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31.琥珀とジェイド③ ※

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 どれだけ寝たのか、分からない。ただ安心出来る人の腕の中にいた。それが嬉しくて、甘えてしまった。

 夕方くらいに寝落ちして……何も食べずに? いままで……?そして、この感触。ぼんやりした頭の中が、クリアになってきた。

「まだ、早いですよ?」
「え? あ……嘘。ずっと居てくれた?朝?」

 近い。足が……絡んでる? 慌ててジェイドから距離をとった。

「離してくれなかったから、横にずっと居ました。でもお腹もすいたでしょう?  軽く果物でも食べて、湯浴みをしますか? その後朝食を用意してもらいますね」


「ま、待って……ジェイドも食べてないよね? 本当にごめん」

「これでも騎士ですから、食べない事にも慣れてるので。伝言してきますね」
 そう言って、ベッドから降りてローブを羽織ってドアの方へ向かっていく。

「ありがと」

 ジェイドは振り返り笑った後、ドアの外へ出て行ってしまった。

 朝から美形の胸に抱かれてる。男同士だ何の問題もない、はず。

「結だと思うのに、雰囲気が何か違ったりするから……困る」

 でも、そばに居てくれたのは嬉しい。

 聖女に対しては冷た過ぎるのに、俺には懐いてる感じさえする。どこかで俺の事が残ってるとしたら嬉しい。

「湯浴みか……確かに汗をかいてる」

 臭かったのでは?  慌てて奥の浴室方へと行った。すでに水は張られている。

   本当に至れり尽くせりだ。

     確か火属性の魔法で水温を上げたら良いんだよね。何もかもしてもらっている。今後の為にも出来る事を、やらないと自立が難しくなってしまう。

 濡れないようにシャツを脱いだ。右手を水の中へと差し込む。
熱化フィヴァ』と唱えてゆっくりと水を温めてみる。急沸騰しないように。

 まだ魔法に慣れていないから、暴走とかしないように。慎重に試している。ドアの開閉音と共に、バタバタと足音が聞こえた。

 (もしかして、探してるのかな?)
 浴室の部屋が思いっきり開いた。

「琥珀様──」
「ジェイド、今お湯を温めてみてる」

 ジェイドが途端に真っ赤になって、後ろを向いた。

「なぜ、裸なんですか!!」

「どうせ風呂に入るし、お湯にするの試そうと思って。下まで脱いでた訳じゃないから。胸くらい見られても平気だよ」

「ですが、神使様なんですよ? 神に選ばれた方が、他人に裸を晒すのは駄目です」

 ──他人。

「神って……そんなんじゃないから。聖女様ならともかく、男同士なら風呂だって一緒に入っても平気だよ」

「絶対に駄目です!!琥珀様のいた世界とここは違うから。襲われてしまう! どれだけ美しいか、自覚して下さい」

「美しいとか、ないって。ほらいい湯加減になった。ジェイドも一緒に入る?」

 頑なに背を向けているから、ちょっと揶揄ってしまった。

「ジェイドごめん、ごめん。一人で入るから。ジェイドには、お風呂一緒に入ろうとか誘ったりしないから安心して」

 こちらを振り向いたジェイドが、浴槽に手を突っ込んだままの俺のところにやって来た。

 思わず手を引っ込めて、少し捻っていた体を元に戻す。腰掛けている湯船の縁のような部分から、立ち上がろうとした。それより先に、ジェイドが膝立ちをして抱き締めてきた。

「ジェイド?」

 ものすごく怒っている感じがする。
 ジェイドの綺麗な髪の毛が、肌に当たっている。心臓がバクバクし始めた。これどう言う状況? 裸を隠せって事?

「あの、なんか悪い事言った?」
 ジェイドは、まだ黙ったままだ。しばらくして、ヌルッとした物が胸の先に触れた。

「え? 何?」

 ジェイドが上目遣いに俺の顔を見た。膨らみもない薄い胸の、小さな飾りを咥えられて舌で転がされる。

「ん──ちょっと、待って」
 今度は強く吸いつかれて、後ろへ体を反る。

「──ジェイド!」

 肩の辺りを押し返すと、動きが止まり唇が離れた。

「二人きりで裸を見せると言うのは、同意してるって事になります。こちらの世界との価値観が違う事。と指導しましょうか?」

 ──怒ってる。危険だって教えてくれてるんだ。

「本当に知らなくて、教室の着替えとか皆平気で脱ぐし。温泉とか大勢で風呂に入るから。そんな感覚しかなくて」


「俺以外と一緒にとか、そんなの絶対に駄目です。 犯されますよ」

 慌てて頷く。

 近くのシャツを羽織らされた。水分だけでも取ってから、湯浴みして下さい。そう言って、浴室にあるテーブルにグラスとボトルを用意してくれた。
「では、ごゆっくり」
 そう言って浴室から、ジェイドが出て行った。









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