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連載
第九十七話
しおりを挟む「──ミリアベル嬢、後で説明してくれよ」
「はい、ノルト様」
頭を下げたまま、ノルトがミリアベルにのみ聞こえるような声量でぽつりと呟くと、ミリアベルも小さく返事をする。
ミリアベル、国王陛下、大司教での会話にノルトは混ざる事が出来なかった為、止める事も出来ず、そして謁見の間に来る前ミリアベルをきちんと説得出来なかった自分にノルトは苛立っていた。
このまま、証拠を掴めなければミリアベルは一週間後に神殿に連れていかれてしまう。
それをどうにかしなければ、とノルトが考えていると二人を案内する者が現れ、二人が過ごす客室と訓練を行う部屋へと案内してくれる事になった。
二人を案内してくれる者の後に着きながら、ミリアベルとノルトは特に会話をするでもなく歩いて着いていく。
ある程度進んで政務官が仕事をするフロアから外れると、中庭を介して先の城内へと進んで行く。
二階へと向かい、ミリベルとノルトの過ごす部屋を案内して行き、最後に訓練の部屋を案内してくれる。
訓練部屋はミリアベルとノルトの部屋の中心辺りに位置しており、その部屋から宛てがわれた自分の部屋に戻るにも楽そうだ。
「──それでは、私はこれで……」
「ああ。案内ありがとう」
ノルトは案内してくれた人物へ礼を告げるとミリアベルに視線を向けて訓練用の部屋へ入るように促す。
「ミリアベル嬢、少し話せるか?」
「ええ。私もノルト様にお話しなければいけない事がございますので」
二人は頷き合いながら室内へ入り、扉を閉めると室内へと視線を向けて、二人はぎょっとしたように目を見開いた。
「──ネウス!」
「よお、遅かったな」
ネウスは我が物顔でソファに座り、へらりと笑みを浮かべると片手を上げてミリアベルとノルトに笑いかける。
ノルトは急いで室内に防音結界を張ると、呆れたように溜息を吐きながらネウスの方へと歩いて行く。
「あの場で出てこないからどうしたんだ、と心配したぞ」
「──いや、あの場ではどう割って入ればいい物かと悩んでたら終わっちまってなぁ」
悪びれも無くあっけらかんとそう告げるとネウスは様子のおかしいミリアベルに視線を向けると「どうした?」と唇を開いた。
「ミリアベル……?何かさっきあの部屋に居る時から様子が可笑しいが何があった?」
「やはり、ネウス様も気付いておられないのですね……」
ミリアベルの硬い表情にノルトとネウスは一瞬で表情を引き締めるとミリアベルに視線を向け、何があった?と言外に問う。
二人の視線を受けてミリアベルは重々しく唇を開く。
「──先程お会いした、国王陛下ですが……恐らく既に亡くなられております」
「──は?」
「何だと?」
思いもよらなかった言葉をミリアベルから聞かされて、二人は大きく目を見開くと言葉を無くす。
「信じられないかもしれませんが、確かに"そう"だと感じられるのです……ネウス様は?ネウス様には陛下と相対した時に感じられませんでしたか?」
「──いや、……俺は死魔者になっている者ならばすぐに分かるが、国王はなっていない、よな……?人間のまま死に、そのまま死体が動いているってのか?だが、どうやって?」
「それ、は……私にも分かりませんが……でも確かに国王陛下は亡くなられているはずなんです……恐らくその証拠にいくら聖魔法を国王陛下のお体に掛けようとも作用しないと思います」
ミリアベルは小さく自分の首を横に振って答えると、そのまま言葉を発さなくなってしまう。
「──人間の生とは、魔力の流れと核に関係するはずだ。お前達の方では魂、とでも言うのだったか……。核と魔力の双方が澱みなく絡み合い流れ巡り、血流と同じく体の中を巡っている。血流は心臓を介しているが、魔力は心臓を介してはいない……心臓が死して尚、何らかの方法で魔力と核を結び付けて体内を巡らせ、血流を補っている?いや、だが血流が止まれば心臓も止まり人間の臓器が死んで行く。……そんな事は不可能だ。死して尚自分の意志があり、会話をする等、そんな術は俺達魔の者も知らない」
ネウスは考えるようにぶつぶつと呟くとそんな事は有り得ない、ときっぱりと断言する。
魔の者を統べる王ですら聞いた事がない事が引き起こされているのだろうか。
人間よりも遥かに寿命の長い魔の者達は自分達の魔法に明るいのは当たり前の事、人間の魔法にも興味を持ち、特にネウスは人間の魔法を有効活用出来ないか、近い将来人間と交わり子孫に魔の者の魔法と人間の魔法を使う事は出来ないか、と考えていた。
その為人間の使用する魔法についても調べたし、自分達の闇魔法だって研究し尽くしたがそれでも今回のように死して尚自我を保ち、生きる事が出来る様な魔法等知らない。
「これでは、禁術ではなく邪法だ……」
ぽつりと呟いたのは果たしてノルトかネウスか。
室内は重い空気が漂ってしまうが、ミリアベルは視線を上げるとノルトとネウスに向かって唇を開く。
「──国王陛下を弑逆したのも、奇跡の乙女を傀儡にしたのも、教会──神殿に居る大司教かと思います……それだけ、あの方は神に遣える身でありながら恐ろしい気配をその身に宿していました……大司教を止めないと……」
「分かった。大司教の周辺も探り、証拠を掴もう」
だがその前に、とノルトは言葉を続けた。
「この王城内を探るにも、神殿に侵入するにも第三王子に協力してもらった方がいいだろう、この場に来て頂こう」
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