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連載
第百十二話
しおりを挟むランドロフは執務室から出ると真っ直ぐに、ある場所へと向かって歩いて行く。
昨夜、ノルト達は教会を調べる為に動いていたという報告を受け取っている為、まだ案内された自室で休んでいるだろうと思い、ランドロフはノルトの自室へと向かっていた。
暫く歩き、ノルトの自室前までやって来ると護衛に部屋の前で待機しているように、と伝えて扉を軽くノックをすると中からノルトの返事が返ってくる。
「入るぞ」
ランドロフは声を掛けて扉を開き、室内へと入ると既に起きていたのだろう。
身支度をある程度整え終わっているノルトが扉から入ってきたランドロフを見て不思議そうな表情を浮かべた。
室内にはノルト一人だけで、二人は気安い雰囲気で会話を始める。
「──ランドロフ、どうしたんだ。昨夜の事は報告してあるが詳細必要か?」
「いや、……ああそれも聞きたいが今回は別件だ」
ふるふるとランドロフが首を横に振ると、ノルトは不思議そうな表情をしつつもランドロフをソファへと促す。
ノルトは自室に用意されていた水の入ったピッチャーからグラスに水を注ぐとランドロフへ手渡す。
自分もグラスに水を注ぐと、そのグラスを持ってランドロフの向かいのソファへと腰を下ろした。
「……それで、別件とは?」
「ああ。大司教を探っていた影から報告が入ったんだがな……それが市民の様子がおかしいらしく、そのおかしくなった市民達は皆教会へ時々祈りを捧げに行っていた者達を中心に、その異変は日々広がり続けているらしい」
「広がり続けている……?それも、市民を中心に……?」
ランドロフの言葉に、ノルトは自分の顎に手を当てて考える。
何故このタイミングでそのような事が起きているのか。
大司教は表向きは変わらず教会の「大司教」として過ごしているはずだ。
そしてその異変が市民の間だけで起こっていると言うのもおかしい。
その「異変」がどう言った内容なのかは分からないが、ランドロフの言葉からその異変は何故か教会に関わりの深い者達では無く、勤めている者達でも無くあまり関わりのなかった市民達を中心に広がっている、と言う。
そこで、ノルトは「洗脳」と言う言葉がふと頭に浮かんだ。
「──ネウスが拘束した奇跡の乙女……、彼女の魔法の核をネウスが壊した。それで聖魔法が使えなくなったんだが、それが関係している可能性は無いか?」
大司教や国王陛下が奇跡の乙女を利用して、信者を増やしていた事は分かっている。
奇跡の乙女が何らかの魔法で信者を洗脳していたのであれば、その魔法が使用出来なくなった奇跡の乙女からの洗脳が解け、関わりの深くない者達ならば深い洗脳はされていなかっただろう。
それで、洗脳が解けてその戸惑いが市民の中に広がったいたのであれば。
「それ、は不味い事になるな」
ノルトの言葉に、ランドロフはさっと顔色を変える。
「洗脳されていた、と言う事がもっと公になれば市民の教会への不信感は増すばかりだ。現状教会との繋がりが深い王家へもその不信感は向けられてしまう。早急に現状を把握して対策を取らねば市民の反感は膨れ上がり暴動が起きる」
「それならば軍法会議の開催を早める事は出来るか?証拠は殆ど手に出来ていると思う。大司教の悪事と……陛下の現状を国の貴族達にも早急に説明しなければいけない」
「──分かった。私の方でも何とか軍法会議を早めれないかどうか確認しよう。……だが、所詮は継承権のない第三王子である私の意見を重要視しない上層部も居るから今日明日に結果が出るとは思わないでくれよ」
「ああ、分かった」
ランドロフの言葉にノルトが頷くと、話は終わったとばかりにランドロフがソファから立ち上がろうとする。
だが、そのランドロフを引き止めるようにノルトは唇を開く。
「午後にでも、時間が出来た時でいい。ミリアベル嬢との魔力制御の訓練部屋に来て貰えるか?ネウスの方の側近が来ているので一度顔合わせはしておいた方がいい。その時に、魔の者の現状と昨夜取得した証拠について詳細を説明する」
「魔の者の現状……?──分かった。時間を作り午後、そうだな……夕方頃になってしまうと思うが行こう」
「助かる、頼む」
ノルトとランドロフは言葉を交わし終えると、ノルトの部屋からランドロフが退出する。
その後ろ姿を見つめながら、ノルトは第二王妃と大司教の関わりをどこまでランドロフへ説明しようか、と頭を悩ませた。
「──取り敢えず、もうこんな時間か。訓練の部屋へと向かおう」
ノルトは窓から差し込む日の高さを確認して溜息を一つつくと、この後ミリアベルやネウス、カーティスと昨夜の話の続きをするという約束をしている為、支度の続きを再開する。
ランドロフから聞いた話も伝えなければならない。
ノルトは最後にコートを手に取り羽織ると、訓練部屋へと向かう為自分の部屋を出て行った。
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