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6.ジェイドの捜索①

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「聖女様はお疲れなのでは? 聖女様を部屋に連れて行って下さい」

 聖女様の横に並んで立っている神官長は、その言葉を聞いて眉間にシワを寄せた。

「この王国の殿下に、挨拶をしたいとずっと待ってらっしゃったのです。少しだけでも、お話する時間を差し上げて欲しいのです」

 流石に待たされた神官長は、苛立ちを隠せない。

「神官長一つ訂正をしても?」
 王子は表情を変えずにそう言った。

「何でしょうか?」

「私は、王太子ではありません。弟もいますので。確定してない身分で紹介はしないで頂きたい」

 その言葉を聞いた聖女様が、不思議そうな顔をした。
「王太子様ではないのですか?」
    王子が話しているのに、平気で話しかけるんだな……なんて思ってしまう。流石に聖女様だと許されるのかな?

「ええ。国王陛下より任命されるのは、国内情況が落ち着いてからだと思います。これから、何が起きるのか分かりませんから」
魔物やら、浄化とか言ってたよね。

「聖女召喚が成功したのですよ?私が来たのだから……きっと王太子様になれますよ」
 聖女様が微笑んでいる。何故そんなに自信があるのだろう?  馴染み過ぎじゃないのか?

「──貴方は、元の世界でも聖女様だったのでしょうか?」

「そう言う訳では……。ですが、ここに召喚呼ばれた訳ですから。そう言う力が私には、あるのですよね?」

「力があるかどうかは、明日魔力や適正を調べてもらいましょう。何よりこの儀式で、大切な友人が消えてしまった。貴方が聖女様なら、彼を呼び戻す手段が分かるのではないかと思っています。戻す方法を知っていたら教えていただけませんか?」

「誰が、誰がいなくなったのですか?エドワード様も、ミカエル様もカークライト様もいます。あ、ジェイド様?」

「なぜ? 私の名前を?」
 もしかして……彼女もこの本を知ってる?召喚とか、転生とか流行りの話だけど。古書店にひっそりあった本だ。彼女も来瀬らいぜ古書店に行ってた?
売り物なんだから、本屋や学校の図書館にだってあるかもしれない。

内容を知ってるんだ。だから、聖女の力があるって信じられるんだ……。

「私はお名前など教えていません!! 聖女様の力ですよ! ああ。素晴らしい。ここに来るべき人だったのです。召喚されたのは、間違いなく聖女様だ」

 それに反して聖女様の顔は浮かない。
 ジェイド様がいなくなるなんて……どうしてなの? それにエドワード様は、なぜ私に冷たいのかしら?

 気のせいかも知れないけど。
その小さいな独り言を、王子は見逃してないと思う。

「貴方との話は、明日時間をとります」

「え、あの。今から一緒に食事とか……」

 行方不明者が出ているのに、一緒に食事とは悠長すぎる。 

「神官長──皆、疲弊していると言いましたよね?  特に魔法師達は。魔力安定の為に早めに解散した方がいい。違いますか?」

「殿下……」

「皆の魔力の回復を促すべきなのです。それに、私は友人を諦めきれないので。もう少し調べます。神官長。本日は神殿の聖女様に用意した部屋へ、案内し休ませてあげて下さい」

 冷たくあしらうその姿に、その場の雰囲気が益々悪化していく。ミカエルが、その場を取り繕った。

「神官長、あまり急ぎ聖女様に、仕事の話はしなくても良いと思います。まずは王国に慣れて貰う必要があります。それに……彼を呼び戻す方法も考えて欲しいので。聖女様のことは、神官長にお任せするのが適任だと……私も思います」

「分かりました。行きましょう聖女様」

「──はい」

 神官長と数名の神官、魔法騎士を護衛につけこちらを後にした。


「ミカエル……聖女だから、俺達の名が分かるのか?まるでだと確信しているみたいだ」

 王子の一言にミカエルが反応する。

「ええ。検査もしていないのも関わらず、ね」

 そして、魔法師のカークライトが小声で話す。

「見たところ、魔力が曖昧ですね。これから発揮されるのか? はたまた偽物か?」

 こちらに来た聖女様が本物がどうか……疑ってるんだ。

「なんにせよ明日だ。ジェイドを助けるのが最優先だ」

 俺は三人が聖女よりもジェイドの事を心配してくれているのが、妙に嬉しかったのだ。
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