れてなくて……なんか、ジェイドの匂い落ち着く。このまま添い寝して欲しいか……も」
「え? 琥珀様、それはちょっと不味いかと」
「ん──なん、で? 弟みたいなものだよ。誰も気にしないから、ベッドいこ」
「だ、だめです」
「だから……お願い。あまり眠れて、ないから少しだけ一緒に……いてくれる?」
優しい、ジェイドにわがままを言って困らせてる。ただ寂しいだけかも。
体がふわりと浮いた。また抱っこされてる?
心配そうな顔をしてる。
「なんかごめん……少しだけそばにいて欲しいだけなんだ」
ベッドに寝かされて、ブーツを脱がされているみたいだ。
そんなのどうでもいいのに。終わったかな?
「横にいて」
ベッドをトントンと掌で叩く。ここに来てって伝える。
ギシリとベッドが軋んだ。横に来てくれた。子供の頃は良くこうして寝てたな。
少し遠い。思わず抱きついた。
「せめて寝るまでここにいて欲しい」
「──分かりました」
「ありがとう……」
◇◇◇
「琥珀様……本当に寝てしまいましたか?」
俺に抱きついて眠る琥珀様は、少しだけ幼く見えた。
少しだけ涙で濡れた頬に、口付けを落とす。
「ユイは、血の繋がった弟なのですね。だったら……そんなにそっくりなら、俺を見てくれませんか?」
少し体を動かすと、琥珀が身じろいで向きが変わった。
唇に吸い寄せられるかのように、思わず唇を重ねる。その甘さに酔ってしまいそうだった。
もう一度だけ、そう言い訳をしながら唇を重ねた。
何故だろう。ずっと、琥珀様とキスをしたかったのだ。この苦しい思いを知って欲しい。
やっとその願いが叶った。そう思う自分がいた。
そう言えば、結も時々俺を見て赤くなってたんだよね。
「やっぱり、男同士でも急に近くに顔があったら照れくさいね。ジェイドは、美形だから人気があって大変だね。俺もさっきドキドキしたよ」
「それは、こちらのセリフです。琥珀様が綺麗だから。真っ直ぐに見つめられたら……誰だって勘違いさせます。誘惑されているのか?って思わせぶりになるので。気をつけて下さい」
「俺が? 誘惑? ないない。背が低いせいでモテた事ないよ。この王国は、美形だらけだよね。エドワード殿下もミカエル様も、人気があるの分かる。性格も良さそうだしね」
「エドワード殿下にミカエル様が気になるのですか? 好みのタイプだったりするのですか?」
「好み? 男の人だよ? 美形とは思うけど、恋愛的に見た事はないよ」
「じゃあ、聖女とかが好みとか? 女の方がいい?」
「聖女は子供っぽいし。女の子と付き合った事もないから……好みってのは分からないな。いつも結と遊んでたから」
「ユイとは……誰か聞いても?」
結って言っても、ジェイドは反応しない。
「結は、大切な弟なんだ。行方不明になって……探してたんだ。その時この世界に来てしまって」
(ねえ。ジェイドは結じゃないの?)
「──弟? 血の繋がってる?」
「そうだよ」
父さんが勘違いだと言っても。母さんが否定しても。皆が認めなくても。俺のたった一人の大切な子なんだ。
何故か、ジェイドは優しげな表情に変わった。
「ジェイド?」
「すみません。あまりにも切なそうに、ユイと名前を呼んでいたので。恋人だと思っていました」
恋人……より、深く繋がっていると思ってたんだ。
「そんな風に見えたんだ。結はね。小さい頃は天使って思うくらい可愛くて、それが今では身長越されてたんだよ。兄の威厳なんてこれっぽっちもなくなった……」
さらにそばに来たジェイドに、抱きしめられた。
「ごめん。恋人じゃなくても、家族だよね。行方不明なら辛かったはず。泣かないで」
いつの間にか、泣いていた。
この温もり。本当に結じゃないのかな? 今だけ、抱きしめていいかな?俺、追いかけてここまで来たんだ。両親よりお前を優先したんだよ。
「ジェイド、聞いて。髪の色と瞳の色は違うけど……ジェイドは結にそっくりなんだ」
ジェイドの表情が変わった。
「──俺は殿下から、琥珀様を呼んだのはお前だと言われました。惹かれる相手を魔力で追えと言われて。何処かで会っていたのか? それが、分からないんです。召喚事故に巻き込まれて記憶が欠けています」
「記憶……そうだよね。この世界でコーディエライト侯爵家の息子で、両親も揃ってるなら。似ているだけなのかな?」
お前にとって、忘れるくらい俺の事どうでもいい? 俺の勘違い?どっちが本物なんだろう。
でも、お前だって思うんだ。記憶……どうしたら、戻せるのかな?
ジェイドの体温が気持ちよくて、力が抜けていく。そう言えば、あまり眠れてなかったっけ。
「琥珀様? 大丈夫? ここにいなかった時の記憶戻せる方法が無いか調べるので時間を下さい」
「俺も調べたい。でもごめん。今日は少し、このままでいて。あまり眠れてなくて……なんか、ジェイドの匂い落ち着く。このまま添い寝して欲しいか……も」
「え? 琥珀様、それはちょっと不味いかと」
「ん──なん、で? 弟みたいなものだよ。誰も気にしないから、ベッドいこ」
「だ、だめです」
「だから……お願い。あまり眠れて、ないから少しだけ一緒に……いてくれる?」
優しい、ジェイドにわがままを言って困らせてる。ただ寂しいだけかも。
体がふわりと浮いた。また抱っこされてる?
心配そうな顔をしてる。
「なんかごめん……少しだけそばにいて欲しいだけなんだ」
ベッドに寝かされて、ブーツを脱がされているみたいだ。
そんなのどうでもいいのに。終わったかな?
「横にいて」
ベッドをトントンと掌で叩く。ここに来てって伝える。
ギシリとベッドが軋んだ。横に来てくれた。子供の頃は良くこうして寝てたな。
少し遠い。思わず抱きついた。
「せめて寝るまでここにいて欲しい」
「──分かりました」
「ありがとう……」
◇◇◇
「琥珀様……本当に寝てしまいましたか?」
俺に抱きついて眠る琥珀様は、少しだけ幼く見えた。
少しだけ涙で濡れた頬に、口付けを落とす。
「ユイは、血の繋がった弟なのですね。だったら……そんなにそっくりなら、俺を見てくれませんか?」
少し体を動かすと、琥珀が身じろいで向きが変わった。
唇に吸い寄せられるかのように、思わず唇を重ねる。その甘さに酔ってしまいそうだった。
もう一度だけ、そう言い訳をしながら唇を重ねた。
何故だろう。ずっと、琥珀様とキスをしたかったのだ。この苦しい思いを知って欲しい。
やっとその願いが叶った。そう思う自分がいた。
26
お気に入りに追加
833
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れているのを見たニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆明けましておめでとうございます。昨年度は色々ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。あまりめでたくない暗い話を書いていますがそのうち明るくなる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる