女の国の百鬼夜行

流子

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 いつもは雑多な繁華街が、何故か異様な雰囲気に包まれているように感じた。

「……?」
 一心不乱に走っていて、いつもと違う道に出たからだろうか。
 ここはどこだろう、と辺りを見回すと、おかしな事に気づいた。

 ハロウィンのように猫耳を付けた女性がいたり、あまりにも背が高い女性がいたり。
 なにかコスプレイベントでもやっているのかと首を傾げていると、
「あれ?もしかして人間?」
と真っ赤な顔の女性に声をかけられた。
「えっ、人間?」
「人間なんて久しぶりに見たー」
 黄色や青色など、鮮やかな顔の色の女性達がわらわらと自分の周りに集まってくる。
 彼女たちは一様に、顔と同じ色の角が生えていた。

 ⸺なんだか鬼の角みたい。

「えーヤバ!マジで人間じゃん!」
 大きく口を開けて笑った女性の口には鋭いキバがあり、とても作り物には見えない。

 もしかして本当に妖怪?!
 怪談のように、人間である自分は異形の彼女らに喰われてしまうのだろうか。

 恐怖で固まってしまった私の目の前に、紫の髪に軍服のようなものを着た女性が現れた。
「ふふ、そんなに詰め寄ったら怖がられちゃうよ。
⸺ようこそ、女性なら誰でも大歓迎だから、そんなに怯えなくて大丈夫」
ここは鬼も獣も屍も、そしてもちろん人間も、全ての種族の女性に開かれた世界。
 紫髪の女性はそう説明した。

「あーゴメンね、怖がらせるつもりはなかったんだけど……」
ハハ、と赤鬼の彼女がバツの悪そうに笑う。
 それに続いて青鬼の女性も黄色の鬼の女性も、ごめんねーごめんねーと言って去って行った。

「同胞がごめんなさいね、ここには様々な種族がいるけれど、人間は珍しくて」
人間の女性だって来れるようにはなってるはずなんだけどなあ、と紫髪の女性は苦笑する。

「あ、いえ、大丈夫、です……」
 私が手を振って否定すると、女性は眉を下げてまた微笑った。
「せっかくのお客さんだし、案内するよ」
と紫髪の女性は手招く。
「えっと、ありがとうございます」

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